なりたいイメージを必ず叶える!手腕に定評が『ここば空間』
“ここだと思える場所でありたい”という想い込めたここば空間は、女性オーナーが1人でカウンセリングから仕上げまでを行うマンツーマンのヘアサロン。季節の花が迎えてくれる静かな店内は、オーナーである森下友紀子さんの印象そのままに、どこか凛とした空気感が漂っています。実は森下さんは、大学卒業後にアパレル会社勤務を経て美容師となった珍しい経歴の持ち主。3年前にこの店をオープンしてからも、常に先のことを見据えて様々な準備をしているそう。常に現状にとらわれず軽やかに変化するサロンであるために、今、森下さんが考えていることを伺いました。
より削ぎ落としていく方向に舵を切る
――オープンから3年。オーナーとして、スタイリストとして、さらにはヨガの講師としても活躍されていますが、オープン当初と現在ではコンセプトに変化が出てきたとのことですが?
「最初は訪れてくださる方それぞれに合った空間にしたいと考えていて、ヘアサロンだけでなく上のフロアでヨガを教えたり、ワークショップを行ったりをしていました。ただ、私の中で集中して“髪の毛”と向き合いたいなという思いが日増しに強くなり、今後はヘアサロン以外の分野は縮小し、最終的には鏡と椅子しかないような空間にしたいと思っています。もともと、私自身は13歳頃から美容師になる夢を持っていたのですが、両親の反対に遭って大学を卒業するまでは待ちなさいと言われ、卒業後も一度は企業に就職したものの、やはり夢を諦められずに美容業界に入りました。今ではその紆余曲折の中で得たものが非常にこの仕事に役立っていると感じていますが、当時はとにかく早く美容師になりたかった(笑)。そして自分の店を持ち現在に至るわけですが、ある日ふと、あれこれ広げすぎたことで逆に何かがおろそかになってはいないか、髪の毛に対して注ぐ気持ちの濃度みたいなものが薄まってしまっていないか?と考えたんです。そこで今一度、髪の毛が好きという根本に集中していきたいなと。」
髪の毛と向き合う戦いの時間
――広げたものを縮小するのは非常にストイックな作業だと思いますが、物事を突き詰めるという性格は施術にも表れているのでしょうか?
「はい(笑)。実は私はカウンセリングに30分時間を取っていて、カウンセリングは戦いですとお客様にお伝えしています。そこでびっくりされるお客様も多いのですが、これは私とお客様の思い描く髪型のイメージを一致させる一番重要な作業なので、時間を減らすことはないですね。というのも、ボブとひと口に言っても実際には様々な種類があり、お客様が求める質感も人それぞれです。だから時には絵に描いたりしながら、細かな点まで余さず希望を掬い上げます。私が施術に関して心掛けているのはコピーを作らない、ということで、これはその人の魅力を最大限に引き出すバランスを見つけること。そのためにはカウンセリングが欠かせないので、途中でお客様がもう嫌だという顔をされても、“この作業から逃がしませんよ”と言っています(笑)。実際に現在お越しくださっているお客様は、ご自身のこだわりや自分だけの似合わせを求めている方ばかり。だからこそおひとりおひとりを感じて、全力でお客様のご希望にお応えしたいんです。」
理論派スタイリストの強み
――特に得意とされているメニューやこだわっているバランスはありますか?
「美容師をする上でのモットーは“ないは無い”なのですが、これは“できないという答えは無い”ということ。お客様の希望を100%叶えるためにあらゆる角度から、どうすればその方のベストバランスになり、伸びてもいい状態を保つことができるかを追求します。また、似合わせに対しても独自の理論があり、私にとっては首の太さや長さも重要なポイントです。その人の首のシルエットやラインによって同じ長さでもまったく違うものになってしまうので。実は、こういった理論のベースとなっているのは、どれだけものをよく見ているか、バランスの美しさを勉強するか、だと思っています。フワリとしたイメージではなく、自分の中で体系立てた理論からベストを導き出すのが私のやり方なのかもしれません。」
お話を伺っている間も、常に理論立てて質問に答えてくださる森下さん。薬剤やセクションごとに髪の毛を組み立てる美容師は理系なのだと自らおっしゃるように、彼女の施術には一本筋の通った哲学のようなものがありました。後編では、現在“削ぎ落としていく作業”に入っていると語る森下さんに、今後の方向性や次なるステージについて伺います。