職場で周囲の人たちと「衝突」したらどうしますか? 【人間関係に悩んだときの対処法#1】
仕事の悩みは、人間関係の問題が多いものです。仕事にやりがいを感じても、職場の人と良好な関係を築けていないと、笑顔になれず、お客さまへ十分なおもてなしができないことも。
そこで、心理カウンセラーでエッセイストの若松美穂さんに、人間関係に悩み、辛い気持ちを抱えたときの対処法を教えていただきます。じつは、若松さんのお母さまは美容院を経営されていたので、いわば先輩。ビューティ業界で働くひとたちへの理解は深いのです。
周囲とぶつかる原因は、自分に中にあることも
「ビューティ業界は少人数の職場が多いので、気に合わない人がいると辛いですよね。私の母は、以前、美容院を経営していました。母は『一番になりたいと思っている頑張り屋さんほど、周囲とぶつかってしまうことが多いのよ』と言います。こんなに頑張っているんだから、私を認めて欲しいと思ってしまうんでしょうね」と若松美穂さん。
人間関係がうまくいかない原因は、相手のせいだと思いがちですが、本当にそうでしょうか? 自分の中のイライラや自信のなさが原因のことがあります。「一番になりたいのに技術がなかなか向上しない」とか「接客がうまくいかない。こんなはずじゃなかった」、そんな余裕のない気持ちで職場の人に接していると、口調がキツくなったり、笑顔がなくなっているはず。本来の自分の良さが出せずに、人間関係がぎくしゃくしているのかもしれません。
「どんな仕事でもそうですが、まずは3年間、謙虚な気持ちで頑張ってみて。3年たつと、ある程度は仕事に慣れるはずです。すぐに結果を求めてしまうと、辛くなったり焦ったりします。3年間という少し長めの期間で考えましょう。なかなか上達しなくても、3年間でできるようになればいいと思うと、気が楽になりますね。上達が早い人、遅い人がいるし、指導してくれる先輩のやり方もあります。人と比べずに、自分のペースで上達していけばいいんですよ」
悪口は妬みやひがみ。聞き流して、忘れることも大切
職場での悪口は、妬みやひがみであることが多いもの。「『私、妬まれるほど、素晴らしい人なんだ!』と自慢に思ってしまいましょう」と、若松さんは言います。妬まれたり、ひがまれたりするのは、幸せそうに見えるから。相手はうらやましいから、つっかかってくるんだと考えると、少し気が楽になります。
「どこの職場にも、悪口を言う人は必ずいます。相手を変えることはできないので、自分の考えを変えるしかないですよね。相手の心ない言葉には、『はい、そうですか……』くらいの反応をして、聞き流しましょう。怒るなど過剰に反応すると、それが面白くて、さらに悪口がエスカレートすることも。また、無視すると反撃をうけることもあるので、静かな反応で乗り切ります」。
また、いっしょに働く先生や先輩、同僚などの性格を大まかに把握しておくのもいいですね。「いつも文句の多い先輩」ならば、その文句は全部受け止める必要はありません。相手に発言から自分に役に立ちそうなことだけをピックアップして、あとは忘れてしまいましょう。そういう人は、誰に対しても文句が多いので、いちいち気にしなくても大丈夫です。
人の気持ちは妄想しないで、思い切って聞いてみて!
「先生に嫌われている」、「先輩にダメだと思われている」、「悪口を言われている」、こんな不安な気持ちが生まれたら、大きくなる前に対応したほうがいいでしょう。
「『◯◯さんは、私に対してこう思っているに違いない』と、人の気持ちを妄想して落ち込んでいませんか? 相手は、意外に深く考えていないことが多いものです。妄想はどんどん大きくなり、ますます落ち込んでしまうことがあります。そんなときは、思い切って、相手に聞いてみるのがいいと思います」と若松さん。
もし、それで気まずくなってしまったとしても、やるだけのことはやったという達成感を感じて、スッキリするはず。その後の対応は、またそのときに考えればいいのです。
コラム
思い切って相手にぶつけてみるときの聞き方例
「私の勘違いかもしれませんが、先生が私に対して思っていることはございますか?」
「ご期待に添えるように頑張りますので、どこが問題なのかアドバイスをお願いします」
「私のことを誤解されていないか不安なのです。◯◯に関して、どのようにすればいいのか教えてください」
●解説
アドバイスが欲しいというような謙虚な姿勢が大切。自分のどこに問題があるのか、どこを直したほうがいのか、具体的にアドバイスをもらうようにしよう。
辛い気持ちを吐き出すのはお勧め。そのときの注意は?
辛い気持ちは溜め込まずに、友人、家族、恋人、同僚など、心許せる周囲の人に吐き出しましょう。話すだけで、自分の気持ちが整理されて、心がスッキリします。そのときお勧めなのは、立場や仕事、年代が違うなど、いろいろな人に話してみることです。
「同年代の同僚は、状況がわかり共感が得やすいのですが、お互いに不満を言い合っていると、不満が増殖してしまうことがあります。だから視野を広げるために、同僚だけでなくいろいろは人に話を聞いてもらうと、思ってもみなかったアドバイスをもらえることがありますよ」と若松さん。
先輩に相談すれば、「今、大変なのは当たり前。私も3年頑張ったら、ぐっと楽になれた」と、自分の経験を踏まえたアドバイスをくれるはず。また、違う業界の友人に聞いてもらうと、「うちの業界の常識とは違うね。私なら、こう思う」と全く違うアイデアをくれるかもしれません。
辞める決断はちょっと待って! 自分にとっての優先順位を考えて
悩んで辛くなり、サロンを辞めようかと考えることがあります。人間関係の悩みはどんな職場にいってもあるものなので、辞める決断をする前に自分の気持ちを整理します。
「辞める前に、今の自分にとって、仕事で大切にしたいことは何か、優先順位を考えてみましょう。例えば、『将来独立したいので、お金をためたい。今は給料のいいところで働きたい』、『技術力を身につけて、ステップアップしたい』、『子どもが小さいので、家から近い店で働きたい』など、優先順位をつけて並べてみます。そうすると、『このお給料なら、もう少しここで働こう』とか、『もうここで十分技術は学んだので、別の店に転職しよう』など、冷静に結論が見えてきます。もし、サロンを辞めることになっても、後悔はないはずです」。
取材・文 大橋史子(ペンギン企画室)
Profile
若松美穂さん
心理カウンセラー、エッセイスト。生活情報誌「サンキュ!」や「ESSE」のカリスマ主婦として、家事、料理、節約などのアイデアを紹介して圧倒的な指示を集める。2011年心理カウンセラーの資格を取得し、現在は「心の整理術」をテーマに、講演、講座、雑誌、書籍などで活躍中。著書は「主婦が幸せになる60の方法」(双葉文庫)、「理想と違う自分を好きになる」(双葉社)など多数。
ブログ
Information
若松美穂さんの著書「理想と違う自分を好きになる」(¥1,296/双葉社)
「理想の家庭」「理想の子育て」など、自分でつくりだした「理想」にしばられて苦しんでいる女性たちに届けたい心の処方箋。今の自分のいいところを認めて、気持ちを楽にして生きていける道を、一緒に探ってみませんか? 40’s style magazineの連載ブログ「てのひらの幸せ」に大幅加筆を加えた一冊です。
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