美容師から逃げた過去。30歳過ぎて気が付いた、怒ってくれる人のありがたさ「ECLART CENTRAL 赤坂」まっきーさん
「ECLART CENTRAL 赤坂」でエグゼクティブディレクターを務める、美容師のまっきーさん。前編では「美大卒美容師」のブランディングで成功したまっきーさんが、どのように人気美容師となったのかを伺いました。後編では逃げるように美容師を辞め、美大に入学したまっきーさんが、30歳で技術と向き合い今の地位を築くまでを伺います。
今回、お話を伺ったのは…
まっきーさん
美容師/「ECLART CENTRAL 赤坂」エグゼクティブディレクター
美容専門学校卒業後、都内サロン、関西でのカラーリストを経て、29歳で美大に入学。卒業後はデザイナーのかたわら美容師として仕事をしていたが、「美大卒の美容師」を打ち出したところ2カ月後まで予約が埋まるほど人気となり、美容師一本に。2022年、38歳のときに「ECLART」入社。現在は「ECLART CENTRAL 赤坂」エグゼクティブディレクターとなり、客単価は4倍を実現している。
美容師の道から逃げ、美大へ。30歳で初めて技術に向き合う
――なぜ29歳で美大に入学したのですか?
今から考えると美容師から逃げるためだったと思いますね。美大に入学したときは、美容師を辞めて美術の道に進むつもりでした。とくに最初に勤めていた都内のサロンは本当に厳しくて、怒られまくって心が折れていましたし、朝早くから夜遅くまで働いても自分にあまり還元されないことに嫌気がさしてしまって。
美容師を辞めて世界一周旅行に行ったのですが、そのときにアートに触れたり、絵を通して現地の子ども達と交流したりして、もう一度美術の道に進もうかなと考えるようになりました。僕の父が美大を出ていることもあって、子どもの頃に本格的に絵を習っていたんです。
――美容師を一度辞めようと思ったのに、結果的に美容師に戻った理由は?
美大に通いながら、美容室でアルバイトをするようになったんです。正直美容師でなくても良かったのですが、そのときすでに29歳でしたから、新しいことを始めるのも抵抗感があって(笑)。アルバイトで入ったのは関西の低価格帯のサロンで、そこで初めてカットを担当することになりました。正直最初のころなんて、カット後は本当にガタガタでしたが、実践で繰り返し学んでいくことで、カット技術がやっと身についたという感じでしたね。
美大卒業後は、デザイナーと美容師の仕事を並行していました。本当はデザイナーの仕事を増やしていきたかったのですが、美容師の方がどんどん忙しくなっていって。技術にも自信がついてきたところだったので、美容師一本にしぼることにしたんです。
技術が100でなくても、美容師として活躍できる
――美大で学んだことは、どのようにサロンワークにいきていると思いますか?
仕上がりのバランスと、色彩感覚です。色彩感覚などは元々持っていたものも大きいですが、美大で学ぶことでそれがさらに磨かれた気がします。あとは美大ではデザインを専攻していたので、プレゼン力も磨かれました。デザイナーの仕事は本当に美容師と似ていて。求められていることをヒアリングして、その内容を元にプレゼンして、成果物を仕上げる。この提案力が今の僕を支えてくれていると思っています。
最初に勤めたサロンで、人間性50%、技術50%で100%の美容師になればいいと言われたことがとても記憶に残っています。僕が美容師に向き合い始めたのは30歳のときからで、技術力がすごく高いわけではないと思うんです。でもこの提案力を含めた人間性が残りの50%となって、ここまで来ることができました。
――なるほど。技術がそこまで高くなくても活躍できる道はあるわけですね。
はい。もうひとつ、最初に勤めたサロンで徹底されていたことでよく覚えているのが、「主役は美容師ではなく、お客さま」ということです。お客さまがきれいになったり、気分がよくなったりすることが美容室の役目で、僕たちはあくまで裏方だと何度も言われていました。会話も提案も自分が気持ちよくなるためにするのではなくて、お客さまが輝くためにするんだと。今でもよく思い出すことがありますね。
怒られることは才能。なぜ怒られたのかに向き合えば成長できる
――お話を伺っていると、最初のサロンがきつくて逃げだしたと仰っていましたが、今でもそのサロンの基礎がまっきーさんのなかに残っていますね。
はい、今の僕を作ってくれたのは、過去の僕を怒ってくれた人がいたことだったと思います。過去にめちゃくちゃ怒られてきて、そのときは腹が立っていたんですけど、今から振り返ると怒ってくれる人って本当にいい人だと思っています。自分だけでは気が付けないことをたくさん教えてくれて感謝しています。
――今、まさに怒られて悩んでいる人も多いと思います。
怒られるっていうことは、僕は才能だと思います。期待があるから、この人に言ったら響くと思うから怒られるわけですよね。それがなかったら、怒るなんて面倒くさいことですし、時代的にも訴えられるリスクだってあるわけですから。
僕も怒られていることから逃げ続けて、向き合えるようになったのが30歳からなのですが、その怒られた意図を考えるべきだと思います。怒られないために何をするかじゃなくて、何のために言ってくれるんだろうって考える、そうすることで成長していけるのかなと。そう思えるようになってから僕の人生は大きく変わりましたから。
まっきーさんがさまざまな人生経験でつかんだ3つの教訓
1.一見無関係に思えることにも、人生経験に活かせる
2.一度決めたことでも、柔軟に対応することで結果につながる
3.自分にぶつかってきてくれた人から逃げず、向き合うことで成長できる
さまざまな経験を重ねてきた、まっきーさん。辛い思いをしてきたことも、人生が思うようにいかず回り道をしたことも、前向きに受け止める姿勢が、今のまっきーさんを作っていることが感じられました。美容師として躍進したい人は参考にしてみてくださいね。