ラウンダー薬剤師のリアル|年収・働き方・向いている人を深掘り解説

ラウンダー薬剤師という言葉を聞いて、具体的にどのような動き方をするのかイメージしづらい方もいるかもしれません。

この働き方が注目される背景には、店舗ごとの繁閑差の解消や、急な欠員への対応という医療現場ならではの課題があります。まずは、混同されやすい他の業務との違いを整理し、ラウンダーの役割を明確にしていきましょう。

本記事では、主にこの「薬局ラウンダー」の働き方について解説します。

1. ラウンダー薬剤師とは(定義と役割の全体像)

1-1. ラウンダー薬剤師の定義と種類(薬局ラウンダー/病棟ラウンド/在宅ラウンド)

転職市場において「ラウンダー薬剤師」と呼ばれる場合、一般的には「薬局ラウンダー(店舗巡回薬剤師)」のことを指します。

特定の店舗に所属せず、同一法人内の複数店舗を巡回し、その日その時で人手が足りない現場をサポートする役割です。

なお、病院の病棟を回る業務は「病棟薬剤師」、在宅訪問を行う業務は「在宅担当薬剤師」として別の職種・役割として扱われることが一般的です。

これらは「場所を移動して業務を行う」という点では共通していますが、求められるスキルや業務の質が異なるため、混同しないように整理しておきましょう。

1-2. 管理薬剤師・常勤配属との違い(責任範囲・評価軸・移動の有無)

なぜあえて店舗を固定しない働き方を選ぶ人がいるのか、疑問に思うこともあるでしょう。

固定配属の管理薬剤師や一般常勤との最大の違いは、「対人・対物業務への集中度」と「環境変化への適応力」が評価軸になる点です。

管理薬剤師は、一つの店舗の管理・運営・スタッフ育成に深くコミットし、その店舗の成果が評価に直結します。

対してラウンダー薬剤師は、店舗運営の責任(在庫管理の最終責任やシフト作成など)からは解放されるケースが多いです。

その代わり、「今日初めて行く店舗で、即座に戦力になれるか」「異なるルールの店舗でも円滑に業務を回せるか」という適応力が評価されます。

管理業務よりも現場での調剤や投薬に集中したい方や、一つの場所に留まることに閉塞感を感じやすい方には、非常に適したポジションと言えるでしょう。

1-3. 勤務形態のバリエーション(常勤・準常勤・派遣・スポット)

ラウンダーといっても、必ずしも正社員(常勤)だけとは限りません。ライフスタイルに合わせて働き方を選びたいというニーズに応えるため、雇用形態も多様化しています。

主なバリエーションは以下の通りです。

・常勤ラウンダー
正社員として入社し、会社の指示で複数店舗を回る。移動負担や対応範囲に応じて手当が付くケースもあり、条件次第では年収が上がることもある。

・派遣ラウンダー
派遣会社と契約し、期間を決めて複数店舗を掛け持ちする。時給が高めに設定される傾向がある。

・パート・スポット
特定の日時だけ、人手の足りない店舗へ応援に行くスタイル。

「バリバリ働いて稼ぎたい」なら常勤や派遣、「家庭と両立しながら変化を楽しみたい」ならパートというように、ご自身の生活設計に合わせて選ぶことが大切です。

2. 活躍フィールドと主な業務スコープ

2-1. 保険薬局での業務(調剤・監査・投薬・薬歴・在庫/欠品対応)

ラウンダー薬剤師が最も多く活躍しているのが保険薬局です。ここでは「即戦力としての対応力」が何よりも求められます。

業務内容は固定スタッフと同じく、調剤、監査、投薬、薬歴記入がメインです。

しかし、店舗によって分包機が違ったり、薬歴システムが異なったりすることは珍しくありません。

「A店ではこのルール、B店ではあのルール」と瞬時に頭を切り替える必要があります。

また、在庫がない場合の欠品対応や他店在庫の確認なども、その店舗のフローに従ってスムーズに行うことが期待されます。

最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、慣れてくれば「どの店舗でも通用する汎用的なスキル」が身につきます。

まずは主要な数店舗のルールをノートにまとめるなどして、自分なりのマニュアルを作っておくのがおすすめです。

2-2. 病院・病棟ラウンドでの業務(TDM・相互作用・カンファ・処方設計支援)

病院における「ラウンド」は、チーム医療の一員としての専門性がより強調されるフィールドです。

ここでは、医師や看護師と共に病棟を回り、患者さんのベッドサイドで服薬状況を確認したり、TDM(薬物血中濃度モニタリング)に基づいた投与設計を提案したりします。

薬局ラウンダーのような「店舗間の移動」とは異なり、「診療科ごとの専門領域を横断する」動きが求められることが多いです。

感染制御チーム(ICT)や栄養サポートチーム(NST)など、専門チームの一員として院内をラウンドすることもあります。

臨床知識を深めたい方にとって、これほど刺激的な環境はありません。

特定の疾患だけでなく、幅広い症例に触れられるチャンスと捉えて挑戦してみてください。

2-3. 在宅・施設ラウンド(モニタリング・居管指導・多職種連携)

高齢化社会において需要が急増しているのが、在宅や施設を訪問する業務です。こちらも「ラウンダー」の職務内容に含まれる場合もあれば、専任担当が置かれる場合もあります。

ここでは、残薬調整や服薬カレンダーのセット、患者さんへの服薬指導が業務の中心となります。

また、患者さんの状態変化に気づくことも重要であり、必要に応じてバイタルサインの確認を行ったり、ヘルパーやケアマネジャーから得た情報を活用して多職種連携を図ったりします。

一日中車に乗って、何軒もの個人宅や施設を回る日もあるでしょう。「薬を渡して終わり」ではなく、生活全体を支える視点が必要です。

3. 年収・手当・働き方データ

3-1. 年収レンジと相場感(地域差・雇用主別)

転職を考える際、やはり気になるのは年収ではないでしょうか。

ラウンダー薬剤師は、その機動力への評価として一般的な薬剤師よりやや高めの給与が設定されることが多い職種です。とはいえ、具体的な年収は経験年数やカバーするエリアの広さ、企業の規模によって大きく異なります。

450万円〜600万円台の求人が中心ですが、地方エリアや管理業務兼任・広域対応など条件が限定される場合は、600万円後半〜700万円水準となる例もあります。

一方で、地域によっては通常の薬剤師と大きく変わらない場合もあるため、一概には言えません。 

収入アップを狙うなら、単に「ラウンダー希望」と伝えるだけでなく、「どの範囲まで移動可能か」「土日勤務は可能か」といった条件を柔軟に提示することで、交渉を有利に進められるでしょう。


3-2. 付帯手当(ラウンダー手当・出張/待機・宿泊・交通)

基本給以外にもラウンダー手当や移動補助が付く企業もありますが、支給の有無や金額は法人差が大きく、必ず付くとは限りません。これらは働くモチベーションを維持する上で重要な要素ですが、その内容は企業によって千差万別です。

例えば、月額固定の「ラウンダー手当」がある場合もあれば、移動距離に応じた支給の場合もあります。

交通費に関しても、実費全額支給のケースもあれば、ガソリン代に上限や距離計算の規定があるケースもあります。

また、移動時間が勤務時間に含まれるかどうかも就業規則によります(直行直帰扱いか、事業所とみなすか等)。

求人票を見る際は、基本給の額面だけでなく、こうした諸手当の規定や移動時間の取り扱いについてもしっかりと確認しておくことが大切です。

3-3. シフトと残業の実態(繁忙期・週末・夜間)

「あちこち回って忙しそう」というイメージがあるかもしれませんが、実際の勤務時間はどうなのでしょうか。

基本的にはシフト制で、その日の勤務店舗の営業時間に準じます。繁忙期の店舗や、夜遅くまで開いている店舗に応援に行く場合は、残業が発生することもあります。

一方で、自分が休みの日は別のラウンダーや固定スタッフが対応するため、持ち帰り仕事が発生しにくく、オンオフの切り替えは意外とはっきりしています。

残業を減らすコツは、効率的な薬歴入力スキルを磨くことです。定型文の登録やタイピング速度の向上など、自分なりの時短術を身につけておくと、どの店舗に行っても定時で上がりやすくなります。

4. メリット/デメリットを現場目線で整理

4-1. メリット:症例の幅・スキル加速・収入・人間関係の自由度

ラウンダー薬剤師を選ぶ最大のメリットは、短期間で圧倒的な経験値を積めることです。

毎日違う店舗に行けば、それだけ違う処方箋、違う医師の考え方、違う患者層に触れることになります。

耳鼻科門前、内科門前、総合病院門前など、多様な科目を経験することで、薬剤師としての引き出しが劇的に増えます。

また、人間関係が固定されないため、特定のスタッフとの相性に悩むことが少なく、精神的に気楽だという声も多く聞かれます。

「毎日新鮮な気持ちで働きたい」「煩わしい人間関係から解放されたい」という方には、これ以上ない環境と言えるかもしれません。

4-2. デメリット:知識幅・不規則勤務・移動負担・過誤リスク

一方で、避けては通れないのが「移動の負担」と「環境変化のストレス」です。

毎日違う通勤ルートを確認し、違うシステムを操作するのは、慣れるまでは心身ともに負担がかかるものです。

また、店舗ごとに配置場所が違うため、ピッキングに時間がかかったり、独自のルールを知らずに注意されたりすることもあるかもしれません。

環境変化により注意点は増えますが、必ずしも過誤率が高くなるとは限らず、事前確認やダブルチェック体制で十分に低減可能です。

しかし、これらは「慣れ」と「準備」でカバーできる部分でもあります。

移動時間を「オーディオブックでの勉強時間」や「リフレッシュタイム」と捉え直すなど、ポジティブな変換ができれば、デメリットも楽しみに変えられるでしょう。

4-3. 向いている人/向いていない人の判定ポイント

では、どのような人がラウンダー薬剤師に向いているのでしょうか。

向いているのは、以下のようなタイプの方です。
・好奇心旺盛で、新しい環境や人との出会いを楽しめる人
・細かいことにこだわらず、柔軟に対応できる人
・車の運転や移動が苦にならない人

逆に、

・一つの場所でじっくりと腰を据えて働きたい人
・深い人間関係を時間をかけて築きたい人
・環境が変わると極度に緊張してしまう人

には、少しストレスが大きいかもしれません。

ご自身の性格を振り返り、変化を「ストレス」と感じるか「刺激」と感じるかが、適性を見極めるポイントになります。

5. 必要スキル・資格・適性

5-1. 即戦力の基礎力(監査速度・薬歴精度・法令遵守)

ラウンダーに求められるのは、何と言っても「即戦力」としての基礎能力です。

初めて入る店舗でも、他のスタッフと同じスピードで調剤し、正確に監査を行う能力が必須です。

特に監査スピードと正確性は、周囲からの信頼を勝ち取るための最大の武器になります。

また、どの店舗でも共通する「薬機法」などの法令知識がしっかりしていれば、ローカルルールに迷っても法的な判断軸で動くことができます。

基礎がおろそかだと、どの店舗に行っても苦労してしまいます。まずは基本の調剤スキルを盤石にし、「どこに行っても大丈夫」という自信をつけておきましょう。

5-2. コミュニケーション&連携力(医師・看護・本部・多店舗)

技術以上に大切なのが、コミュニケーション能力です。

「初めまして」のスタッフや患者さんと、短時間で信頼関係を築く必要があります。「何かお手伝いすることはありますか?」といった声かけや、謙虚に教えを請う姿勢が、円滑な業務遂行の鍵を握ります。

また、本部からの指示を各店舗に伝えたり、店舗間の連携を取り持ったりするハブとしての役割も期待されます。

笑顔で挨拶ができる、報連相が早いといった基本的なコミュニケーションが、ラウンダーにとっては最強のスキルになります。

5-3. トラブルシュート力と優先順位付け

予期せぬトラブルへの対応力も重要です。応援先の店舗では、急患やクレーム、機器の故障など、予期せぬ事態が起こり得ます。

そんな時、マニュアルがないからと立ち尽くすのではなく、「今、何を最優先すべきか」を判断し、冷静に行動できる力が求められます。

患者さんの安全を第一に考え、現場のスタッフと協力して解決策を探る姿勢が必要です。

トラブルを「自分の経験値を上げるチャンス」と捉え、冷静に対応することで、あなたの評価はさらに高まるでしょう。

5-4. 専門性で差がつく領域(感染・栄養・緩和・がん薬学・TDM)

さらに市場価値を高めたいなら、プラスアルファの専門性を持つことがおすすめです。

例えば、がん薬物療法認定薬剤師や感染制御認定薬剤師などの資格を持っていれば、病院系ラウンドや専門チーム対応では評価されやすい一方、調剤薬局ラウンダーでは資格よりも現場即応力が重視されるケースが多いのが実情です。

在宅業務であれば、緩和ケアや栄養サポートの知識が強力な武器になります。

「あの人が来てくれると助かる」と言われる存在を目指し、得意分野を一つ磨いておくとよいでしょう。

6. リスク管理・コンプライアンス

6-1. 調剤過誤防止と報告フロー(初見環境でのリスク低減)

環境が変われば、どうしてもミスのリスクは高まります。

「薬の配置場所を勘違いした」「規格の並び順が違った」といった単純なミスを防ぐには、思い込みを捨て、指差し確認を徹底することが大切です。

また、万が一過誤が発生した場合の報告ルートは店舗や法人によって異なります。

初日に必ず「緊急時の連絡先と報告フロー」を確認しておくことが、自分自身を守ることにも繋がります。

「慣れていない」ことを自覚し、普段以上に慎重に業務にあたることが、最大のリスク管理です。

6-2. 個人情報・データ持ち出し対策

複数の店舗を行き来するため、情報の取り扱いには細心の注意が必要です。

患者さんの個人情報が記載されたメモを白衣のポケットに入れたまま別の店舗に移動してしまったり、私物のUSBメモリを業務用PCに接続したりすることは厳禁です。

店舗ごとのセキュリティルールを遵守し、情報の持ち出しは絶対に行わないよう徹底しましょう。

「情報は店舗に置いていく」を鉄則とし、デジタル機器の取り扱いにも十分注意してください。

6-3. 在宅・病棟での算定と記録の注意点

在宅や病棟業務では、算定要件の管理も重要です。

店舗によって算定している点数や、記録の様式が異なる場合があります。「前の店舗ではこうだったから」と独自の判断で進めず、必ずその店舗の管理薬剤師や担当者に確認してから算定・記録を行いましょう。

記録の不備は、後々の返戻や指導対象になりかねません。不明点はその場で確認する。この基本動作が、コンプライアンスを守る第一歩です。

7. キャリアパスと市場価値

7-1. 評価される実績指標(生産性・品質・連携貢献)

ラウンダーとしての働きぶりは、どのように評価されるのでしょうか。

単にシフトを埋めるだけでなく、「あの店舗の残薬整理を進めてくれた」「業務フローの改善案を出してくれた」といったプラスアルファの貢献が高く評価されます。

複数の店舗を見ているからこそ気づける「比較による改善点」を提案できるのは、ラウンダーならではの強みです。

「行った先々で感謝される仕事」を積み重ねることが、あなたの社内評価と市場価値を確実に引き上げます。

7-2. 次のステップ(エリアMGR・教育担当・専門薬剤師・病棟専任)

ラウンダー経験の先には、多彩なキャリアが広がっています。

複数店舗の状況を把握している強みを活かしてエリアマネージャーへ昇進する道や、新人薬剤師を指導する教育担当になる道があります。

また、特定の領域に興味を持ち、専門薬剤師や病棟専任へとキャリアチェンジする方もいます。

ラウンダーとして培った「適応力」と「俯瞰的な視点」は、どのポジションについても強力な武器になります。

将来の選択肢を広げるための期間として、ラウンダーを経験するのも一つの賢い戦略です。

8. 固定配属・派遣・スポットとの比較

8-1. 働き方比較(安定性・収入・自由度・成長)

最後に、他の働き方との違いを整理しておきましょう。

・固定配属
安定して深く働けるが、人間関係や環境が固定化しやすい。

・ラウンダー
変化に富み、スキルアップと高収入が狙えるが、移動負担がある。

・派遣・スポット
自由度は高いが、雇用の安定性や福利厚生は正社員に劣る場合がある。

「安定」「成長」「自由」「収入」のどれを優先順位のトップに置くかで、選ぶべき働き方は変わってきます。

8-2. ラウンダー特化の選び方(薬局/病棟/在宅の適性)

ラウンダーを目指す際は、自分が「どのフィールドを回りたいか」を明確にすることが大切です。

調剤スキルを極めたいなら薬局ラウンダー

チーム医療に携わりたいなら病棟ラウンドや病院内ラウンダー

地域医療に貢献したいなら在宅ラウンダー

と、それぞれの特性に合った求人を選びましょう。

ご自身の適性と希望をしっかりと見極め、最適なフィールドを選んでください。ラウンダー薬剤師という働き方は、あなたの可能性を大きく広げてくれるはずです。

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ラウンダー薬剤師のように、自身の適性や希望に合わせて柔軟な働き方を選べることは、今の時代の大きな強みです。

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監修者

原瑞希
薬剤師専任キャリアアドバイザー
薬剤師免許保有

【経歴・実績】
・ドラッグストアチェーンにて薬剤師として3年間従事
・2024年度 新人賞(銀賞)受賞

【プロフィール】
元薬剤師として現場の空気感やストレスを肌感覚で理解しているため、悩みへの深い共感が可能です。
求人紹介だけでなく、入社後の教育体制まで徹底確認して提案。生活の変化を具体的にシミュレーションし、不安のない転職を支えます。

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