一途に「スタイリストファースト」を徹底し、達成した1000店舗目。次なる目標は海外での定着化【Agu.グループ 株式会社AB&Company 代表取締役 市瀬一浩さん】#2(市瀬様取材)

8月22日、47都道府県に直営とFC展開をするAgu.グループが、Award 2024の発表と1000店舗達成記念を祝し、「All Agu. Award 2024 ~Beyond Agu.~」を開催。コロナ禍によって約3年ぶりのオフラインを実現。場内は、例年よりも約1.5倍の来賓者を迎え、最後まで大盛況のうちに終了しました。

前編では、「All Agu. Award 2024 ~Beyond Agu.~」の様子をレポート。後編では、Agu.グループにて株式会社AB&Company 代表取締役を務める市瀬一浩さんにインタビューし、未だ美容業界では誰も達成していない1000店舗を達成するまでの取り組みや想いについて伺いました。

「Agu.」の強みは何と言っても「FC展開&直営の両輪」。共に目標の達成に向けて歩んできたFC店舗のオーナーやスタッフの方々への想いも語っていただきます。

お話を伺ったのは…
Agu.グループ 株式会社AB&Company 代表取締役 市瀬一浩さん

高校卒業後、スタイリストを志し、東京・青山にある有名サロンに5年間勤務。2009年、「Agu.」の前身となる「hair salon alice」を池袋にオープン。その後、2013年にFC展開&直営の両輪の経営を決意し、「株式会社AB&Company」を設立。2024年には、1000店舗目の展開を達成。

業界内で肩身の狭い思いを経験しながら走り続け、ようやく達成した1000店舗目

――この度は1000店舗達成、おめでとうございます!
まずは、今の心境をお聞かせください。

率直に嬉しかったです。1000という数は、お金や人数、タイミングなど全ての歯車が合致しない限り実現できません。そこの大変さが分かっているからこそ、嬉しさや喜びもひとしおでした。

正直、当時はFC展開や業務委託などの働き方が主流ではなく、同業界からすると僕たちは「変わり者の集団」として認識されていた時期がありました。店舗数が多いだけで安いけどレベルが低いといった刷り込みがありましたし、当時の主軸はスタンダードサロン一択でしたから、異様な存在だったのだと思います(笑)。

――達成したことでいろいろな変化が?

そうですね。今回1000店舗を達成したことで、風向きが変わったんじゃないかなと。後ろ指を刺される覚悟やそれによって生じる辛さ、悔しさを抱えながら、この日のために頑張ってきて良かったと心の底から思っています。

レギュラーサロン一辺倒の中、我々Agu.グループが店舗展開できたことは、Agu.のFC店舗のオーナーや所属するスタイリストの方々、全員の力を含めた努力の結果だと感じます。言われのないことを言われた経験は数知れず、そんな逆境をはねのけて、一生懸命に美容業界を良くしようと発信し続けた甲斐がありました。

――1000店舗を目標に掲げた背景について、周囲からの理解を得るためでもあった?

それもありますね。レギュラーサロンがスタンダードな時代に、FCの店舗展開を目指したのがAgu.。以前から、違う職種の方でも美容業界の働き方はブラックで当たり前だと考えられてきました。そうした点を打開するべく、所得やライフステージに寄り添った柔軟な働き方、いわゆる新しい働き方を広めたかったんです。ただ、これまで根付いてきた方針を変えていくためには、それをひっくり返せるくらいの力が必要だと考え、今まで進んできました。

1000店舗達成の秘訣は各店舗のオーナーと「喧嘩」をすること!?

市瀬さんに経営が成功しているオーナーの特徴を聞いてみると?「コミュニティ作りが上手な人。スタイリスト時代に最高売上を達成していたとしても、経営者になったら、関係ないんです。そこをしっかり割り切って、人脈を広げていける覚悟がある人は見込みがあると思います」。

――今回1000店舗を達成したことが、今後の美容業界を改革するにあたって意味を持つのですね。

もう一つ、こだわっている理由があって。僕がスタイリストを志したときは、その環境は劣悪で不遇な時代。当時は、お金もなかなか稼げないし休みもないし…余裕が全くない。そんな状態で未来の人生設計なんて思い描けなかったんです。

――ご自身の今までの背景も影響していたと?

美容業界の本質を変えられないなら、自分で作ってしまおうと思ったことがきっかけです。スタイリストとして働く人たちが何か一つでも人生の豊かな想像ができたりイキイキと働ける環境を作ろうと考えたことが今の取り組みにつながっています。

Agu.にはAgu.のやり方で「スタイリストファースト」を掲げて進んでいくのみです。

――ご自身の経験からAgu.のストーリーが始まったのですね。
では、達成するまでにどんな取り組みをしましたか?

現在、Agu.が展開するFC店舗は47都道府県にあり、41名のオーナーが店舗を経営していて、それぞれのオーナーと徹底的に喧嘩をすることでしょうか。

――喧嘩ですか!?

そのくらい本気で話し合うという意味です(笑)。一人一人のオーナーの想いを定期的にヒアリングし、意見を交換し合うことを大事にしています

僕の好きなスポーツで例えると…野球には、ファースト、セカンド、サードとポジションがありますよね。その各ポジションを守るには、みんなが同じ意見と考えでは難しくて。土台は僕が作るので、各ポジションをそれぞれが守ってほしいと思っています。

――各店舗のオーナーの意見を尊重することが、Agu.の発展にもつながっている?

僕に対するイエスマンになってしまったら、今のような規模は実現できなかったでしょう。ここまで力を持てたのは、日頃のオーナーの方々とスタイリストのプライドやこだわりの結果だと思いますね。

国内の次は外国1000店舗の達成を夢見て。目標は大きいほどに活力となる


――今後の展望について、お聞かせください。

2つあります。1つ目は、美容業界の人口を増やしていくことです。年々、美容業界の働き方は見直されつつありますが、低月給や時間外労働、休日返上の勤務な、問題が山積みで敬遠されがちな業界です。解決するためには、所得を増やす、労働時間のメリハリが必要。そうしたクリーンな環境作りを引き続き目指し、どんなときも「スタイリストファースト」を忘れずに取り組んでいく決意です。

2つ目は、失笑される覚悟で言いますが…次は、海外で1000店舗の達成を夢見ています。現在まで、日本人の外国での成功例はごくわずか。国内では徐々に新しい働き方を定着させてきた自負があります。今度は、その印象を変えていきたいと考えています。外国でも活躍できるということを、証明できたら良いですよね。達成した暁には、今回と同じくらいの規模間のイベントを想定していて、ハリウッド俳優など豪華な方たちもお招きできるくらいの規模を目指したいなと。

とはいえ、外国でAgu.グループが展開している数はN.Y.に1店舗、ハワイに2店舗の3店舗。まだまだ革新的な戦略を打ち出していく必要があります。目標達成の期限を約10年としていますから、常にアップデートを怠らず、M&Aを取り入れた環境作りを徹底していきたいと考えています。

1つ達成したらまた1つと、大きな夢を掲げていくことが、継続して前に進む方法だと思っています。

――大きな夢を掲げる際に大事なことは?

僕は、もともと逆境を経験したことで慣れてはいますが、周りから無謀だと思われるくらいの夢を持つことに意味があると思っていて。その方ががんばり甲斐があるというか…届きそうな夢や目標はそもそも掲げる必要性を感じられないんです。もし、達成できなくてもそこに至るまでのプロセスに納得できれば、ある意味勝ち。いつかL.A.の大きな会場で今回のようなスピーチができる日を夢見て、日々、英単語と向き合っているところです(笑)!


取材・文/東菜々(レ・キャトル)
撮影/横山翔平

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