経営者になった瞬間 株式会社KOKOMO代表取締役 多田哲也さん

JR恵比寿駅からガーデンプレイス入口前の信号を左へ2分ほど歩いたデザイナーズマンションの一室で、月に2週間だけ開かれるプライベートサロンKOKOMO TOKYO(ココモ トウキョウ)、多田哲也さんがひとりで営むお店です。

なぜ月に2週間だけなのか?多田さんは、香川県高松市に本拠を置くKOKOMOグループの創業者兼オーナー。高松と東京で、美容室、ライフスタイルショップ、バーなどを次々にオープンし、すべて成功させてきている経営者でもあります。

前回(当該ページへリンク願います)では、多田さんが16歳から美容室で働き、20歳で店長、23歳で独立してから多角経営を行うようになるまでを紹介しました。今回は、美容師から経営者へとどう変わり、しかもなぜ今東京でプライベートサロンを営むのかを伺ってみます。

2号店は大盛況、ところが

r.e.店内
r.e.店内(TETSUのBlogより)

多田さんは、23歳で独立後、美容室KOKOMO、バー(『defi』(デフィー))、2軒めの美容室(『r.e.』(エール・ウー))、本社ビル(KOKOMOビル)の購入と次々に展開していきます。
しかし、ご自身は「いつも行き当たりばったりだった」といいます。
「KOKOMOの次に美容室ではなくバーをはじめたのは、ちょうど『バーをやりたい』という人がいたんです。ウチのお客さんだったんですけど(笑)。また友達のビルオーナーが、手頃な物件を持っていまして。人とのタイミング、縁があったのでしょう」

「2軒目の美容室を開くほど、まだ人が育っていなかったというのもあります。KOKOMOは、お客さんが増える毎に、スタッフが増える毎に改装を重ねていました。それでも限界となってきたので、じゃあ店自体をもっと大きいところへ移そうということになって」

一目惚れした物件が見つかります。現在のKOKOMOビルです。高松市きってのオフィス街「中央通り」に面しています。商店街ではなく、完全にビジネスの中枢である中央通りに本社ビルをもった美容室はありませんでした。

「借りるんじゃなくて、絶対にあそこだったら買うって決めて交渉してたんですけど、それが破断になってしまいました。それで、もう1軒新たに出すことにして、50件くらい物件を見に行ったなかでこれ!っていうのが、今の2号店『r.e.』です」

4メートルを超す天井高、30坪の延床面積に客席は3つのみ。フランスのパリをコンセプトにした最高級サロン「r.e.(エール・ウー、“王様”を意味する)」は多田さん自らが前面に立ち、瞬く間に大人気店へ。ところが、問題が起きあがります。

生まれ変わったKOKOMO

KOKOMOビル
KOKOMOビル(高松美容室r.e.(エールウー)のブログより)

「KOKOMO本店のスタッフが苦労しだして、集客に。どうしようかなと思っているとき、破談になった中央通りのビルが僕の提示額まで下がってもう一回来たんですよ。せっかくr.e.を出したのにとも思いましたが、これもやはり縁だと考えなおしまして」

実は、多田さんにはもうひとつ別の感情もありました。それは、当時のKOKOMOへの思い入れと言っていいかもしれません。たったひとりで独立した10坪のお店から移転し、初めてスタッフを入れ、店名どおりに「隠れた楽園」となった場所です。

「自分のそのこだわりさえなくしてしまえば、たぶんみんながもっとハッピーになれるし、そうしないといけないことはわかっていました。それまでのテナントから出て、自社ビルを購入することにしたんです」

「まるで自分を捨てるような」気もしたそうです。その決心が多田さんを美容師から経営者へと変えた瞬間なのではないでしょうか。ビジネスの中心街へと移ったKOKOMOは、ニューヨークをコンセプトにしたハイブランドサロンへと生まれ変わります。

KOKOMOの人材育成とは

KOKOMO本店
KOKOMO本店(高松美容室r.e.(エールウー)のブログより)

「中央通りへ行ったことは、ブランディングとして『この街では、KOKOMOが一番なんですよ』っていうイメージを作れるという考えもありました。僕は安易にチェーン展開する気はありません。『KOKOMO○○店』とか、むやみに店舗を増やすのは価値を下げてしまう」

質の高いお店として大きくしていきたいそうです。今度の店舗は70坪。しばらくは、スタッフを増やしていっても余裕のある面積です。人材育成も「腰を据えて取り組める環境」だと、多田さんは言います。ではどのような人材を育てたいのでしょうか?

「『自由』というのが僕の中で絶対のキーワード。どうお客様へカウンセリングし、どう施術し、どうお帰ししてもいい。基本は教えますが、それはあくまでもスタイリストになるための練習。『自分色』を出していって欲しいと思っています」

「店のカットとか、僕のカットとか全部無視していい、自分なりのカットをちゃんと作って」と多田さん。KOKOMOはグループ化、多角化しており、人を増やさなければなりません。しかし人が増えていくからこそ、個性がなくなってしまわないようにしたいそうです。

「『いいよ、いいよ全然好きにやったら』って僕が言うから、スタッフがルールを作って勝手にやっていくようになりました。『私たちがちゃんとしていかなきゃマズい!』と感じているようなんですよね(笑)」

人への手応えを感じ始めた今、経営者として次は何をしなければならないのか?その答えが、単身で「東京」へ出てきている理由のようです。次回は、これからの展開について、企業秘密も(多少)混じえながら伺ってみます。

profile

多田哲也さん

多田哲也

株式会社KOKOMO代表取締役CEO & Hair Designer & イベンター
KOKOMO TOKYO(東京・恵比寿)、un beau cil(東京・錦糸町及び新小岩)、KOKOMO・r.e.・defi・BOCOCA(以上香川県・高松市)、まつ毛専門サロンmayc(千葉・市川)の8店舗を経営している。

・KOKOMO TOKYO
東京都渋谷区恵比寿3-28-2-401
03-3280-7121
(不定休(月に2週間のみ営業))

・kokomo本店
香川県高松市鍛冶屋町7-3 KOKOMO BUILDING
087-826-2007
http://webkokomo.com/

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