樋口 敦 interview #3:より多くの人に健康を届けるために
解剖学や運動学の知識を基に、スポーツ選手の体をケアし最高のパフォーマンスを引き出すトレーナー。トレーニング指導により筋力を向上させるだけでなく、ケガをした時は痛みの原因を突き止めて治療を施し、体を元の状態に導くことも仕事のひとつです。まさに体作りのプロフェッショナルと言えます。
今回は、Jリーグの専属トレーナーとして働いた経験を持つ、トレーナーの樋口敦さんにインタビュー。現在はフリーのトレーナーとして、スポーツ業界を飛びだし会社員や学生など、一般の方にも健康な体作りの指導をしています。そんな樋口さんは、いったいどのようにして現在のスタイルにたどりついたのでしょうか。後編では、現在フリーのトレーナーとして働くなかで感じていることや、今後の目標を伺いました。
プロサッカー選手を目指す学生の後押しを
――サッカーチーム専属のトレーナーを辞めたあとの活動について教えてください。
「広島にある大学院に通いました。その大学院には、Jリーグのトレーナー時代に治せなかった鼠径部痛症候群を専門に研究している先生がいたんです。先生のもとで、股関節の専門家を目指し、2年間学びました。その頃は、勉強すればするほど『今の知識があればあの選手の痛みをとることができたのに…』と悔しく感じたものです」
――今でもお仕事でサッカーに関わっていますか?
「これまでの経験を生かし、高校生や大学生のサッカー選手にパーソナルトレーニングを行っています。プロを目指すうえで、トレーニングやストレッチなど体のケアは欠かせないものです。そこで、親御さんの負担をかけることなく、若い選手たちが末永く活躍できるようお手伝いをさせてもらっているんです」
SNSを活用し、多くの人に健康を届ける
――最近、新しく始めたことはありますか?
「FacebookやTwitterを活用し、サッカーのトレーニング指導も行っています。普段からSNSを使いトレーナーの目線からサッカーの情報を発信しており、サッカー部の学生から頻繁に私のSNSのアカウント宛にメッセージが届くんです。内容を読むと、『当たり負けしない体を作る方法を教えてください』など、同じ悩みを抱えている学生が多いとわかりました。そこで、学生が普段から実践できる強い体を作るトレーニングの動画などをアップし始めたんです」
トレーナー兼仲介人を目指して
――今後の目標を教えてください。
「サッカー選手とクラブ間の契約をまとめる、仲介人になろうと考えています。これまでは、弁護士しか仲介人を務めることはできませんでした。しかし、2年前にその規定がなくなり今は誰でも仲介人として働くことができます。通常の仲介人は、月に1度選手と会う程度ですが、私は専属トレーナーも兼ねて選手と関わることができるので毎日会うこともできるんです。そうすれば、今のチームの状態や監督との関係、試合での起用法などを把握でき、より円滑に交渉を進められると思います」
高齢化が進む世のなかで、これからますますトレーナーの存在が大切になってくると語る樋口さん。とくに、医学の知識を持ったトレーナーのニーズが高まると言います。今後も、さまざまな経験に裏打ちされた樋口さんの技術が、多くのかたの健康を作っていくことでしょう。
Profile
樋口 敦さん
理学療法士、日本体育協会公認アスレティックトレーナー。
大学卒業後、千葉県、神奈川県のスポーツ整形外科に勤務。医学知識を生かし、スポーツ選手を中心に20,000人以上のリハビリを行う。2011年、Jリーグファジアーノ岡山FC専属理学療法士に就任。プロサッカー選手のリハビリ、コンディショニング、トレーニングを担当。現在は東京、岡山、広島を中心にアスリートに関わった経験を生かし、美しく健康に生きるための手段を広めている。
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