人がやらないことをやる。その積み重ねが自分の強みに【ElEn.代表 奥村一輝さん】#1

青山、銀座、池袋の有名店で実績を積み、2023年に自身のサロン「ElEn.(エレン)」をオープンした奥山一輝さん。丁寧なカウンセリングや小顔カット技術、豊富な薬剤知識を武器に、キレイになりたい女性のために腕を振るっています。

まずは、美容師になるまでの紆余曲折のエピソードや、前社時代に全店売上1位を6年連続で達成したお話、独立を考えたきっかけなどをお聞きしました。

お話を伺ったのは…
ElEn.代表 奥村一輝さん


大学在学中に日本美容専門学校の夜間部で学ぶ。卒業後はK-twoに入社。2011年スタイリストデビュー、同年に銀座店へ移籍。銀座店の代表と池袋店の代表を歴任し、2017年に役員就任。2023年、独立して池袋に「ElEn.」をオープン。顔タイプ診断×顔型診断をもとにした小顔カットで人気を集めている。

OKUMURA’S PROFILE

お名前
奥村一輝
出身地
東京都
出身学校
学習院大学法学部、日本美容専門学校
憧れの人
FILMSの若林さん、amble luxeの川合さん、MAGNOLiAのDAISUKEさん、K-twoの木村さん
プライベートの過ごし方
子供とゲーム、漫画を読む、バスケットボールの動画を見る
仕事道具へのこだわりがあれば
ベストパフォーマンスのために、ハサミやコームは複数種類を揃えておき、最適なものを使う

遠回りした分、いくつもの資格を取って就活を有利に

アパレル会社でサラリーマンを経験したあと、大学に入り直して社会心理学やメディア関係を学んだ奥村さん。大学と併行して美容学校にも通う忙しい日々を、持ち前の体力で乗り切りました。

――まずは、美容師を志した経緯を教えてください。

美容師に行き着くまでの経緯が、結構変わっているんです。高校卒業後はスポーツで大学に進学したのですが、交通事故にあってしまい半年入院。リハビリに3年かかると言われ、そんな状況では部活ができないので結局1年くらいで中退しました。その後はワーキングホリデーでイギリスへ。貯めていたお金がなくなったので半年くらいで帰国し、次はサラリーマンになりました。それなりに楽しかったのですが、先のことを考えてもう一度大学に行くことに。

入学できたものの、すでに第二新卒の年齢になっているわけです。大学の先輩にも「就職が大変だよ」と言われて、どうしようかなと思った時に美容師の道を考えました。人と直接関わることができて、しかも喜んでもらえる職業だと思ったからです

たまたま、今も現役で活躍されている谷口愛子先生と家族ぐるみのおつきあいがあり、相談に行きました。その時に「あなたは言葉遣いが丁寧だから大丈夫よ」とすごくラフな感じで言われ、その言葉に背中を押されて、大学に通いながらダブルスクールで美容学校に行くことにしました。

――紆余曲折ですね!就職活動時は、どのようにサロンを探しましたか。

スタートが遅かったので、僕が専門学校に通い始めた頃には、高校の同級生はもう社会人。同窓会で「今何やっているの?」と聞かれると、何となく気まずかったんですよ。それで、一発逆転じゃないですけど、友達に自信を持って会える自分になりたいなと。当時はメディアに出ることがすごいと思われる要因のひとつだったので、雑誌などによく出ているサロンを探しました。その中で、僕の好きなスタイルをつくる美容師さんがいる大手サロンを3つ受けて、ありがたいことにそれぞれ内定をもらいました。

――全部内定をもらえるなんて、すごい。何か秘策があったのですか。

僕ならではの特徴があったからかなと思います。大学卒業しています、美容師免許あります、美容福祉士や色彩検定の資格も持っています、という。大学3年の時にはもう美容師免許を取れていたので、残りの1年でほかの資格の勉強もしたんです。年齢的には就職に不利でしたから、武器はいくつでも持っておこうという気持ちでした

サロンだけでなく、大手美容メーカーも受けていました。やらずに後悔したくないタイプなので、取った資格を活かせるような職種にいろいろ挑戦しましたね。

やれることは全部やって、集客アップ&連続売上1位を達成

昔は、「やったつもり」になって失敗するタイプだったという奥村さん。だからこそ「とにかくやれることを全部やれば、結果がついてくる」と考えて取り組んだそう。

――無事に就職でき、アシスタント時代はどんな感じでしたか。

同期は年下ですけどみんないい子たちで、15年、20年経ってもいろいろ話したり食事に行ったりする仲です。ライバルでもあるけど一緒に上を目指すみたいな感じで、楽しかったですねぇ。人気店ということもありサロンワークはとてもハードでしたが、今思えば一瞬のうちに過ぎていったイメージです。

アシスタントとしてつかせたていただいた先輩には、仕事の仕方の面でやはり影響を受けたと思います。その頃、先輩はメディアに月20本とか出ていて、すごいなと思いながら見ていました。僕が若いうちからいろいろな仕事をまかせてくれるタイプの人だったので、とてもありがたかったですし、おかげで早くスタイリストになれたと思います。

――スタイリストデビューはいつ頃?

最初に配属された青山の店舗でアシスタントを丸3年やって、4年目にデビューしました。当時は5年くらいでデビューするのが平均的でした。その後、新しくできた銀座店にオープニングメンバーとして移籍。銀座店2年目、つまりスタイリスト3年目くらいにその店の代表に就任しました。

――その頃、全店売上1位を連続で達成したそうですが…。

銀座店で3年連続、その後に移籍した池袋店でも続けることができて、合わせて70何ヶ月連続でした。先輩に数年連続1位の方がいらっしゃって、表彰されているのを見てうらやましいなと思っていたんです。それで、僕もそこを目指そうと。

――達成するためにどんな工夫をしたのですか。

とにかく周りがまだやっていないことをやることです。当時はお客様の紹介に力を入れている人が少なかったので、僕はそこを頑張るしかないと思い、毎月30人くらいは紹介してもらっていました。

僕がスタイリストになった頃は、ちょうどホットペッパーなどのウェブ集客が強くなってきて、雑誌に載ったからお客様が増えるという時代ではなくなる、変わり目のような時でした。だから、例えばホットペッパーのブログを頻繁に更新するなど、ウェブにも力を入れました。

ほかにも薬剤開発の仕事をいただいていた経験から、「カラーリスト」や「ケアリスト」を打ち出したり、ブランディングの意見を積極的に出して店全体の集客アップを図ったりしました。

――「紹介で毎月30人」というのは、なかなか難しいことですよね。

Facebookなどが広まってきた頃だったのですが、普及能力がある人っているじゃないですか。今で言うインフルエンサーのような。その人に心地よく過ごしてもらったり、ちゃんとアフターフォローしたりすると、写真をアップしてくれて認知につながります。それをひたすら繰り返していました。もしお友達を紹介してくれたら、きちんとお礼のメッセージを送るとか、当たり前のことをコツコツと。

紹介で新規のお客様が来た時は、失敗したらシャレになりませんが、紹介した人とされた人って属性が似ているんです。僕がつくるヘアスタイルだったりサロンの雰囲気だったりが好みに合うから来てくれるので、そのポイントを外さないようにすればいいんだなと思いました。

美容師の働き方の変化を目の当たりにし、独立を意識

「自分は革命を起こすタイプではない」と奥村さん。前サロンでは、ハイキャリアな先輩美容師たちの経験値を活かしながら、店を伸ばすために自分自身ができることを模索したと言います。

――銀座店、池袋店と続けて代表をまかされましたが、心構えや役割に違いはありましたか。

銀座店の時は、年齢もキャリアも僕よりずっと上の大先輩がトップにいらっしゃいました。池袋店では自分が一番上になったので、結構違いがあったなと思います。池袋店はオープニング作業から完全にまかされたので、保健所や消防署に行って手続きをしたり、必要な資格を取ったり、全部自分で。「これ、独立と変わらないんじゃない?」という感じでした

商業施設内の店舗で、火曜日が定休と聞いていたのですが、フタを開けたら定休日なしでした。しかもオープン当初はフルタイムで出勤できるのが僕だけで、ほかのスタイリストは時短勤務。夜は僕しかいない…みたいな。施設側と会社がやりとりをして定休日ができるまで、3ヶ月かかりました。

――なんと…。よくおひとりで回せましたね。

6人でスタートしたのですが、結婚して子どもがいるスタッフも多く、その子たちに負担をかけられないなと思いました。火曜日はひとり出勤で電話も取れないくらいでしたし、外部の撮影や出張が入ったりもして、体力的にはしんどかった記憶がありますが、ある意味おもしろかったですね(笑)。

――独立はいつ頃から考えていたのでしょうか。

実は、もともと独立するつもりは特になかったんです。でも、会社をさらによくしたい、スタッフの環境をよくしてあげたいという思いはずっとありました。池袋店に移ったと同時に役員にもなっていたので、成功事例を会社に提案したりして。ただ、大きな組織だからこそ一気に変えることは難しかったんですね。

そんな中、コロナ禍を経て美容師の働き方もガラッと変わりました。その時、自分にしっかり関わってくれえる人や助けてくれる人のために、よりよい環境をもっと積極的につくりたいという気持ちが強くなったんです

――そういう気持ちが芽生えてから、すぐ行動に移したのですか。

まずは会社に独立の意思を伝えました。長年お世話になった感謝の気持ちがもちろんあったので、「あと何年待って」と言われればそれでいいし、その期間にしっかり働きながら準備をして…というつもりだったんですけど。はじめはなかなか話が進みませんでしたね。

あらためて、「もう一度ちゃんとお話をさせてください」とお願いし、辞めることが決まったのは2022年の年末。そこから本格的に動き出して、2023年の2月に物件契約、4月に「ElEn.」をオープンしました。本当にあの時は体力勝負だったなと思います。


約15年勤めたサロンを辞め、お客様やスタッフのために理想の環境を用意したいという思いで独立を果たした奥村さん。後編では、「ElEn.」のコンセプトや経営者としてのこだわり、美容師という職業の醍醐味について、お話いただきます。

撮影/高嶋佳代
取材・文/井上菜々子

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Salon Data

ElEn.
住所:東京都豊島区西池袋2-39-8 ローズベイ池袋ビル1F
電話:03-6912-6908
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