鈴木 拓也 interview #2:ハサミ1本からできるカンボジアの子どもたちへの自立支援

シャンプーやカラー剤など、ヘアサロンで使う商品を製造・販売する美容ブランド、シュワルツコフ プロフェッショナル。“サステナビリティ”という理念を掲げて2008年に始まった社会貢献事業『未来をつなぐ夢はさみ』は、今年で10年目となりました(2011年は東日本大震災のため中止)。そこで、この事業の過去、現在、そして未来についてお送りいたします。4代目となる現担当の鈴木拓也さんにこのプロジェクトの成り立ちをお伺いしました。

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トレーニング環境が劣悪でも1、2年でやめては意味がない

――『未来をつなぐ夢はさみ』とは、どういった事業なのでしょうか?
「日本の美容師さんが持つカット技術を、カンボジアの恵まれない子どもたちに教えて、自立支援を手助けしようというプロジェクトです」

――この取り組みはいつから始まったのですか?
「2008年に始まりました。今年も6月、7月、11月に実施します。かれこれもう10年目となりました」

鈴木拓也さん

――このプロジェクトが始まった経緯を教えてください。
「本社はドイツにあるのですが、全社として、“サステナビリティ(持続可能)”な取り組みをしていこうという大きなコンセプトが2007年に掲げられました。その中で日本の我々に何ができるのだろうかと考えたとき、弊社には美容師さんという高いカット技術を持っているお客さまがいる。その方たちが先生となり、第三国の恵まれない子どもたちにカット技術を教えることができればと思い、『未来をつなぐ夢はさみ』が立ち上がりました」

――なぜカンボジアだったのでしょうか?
「そもそも支援が必要な国はどこなのか、見当がつきませんでした。絞り込むのは我々だけでは難しいと判断し、日本に本部を置く様々なNPOさんに声をかけました。その中から、『国境なき子どもたち』(KnK)さんが『ぜひいっしょにやりましょう』と言ってくださり、協力をいただけることになったんです。KnKさんの現地拠点がある国で、美容師さんが安全に渡航でき、美容に興味を持ってくれそうな人たちがいて、自立支援や教育に前向きなところを総合的に考えてカンボジアとなり、その中でもバッタンバンという地域に決まりました」

未来をつなぐ夢はさみ

――はじめて行ったときは、大変だったのではないですか?
「私は2012年から引き継いだ4代目になるのですが、第1回目に行った者によると、美容師さんをお連れするには未知な部分がありすぎるので、まずは美容師免許を持っている教育部署の人間から希望者を募り2名が行ったそうです。そうすることで何が足りないのかが見えてきて、次につながるだろうということでした」

――試運転みたいな意味合いだったんですね。
「そんな感じだと思います。バッタンバンは普通の旅行で訪れるようなところではなく、当時は満足に教えることができる環境ではなかったと聞いています。特に電気はドライヤーを1、2台使えば落ちてしまうとか、日本製では使えないとか。また、日本では必ずシャンプー台がありますが、現地では美容所でやるわけではないのでそういうのがありません。水もない、エアコンのような涼しい環境もないという感じだったそうです」

未来をつなぐ夢はさみ

――続けられるのか、という感じですね。
「そうですね。それと、今もそうなんですが、トレーニングにはウィッグを相当使うんですね。第三国からカンボジアに入れるんですけど、毛質の悪い化学繊維でできているので、どんなにカットしてもキレイにならないんです。日本人が切ってもキレイにならない。しかもすぐに刃が悪くなってしまうという……」

――こんな状況なら、やめようかという雰囲気にもなりそうですが。
「やはりサステナビリティというコンセプトのもとでやっているので、1年、2年でやめるのは違うだろうということです。現地で喜んでくれる方もいらっしゃるので、ニーズがある以上、ずっと続けていこうというのが会社としての意志でした」

Profile

鈴木拓也さん

鈴木拓也さん

プロフェッショナル パートナーサービス部
ASKアドバイザー

座右の銘:百聞は一見にしかず、百見は一行にしかず

東京美容専門学校を卒業後、都内のニューヨークドライカットサロン(大峰氏に師事)に勤務。2008年にシュワルツコフに入社し、ヘアケアブランド「BC KUR」の技術/教育セクションを担当。その後、複数のブランド開発を担当し、2012年より「未来をつなぐ夢はさみ」を担当。現在は、フィールド活動をメインに年間120回以上の講師活動で業界を活性化している。

ヘンケルジャパン株式会社
シュワルツコフ プロフェッショナル事業本部

シュワルツコフは100年以上続く、ドイツで生まれたブランド。ヘアサロンで使用する様々な商材やプロダクトを生産するだけでなく、美容師のためにセミナーやコンテストも開催しています。10年前から社会貢献活動として、恵まれないカンボジアの青少年を対象に『未来をつなぐ夢はさみ』を実施。2008年の開始以来、サロンオーナーをはじめ、経験豊富な美容師40名がトレーナーとして参加。130名の生徒たちに修了証書が授与されました。そのうち3名が美容サロンを開業、40名が美容関係に就業するなど、夢への一歩を着実に歩んでいます。

http://www.schwarzkopf-professional.jp/skp/jp/jp/home.html

鈴木 拓也 interview #1:技術を教えに行って、逆に教えられて帰ってくる>>

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