業務委託美容師の現実|報酬の仕組みや働く際のチェックポイントも紹介
美容師として働く人や美容師として復帰を検討している人のなかには、業務委託として働くことに興味を持っている人もいることでしょう。
しかし、実際に業務委託で働く美容師が身近におらず、「実際はどうなんだろう」と気になっている人もいるかもしれません。
本記事では、業務委託美容師の主に報酬に関する部分について紹介します。業務委託美容師として働き先を決める際のチェックポイントも紹介するので、業務委託美容師として働くことを検討している人はぜひ参考にしてください。
業務委託美容師の報酬の仕組み
業務委託美容師の報酬は、基本的には「新規・フリー技術売上×歩合率」と「指名技術売上×歩合率」の合計です。
歩合率はサロンによって異なり、フリーのお客様と指名のお客様の歩合率が同率となっているサロンもあります。
一般的には多くの施術を行うのに比例して収入が増える仕組みとなっているため、施術数が少ない場合は収入も減少します。しかし、働きはじめてから数カ月は、条件付きで報酬の最低保証を設けているケースもあるため、求人をチェックする際は歩合率以外も確認しましょう。
報酬から支払う年金・税金に注意
業務委託美容師は、サロンに雇用されているわけではなく、業務委託という「契約」を結んで働きます。
そのため、サロンに雇用されていた頃は給料から社会保険料等が天引きされていた分が、業務委託の場合は引かれることなく報酬として手元にきます。そのため、美容院に雇用されていた頃より手取りが増えたように感じるかもしれません。
しかし業務委託美容師の場合は、その受け取った報酬のなかから、自分で国民年金や国民健康保険などを支払う必要があります。
求人サイトへ実際に掲載された業務委託求人の給与
求人サイト「リジョブ」に実際に掲載された求人の給料は下記の通りです。
スタイリスト | 下限 | 上限 | 平均 |
正社員(月給) | 231,753円 | 410,359円 | 321,056円 |
業務委託(月給) | 269,562円 | 441,368円 | 355,465円 |
※2024年1月のデータです。
月給で換算した場合、業務委託の方がわずかですが高いことが見て取れます。そして、月額でみるとわずかな差ですが、年収で見ると平均額で40万円以上の差になります。
インボイス制度は業務委託美容師に影響する?
業務委託で働く美容師に関係のある新たなルールとして、インボイス制度が2023年10月1日から導入されました。どのような制度で、働き方にどのような影響を与えるかを紹介します。
インボイス制度とは
インボイス制度は、消費税に関する新しいルールです。事業者が正確な税額で消費税を納めるための制度で、インボイス発行事業者としての登録や、領収書・納品書の記載内容などについて定められています。
この制度は、業務委託美容師だけではなく、業務委託美容師と契約するサロンにも影響があります。
これまで、業務委託美容師に支払う報酬はサロンの経費として会計処理できていました。
しかしインボイス制度の導入によって、業務委託美容師の年間売上が1,000万円未満の場合、業務委託美容師がインボイス発行事業者として登録していなければ支払った報酬を経費として計上できなくなりました。
2023年10月から2029年9月までの6年間は、インボイス発行事業者として登録していない「免税事業者」となっている業務委託美容師への報酬支払についても、一定割合の仕入税額控除が認められる経過措置があります。
しかし経過措置期間が終わってからは、業務委託美容師への報酬が経費として計上できなくなるため、業務委託美容師を取り巻く環境が変化することを懸念する人もいるようです。
引用元
国税庁:インボイス制度とは
国税庁:適格請求書等保存方式の概要
業務委託美容師への影響
業務委託美容師は、年間売上が1,000万円を超えていない限り、免税事業者として働いているケースが多いです。しかしこれから業務委託美容師として働く場合は、免税事業者として働くか、インボイス発行事業者として登録するかを判断する必要があります。
それぞれのメリットとデメリットを紹介します。
免税事業者でいるメリット・デメリット
免税事業者でいることによるメリットは、主に下記の2つです。
消費税が免税される(消費税の申告・納税手続きが不要)
適格請求書(インボイス)の発行・管理が不要
消費税の申告・納税の手続きや、インボイスの発行・管理など、事務的な作業の増加を避けられます。
しかしデメリットとして、インボイス発行事業者ではないために、業務委託契約を控えられたり報酬歩合を下げられたりする可能性があります。
サロン側としては、インボイス発行事業者として登録していない業務委託美容師への報酬は、仕入税額控除ができないことで実質的な増税となる可能性があるためです。
報酬歩合を下げられたりする行為は、独占禁止法上、問題となる恐れがあるため、あからさまに値引き要求されることはないかもしれません。しかし可能性としては、そのようなデメリットもあることを覚えておきましょう。
引用元
財務省:インボイス制度への対応に関するQ&Aについて(概要)
課税事業者になるメリット・デメリット
課税事業者になると、消費税の申告・納税義務が生じます。そのため、免税事業者として働くよりも収入が減る可能性があり、確定申告などでの事務作業も増加します。これらは課税事業者になるデメリットと言えるでしょう。
しかし仕入れにかかった消費税の控除が可能になるというメリットもあります。売上よりも仕入れにかかった消費税の方が多い場合、納めた消費税が還付されるケースもあります。
さらに、課税事業者はインボイス発行事業者として登録することが可能です。
サロンは、インボイス発行事業者としている業務委託美容師への報酬は経費として計上できるため、インボイス発行事業者として登録することで、契約を拒まれるリスクを軽減できるでしょう。
年間売上高が1,000万円を超える場合は課税事業者になることが義務付けられていますが、それ以下でも任意で課税事業者になることができます。
業務委託で働く前にチェックすべきポイント
業務委託契約を結ぶ前に、契約内容をしっかりとチェックすることが不可欠です。あいまいな条件のまま契約してしまうと、働き続けるうちに損をしてしまうかもしれません。
業務委託美容師として働く際は、労働時間やシフトなどの働き方についての確認も重要ですが、ここでは報酬に関するチェックポイントに焦点を当てて紹介します。
サロンの報酬制度
報酬形態はサロンによって異なるため、契約前に必ず確認しましょう。
フリーのお客様と指名のお客様で報酬の歩合率を別に設定しているサロンが一般的ですが、同率にしているサロンもあります。また、サロン内で販売しているヘアケア商品などの店販品売上にも歩合設定されているケースもあります。
さらに、日額や月額で最低保証報酬を設定しているサロンも少なくありません。
報酬は消費税込みか税抜きか
報酬は税込みか税抜きかは、求人情報には記載されていない場合がほとんどです。サロンに直接問い合わせるか、サロン見学に行った際に質問して、確認しておきましょう。
材料費は引かれるか
報酬から材料費が別で引かれるかどうかでも、手元に残る額は大きく変わります。
また、材料費が引かれる場合でもその金額の決め方が、月額で定額の場合や売上に対しての割合で決まっている場合などさまざまです。
指名料の還元率
施術した報酬のほかに、指名料の一部を還元するサロンもあります。
なかには「指名料100%バック」を約束しているサロンもあるため、指名客を増やすことが報酬アップにつながっていくことが明確になっているケースも見受けられます。
しかしこの「指名料100%バック」で還元される金額は、あくまでも「指名料」です。指名のお客様の売上が、100%バックされるわけではないことは覚えておきましょう。
諸手当の有無
業務委託美容師にも、交通費を支給したり役職手当などの諸手当を設けたりしているサロンもあります。
特に「とにかく稼ぎたい!」という場合は、施術以外の報酬もチェックしてみることをおすすめします。
サロンの集客数
業務委託の場合は施術数が収入に比例するため、来客が少ないサロンだと報酬が増えない可能性があります。そのため、サロンの月間動員数は確認しておいた方が良いでしょう。
さらに、新規とリピーターの割合も確認しておくことも大切です。新たに業務委託美容師として入る場合、新規のお客様が多い方が担当できる機会が増えるため、稼ぎやすい環境か判断する材料になります。
業務委託契約書の有無
トラブル防止のためにも、口約束だけでの業務契約は避け、業務委託契約書を必ず作成しましょう。
報酬・勤務時間・業務内容・契約期間のほか、トラブルが起こった際の解決手段についても記しておくことをおすすめします。
掛け持ちの有無
アシスタントのサポートを受けて複数のお客様の施術を同時進行で行う「掛け持ち」があるかどうかも、確認しておきましょう。
掛け持ちなしでマンツーマンの接客を売りにしているサロンもあれば、業務委託美容師本人が、掛け持ちの可否を決められるサロンもあります。
自分に合った働き方ができる美容師の求人の探し方
美容師の働き方は多様化していて、選択肢の幅が広がっています。そのため、何に重点を置くかによっても、働き方の決め手が変わってくるでしょう。
報酬が歩合制になっていることに魅力を感じて、業務委託美容師として働くことを検討している人もいるかもしれません。
一般的に美容師の報酬は、業務委託は歩合制、正社員は固定給となっているケースが多いです。しかしその一方で、正社員雇用で最低保証給ありの歩合制を採用している求人など、従来の枠にとらわれない雇用条件を提示している求人も見られるようになってきました。
こうした状況を踏まえると、より自分の希望に沿った働き方ができる職場を見つけるためには、はじめから業務委託求人だけに対象を絞らず、さまざまな求人を比較することが大切です。
自分に合ったサロンを探すためには、多くのサロン情報をチェックできる特化型の求人サイトの利用がおすすめです。
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しかも、ひとつのサロンが正社員・業務委託・パートといった複数の雇用形態で求人を掲載している場合でも、サロンごとにページがまとまっているため、それぞれの募集条件が比較しやすいです。
また、会員登録した上で希望条件を入力することで、企業からスカウトを受けられる可能性もあります。
業務委託美容師の報酬や現実を知った上で、自分に合った働き方を見つけよう!
業務委託美容師として働く際には、歩合率や各種手当の有無など、報酬に関する項目はしっかりと確認し、必ず契約書として書面に残しましょう。
また、正社員求人のなかにも報酬形態に歩合制を取り入れているサロンもあります。業務委託を選ぶ理由が「報酬が歩合制だから」ということであれば、歩合制を取り入れている正社員求人も選択肢に加えても良いかもしれません。
このように、美容師の働き方は多様化しています。自分の希望する働き方を叶えられる求人を見つけるためにも、美容師求人の掲載件数が多く、求人情報の内容が充実している求人サイトの利用がおすすめです。
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