美容業界のトラブル回避のカギはココにある! Moreリジョブ法律相談所

美容業は人が人をより魅力的にできる職業。お客様に喜んでいただき、笑顔を見せてもらえたときは本当に嬉しいし、この仕事を選んでよかったと思える瞬間です。でも、お客様の髪や肌に関わるし、またそもそも接客業ですから、時には笑顔どころかクレームをいただくこともあるでしょう。だけどそれが大きな問題に発展、さらには「裁判沙汰」なんてことになったらどうしましょう。誰にだって可能性がゼロとは言えませんよね。そこで美容業界ならではのトラブルについて「法律的に見たらどうなのか」を現職の弁護士である紀尾井町法律事務所の大田裕章先生に相談してみました。

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CASE1 治療費を請求された!

治療費を請求された!

相談内容

「エステサロンにて。肌が敏感なお客様。施術に使うオイルを数種類から選んでもらうのですが、季節的なこともあっていつもとは違うオイルを選ばれました。するとそのオイルが体に合わなく、後日、かぶれや湿疹を引き起こすことに。施術料金の返金だけでなく治療費も請求されています。これは払うべきなのでしょうか?」

大田先生の回答

まずお客様のお肌の特性について、施術する側が事前にしっかりとカウンセリングをしていたかが問題になります。もしカウンセリングをしていて、お客様もご自分のことを伝えていたにもかかわらず、お肌に合わないオイルを使ったのであれば、損害賠償の対象にはなってきてしまうのかなあと思います。

本件では、オイルを選ばれたのはお客様ご自身ですが、事前にお肌の説明を受けていた場合は、お選びになったオイルがお肌に問題ないかどうかしっかりと検証して選別するというのもエステティシャンの「善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)」に含まれるでしょう。

善管注意義務とは、業務を委任された人の職業や専門家としての能力、社会的地位などから考えて期待される注意義務のことです。これを怠り、過失があると見なされれば、状況に応じて損害賠償の対象となります。

ただ本件で注目しなければならないのは、「後日、かぶれや湿疹を引き起こした」という点です。施術を受けてから時間が経っているということですよね。もし「裁判」ということになった場合は、本当にオイルが原因かどうかを争っていくことはできると思います。

損害範囲は「施術料金の返金だけでなく治療費も請求されている」ということですが、オイルとお肌のトラブルに因果関係があり、善管注意義務も果たしていないということになれば、やはり治療費も請求の対象になってしまうでしょう。施術したエステティシャンがサロンの従業員であれば、雇用しているサロンとお客様で契約が成立しているので、「団体(サロン)が責任を負う」ことになります。ただ多くのエステサロンは施術前に「免責同意書」などを取り交わしていると思いますし、今は「サロン向けの賠償責任保険」というものもありますね。

結論

免責を図っておらず、オイルが原因となれば損害賠償の対象になってしまう可能性が高い。

CASE2 訴えると言われた!

訴えると言われた!

相談内容

「いつも来てくれる女性のお客様。今回はパーマをかけたいということで施術をすることに。しかし、パーマがかかりやすい髪質のため、イメージしていたよりもかなりボリュームが出てしまいました。その場は仕方なく帰っていきましたが、後日来店されてどうしてくれるんだ!と憤慨。訴えると言っています。どうすればよいでしょうか?」

大田先生の回答

いつも来てくださるお客様ということなので、当然、「美容師としては髪質を把握している可能性が高い」と見なされるでしょう。パーマがかかりやすいということも予期していなければいけないんでしょうね。

「イメージしていたよりもかなりボリュームが出てしまった」とあり、サロンとお客様の施術契約どおりではなかったことを認めたようになっていますから、「債務不履行」によりCASE1にもあった「善管注意義務」違反が認められる可能性はあると思います。

「訴える」ということについては、おそらく「損害賠償請求」になるでしょうが、まず施術代。これは債務不履行が認められた場合はお支払することになります。ただ、特別な事情がなければ、「慰謝料」ですとか、「営業利益の減少」ですとかについては認められる可能性は低いんじゃないかと。

過去には、キャバクラに勤めていた女性が、途中で「もうやめて欲しい」と言っていたにもかかわらず、美容師さんが俺に任せろという形で施術を続けて、まったく違うイメージの髪型になってしまったという裁判で、20万円ほどの「慰謝料」が認められた事案はあります。

本件は、常連のお客様ですし、どういうことを「訴える」のか確認して、裁判以外の何か解決策を見出していくというのが一番よいではないでしょうか。せっかく今まで何度も利用していただいたお客様なわけですから。

結論

善管注意義務違反の可能性は大きいが、可能であれば謝罪の上、よく話し合ってみては?

Profile

大田裕章さん

弁護士 大田裕章さん

略歴
私立栄光学園高校、北海道大学法学部、大宮法科大学院卒業。平成23年12月弁護士登録(第二東京弁護士会)、紀尾井町法律事務所に入所。平成26年11月から平成29年3月まで全国町村会総務部法務支援室長。現在、紀尾井町法律事務所に勤務。

紀尾井町法律事務所
〒102-0084
東京都千代田区二番町9番地8 中労基協ビル3階
電話:03-3265-6071(代表)

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