ミネシンゴ interview#2:美容雑誌の新しい形を問うた新進気鋭の編集者

元美容師という異質の経歴を持つ出版社アタシ社代表のミネシンゴさん。自ら編集長を務める美容文藝誌『髪とアタシ』は美容業界のみならず、一般読者からも注目を集めています。紆余曲折を経ながら辿り着いた今の地位。気鋭の編集者は今の美容メディア、今の美容業界をどのように見ているのでしょうか。

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『髪とアタシ』は既存の雑誌に対するアンチテーゼ

ミネシンゴさん

――5号目が発売されて以来、ますます注目を集めている美容文藝誌『髪とアタシ』。様々なメディアですでに語っていると思いますが、改めてこの雑誌を作ろうと決めた理由をお聞かせください。

「もともと美容師をやっていたんですが、椎間板ヘルニアで仕事ができなくなり、美容業界誌の編集者に転職したんです。そこで美容雑誌を作っていたんですが、登場する美容師さんがどの雑誌も似通っていましたし、同じような情報が常に蔓延していた気がしたんですね。僕が以前働いていたサロンでは、定期購読で買ったものの1ページも開かずに捨てていた先輩もいました。そういうこともあったので、捨てられない雑誌で、かつ今の美容師が読みたいと思ってくれるものを作りたいというのが一番の理由でした」

――具体的なコンセプトといいますと、どのようなものなのでしょうか?

「自分自身の読みたいものってなんなのか。そう考えたとき、デザイン、トレンド、売り上げ、接客ハウツーでもなく、一人一人が持っている美容のストーリーを文字としてちゃんと出したいなと。それだったら、名もない人のものでも読んでみたいと思ったんです。僕が学生の頃、今から12年くらい前になるんですが、ある雑誌で超ロングインタビュー企画が毎月あって、その内容がすばらしかったんです。そこで言葉の力を知って、こういう形がいいなと思っていました」

――表紙を昔風の絵にしたというアイディアが斬新ですよね。

「よく昔風と言われますが、全然意識していません。雑誌の表紙ってほとんどが写真なので、雑誌の顔となる表紙はイラストにしようと決めていました。美容業界誌のタイトルもほとんどが英語なので、僕は日本語にしました。既存メディアへのアンチといいますか、僕なりのパンク精神です(笑)」

ミネシンゴさん

――そうすると、業界誌から独立して『髪とアタシ』を作ったという流れですか?

「実はそうではなくてですね。業界誌を辞めたあと一度美容師に戻り、椎間板ヘルニアが再発したので美容師を辞め、その後リクルートという会社に就職し、働きながら『髪とアタシ』を作ったという流れです。創刊号、2号目まではそうでしたね」

――それって社内的にOKなんですか?

「『髪とアタシ』を作ることを、応援してくれました。いい会社ですよね(笑)。もちろん本来の業務に差し障りがないようにですけど。朝の9:30に出社して、『Hot Pepper Beauty』の仕事をして、業務後に取材をしていました。あとは土日を使ったりして」

――働きながらでも、じっとしていられない情熱があったわけですね。

「20代でメディアを作るというのを目標にしていたんです。目標クリアのために動きまわっていた感じでしょうか。30歳になる4カ月前に完成することができました!」

ミネシンゴさん

――完成したときの業界の反応はどうでしたか?

「美容業界がおもしろがってくれたかと言ったら、そうでもなかったですね。反応したのは『pen』『AERA』『文學界』とか、全然違う出版の人たちや、生き方や働き方を紹介するウェブマガジンの方々でした。それが新しい発見でしたけど。5号目を出したくらいから、こうやって『リジョブ』さんをはじめ、美容業界の人たちに知ってもらえた感じがします」

――雑誌を作るとなるとそれなりのお金が必要です。クラウドファンディングでお金を集めたとうのは本当ですか?

「はい。雑誌を作ると言っても、金ないしどうしようみたいな(笑)。当時、たまたまCAMPFIREというサービスを見つけて、『これだ!』と思ってやってみたんです。たくさんの人に支援をいただき、なんとか達成することができました。あとは、SNSで発行する旨の告知をしていたら、面識のないヘアサロンのオーナーの方が『発行の足しにしてください』と支援してくれました。SNSで僕のプロフィールを読んで、おもしろいと思ってくれたようです。すごくうれしかったですね」

――2号、3号、4号と続いていくわけですが、継続って大変じゃないですか?

「だけど週刊誌や月刊誌ではないので。短いスパンでたくさん出す意義は、僕の中にはもうありません。不定期で半年くらいのスパンでやるのが一番気持ちいい。企画も取材もゆっくり時間をかけて、ていねいに作れますから。雑誌のいいあり方を見つけたなと思っています」

髪とアタシ

Profile

ミネシンゴさん

ミネシンゴさん

出版社アタシ社代表、髪とアタシ編集長

出身地・神奈川県
座右の銘:人は簡単に死なない
1984年生まれ。横浜fカレッジ美容科卒業後、神奈川や東京・青山で美容師を2年、髪書房で美容業界誌の編集を2年、鎌倉にて美容師を2年、(株)リクルートで企画営業を3年半経験したのち、合同会社アタシ社を設立。リクルート在籍中に美容文藝誌『髪とアタシ』を出版する。毎月1回、渋谷のラジオで『渋谷の美容師』のパーソナリティーを務める。

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Information

道を継ぐ

道を継ぐ

アタシ社初となる単行本『道を継ぐ』が3月25日に発売。
1,512円(税込)

美容ライターの第一人者、佐藤友美さんが取材期間1年半かけて書き下ろした渾身の1冊。49歳という若さで他界したMINXの“母”、鈴木三枝子さん。彼女の生き方、働き方、厳しさ、そして優しさは、今なおMINXのスタッフやOBたちの中で生き続けている。短くも太く生きた鈴木さんの人生を、関係者の声をもとにノンフィクションという形で実現。ミネさん曰く「存在が見えなくなっても、生き続けているということをみなさんが体現しているし、僕らは“道として継ぐ”ということをメッセージとして発信したいということもあり、このタイトルをつけさせていただきました。美容師はもちろん、一般の人にも通じる話なので、幅広く読んでもらいたいです。アタシ社初めての単行本がこの本で良かったと思います」

道を継ぐ

たたみかた

アタシ社から新雑誌が刊行。創刊号は4月10日発売。
1,512円(税込)

世の中をどう「たたむ」かをテーマにした30代のための社会文藝誌。小さい問題も大きい問題も、風呂敷を広げすぎるあまり、問題の所在がどこにあるか分からなくなっている。だとするなら、どう収めていくのが正しいのか。A案とB案とで対立構造がある場合、C案を示すことで収束することが多々ある。合意形成学も駆使しながら、様々なテーマをタブー視せずに取り上げるのが『たたみかた』だ。創刊号のテーマは福島。

道を継ぐ

美容文藝誌 髪とアタシ第五刊「音楽と髪」

発売中
1,404円(税込)

切っても切り離せないのが「音楽と髪」。気になるミュージシャンとそのヘアを手がける美容師たちのエピソードを優しい文章で綴っている。尾崎世界観(クリープハイプ)、U-zhaan、
小山田壮平(AL)、高橋海(LUCKY TAPES)、三戸なつめ、鹿野淳(MUSICA)、ベッド・イン、Bose(スチャダラパー)、辻野孝明(衣装デザイナー)が登場。

ミネシンゴ interview#3:五十嵐郁雄さんとの出会いが今の自分を存在させる>>

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