長谷真弓 interview:折れやすく、塗りにくかった自爪。それを活かし相手の「手」を美しくすることへ集中!
フレンチスカルプチュアと言えば長谷先生! と、ネイリスト検定受講者から真っ先に名前が挙がるほど、フレスカに定評のあるネイリスト長谷真弓さん。コンテンツとサロン現場、求められるものも流行も違う「爪」を美しく仕上げるにはどうすればよいのか? 信頼されるネイリストになりたいリジョブ読者は必読です!
キレイは痛い? 初めてのネイル
「初めてネイルサロンに行ったのは10代後半。先輩に、『少しは綺麗にしたら』って言われたからです。私、飲み屋で働いていたんですよ。もともと私の爪って、いちばん短く切ったら深爪になっちゃうくらいベッドが短いんです。同僚たちと比べるとみっともないので手入れしておいでって、貰ったお金を握りしめてネイルサロンへ行きました。 初めてネイルをやってもらって見違えるくらいに綺麗になったけど、すっごく痛かったんです。当時はハードのジェルしかないから全部削らなくちゃいけなくて、それでライトに入れると、すごく熱くなるし! 『女が綺麗になるには痛い思いをしなくちゃダメなんだ』って思いました。私の爪ってネイリスト泣かせって言われるくらい難しい爪で、1週間から10日くらいですぐに折れちゃうのでお金もかかりましたし。綺麗になるには、爪も懐も痛かったです(笑)」
ネイルの先生との出会い
「当時はよくわからなかったので、どうしてこんなに折れるのかなぁと思って、ネイリストさんに『ネイルって難しいんですか?』って聞いたら『いやあ? 勉強すればできますよ』って言われたんです。スクールがあるって、そこで初めて知ったんです。その時は、ネイルを自分でできたり友だちや同僚にやってあげられたらいいなあとぼんやり思って、資料を取り寄せたりしていました。が、仕事もあったし将来サロンを開きたいというような強い希望があったりしたわけでもないので、なんとなくダラダラしてしまい、2年くらい放置だったんです。 でもこのまま年ばかり重ねても…と思い始めて、ある日『行こう!』と決心。決めてからは早くて、即申し込んで、次の日から通いはじめました。 そもそもが学校嫌い・勉強嫌いだったし、全く知らないことだらけだし、先生はめちゃくちゃスパルタでしたし、本当に大変でした。でも、その先生と相性が良かったのか、続けられましたね。海外のコンテストにも連れて行ってくれたし、何も知らない私に厳しいながらも親身に教えてくれました。あの先生じゃなかったら、今ネイルはやっていなかったかもしれませんね」
競争相手がいると燃えるタイプ
「スクールを卒業してサロンへ就職しましたが、ある程度覚えたら1年くらいで辞めようって思っていたんです。やっぱり私にはネイルって難しくて、なかなかお客さまへ入れなかったですし。ただ、そこの店長は当時の私には売り上げでもお客さま数でも技術でも人間性でも(笑)、何もかもが太刀打ちできない相手で、この人に勝ちたいとは思っていました。でも勝てる要素がない。ケンカなら勝てるけど(笑)。 そしたらオーナーから『ケンカじゃダメでしょ、コレで勝ちなさい』ってコンテストへ出場命令が下ったんです。二人で練習していてもやっぱり店長は上手くて、オーナーも店長のことばかり褒める。それは悔しいじゃないですか。私、競争する相手がいると燃えるタイプなんですね(笑)。 そしてプロになってから初めて出たコンテストで、ランクインしたんです。嬉しかったんですけど、ポッと出の私が好成績だったので、みんなから『誰コレ?』って言われたんですよ。それはちょっと悔しくて。もうすぐ1年だったので辞める気だったのですが、ある程度名前を覚えさせてから辞めたい! とか思っているうちに、今に至ってしまっていました(笑)」
難しい爪をキレイに見せる方が得意
「紆余曲折あって、私は現在のサロンで、サロンディレクターという立場になっています。お客さまにも入りますが、ネイルスクール講師やスタッフの育成などにも携わっています。 コンテストのためのネイルとサロンワークでは作るものが全く違いますが、サロンもコンテストも『相手の手を美しくする』という共通点があります。自分の技術を見せるわけじゃなくて、自分の作品を作るのでもなくて、モデルさんやお客さまの手を美しくすること。コンテスト出場者へのセミナーをやっていて、みんなが行きづまっているのはそこだなって感じます。このモデルの爪を美しく見せるためには、どうしたらいいかって考える。そうすると、自然に爪をよく見るようになりますよ。 例えば、縦のカーブより横のカーブの方が強い、ちょっと上向きの爪なら根元にアートをした方が指は綺麗に見えるし、逆に下向きの爪なら爪先にアートをした方が綺麗。爪がわかれば、おのずといちばん美しいが姿が見えてきます。私は自分の爪の形がヘンだし、そういう風に見るクセがついているので、難しい形の爪の方が得意なんですよ(笑)! 10分位ケアしている間にその爪の特徴を10ヵ所以上は言えますよ」
下着の本は、すごくネイルの参考になる!
「流行りのネイルを調べたりとかはしません。その人の可愛らしさやキレイさを引き立てるものは、流行りの柄とかではないと思います。いつも時計や指輪をしている人なら、それが映えるネイルにしたい。私は、ネイルは脇役でいいと思うんです。名脇役が素敵なんじゃないかと。 アートの参考にするのは、海外のファッションショーをメインにした雑誌とアクセサリーの本、あと下着の本をよく見ます。下着って、レースの位置で雰囲気が変わったりとか、淡いピンクやベージュのベースにゴールドのラインがいいのか、同系色のラインがいいのか、ストーンがあるとどう雰囲気が変わるのか、などがすごく参考になります。 ネイルの雑誌は絶対に見ないです。自分が堕落しがちなタイプだと自覚しているので(笑)。簡単なコピーへ流されないようにしたいですね」
『昨日はなに食べましたか?』はNG!
「ネイルの仕事で辛かったことはないです。人間関係とかもねえ、サロンの中で人間関係をつくる必要もないと思っているし。いや、みんな仲が悪いわけじゃないですが(笑)。お店に一歩入ったら、お店とお客さまのことしか考えないのが当たり前ですからね。 また、セミナーなどで接客がうまくできないっていう悩みを聞いていると、うーん…例えば『最近映画見ました?』とか『昨日ごはん何食べました?』とか聞いちゃう若いネイリストが多いんですよね。でも、初めて行ったサロンでそんなことを聞かれたいお客さまなんていないと思うんですよ(笑)。 お客さまは、自分の爪がキレイになるかどうかが、いちばん気になっている。ならば、今削ってるのはなぜか、今の薬剤は何なのか等、今やっていることを説明した方が絶対にいいと思います。 私も人見知りで、話すことは実は得意ではないんです。なにか褒めなくちゃと思って『その服素敵ですね』なんて言って、『興味ないのバレバレだよ』ってお客さまから怒られた時期もあります。そんなことよりも、仕事の解説をした方が技術者としてお客さまから信頼を得ることができる。それは自らの体験からも強く言えることです」
練習のキモは『自己分析』。
「4月にまたアメリカのコンテストに行くんですが、モデルは現地にいるので練習はできないんですね。ほとんどぶっつけ本番でやるんです。いつも、どういう練習をしているんですか? って聞かれるんですが、基礎しかやらないです。日々のサロンワークをやっているから、基礎さえできていれば、腕は鈍らないです。 練習が嫌になっちゃう人は、練習しなくていいところを練習しているから上手くならない、上手くならないから嫌になっちゃうんですよね、先生がテストに出ますよって言ったところだけを練習していても、同じことの繰り返しだと思います。自分のどこが悪いのかきちんと自己分析して、いいところと悪いところをきっちり把握して、あとは集中力と観察力を身につける。 私は、毎日やるなら一日10分以上は練習できないです。人によって集中できる時間も違うと思うので、スケジュールを立てて、自分で考えて練習した方が、確実に身につきますよ」
『今日もいい一日だった』で、酒を飲む(笑)
「ストレス解消は料理です。人に食べてもらうのが好きなんです。将来は小料理屋さんをやりたい! 今は自己流なので、ちゃんとお料理の学校とかも行って、出汁の取り方とか基礎から習いたいですねえ。ポン酢とか作ってみんなにあげたい(笑)! 人生の中で、チャンスって3回くらいしか来ないって言われますよね。だからチャンスをつかむ生き方をしなくちゃいけないけど、分岐点のときにちゃんと選択できれば、あとはどうでもいいっていうか(笑)。 何年か前に、先輩から『人生は指名制だから』って言われたんです。『指名されなかったら一生一人ぼっちだからね』って。例えば飲みに行って『次も絶対飲みましょうね!』って言ってても、どちらかが連絡しなければ次はないじゃないですか。連絡したい、あの人と飲みたいって思うのって、その人と会うと楽しいからですよね。相手がどうしたら喜んでもらえるかって考えられる人は、きっと指名が多いと思うんです。おもてなし精神って仕事だけじゃなくて、人生全てに言える。そういう生き方の方が幸せじゃないかと、最近はよく思います。 あとは、『今日は少し売り上げが上がった』とか『いつもは折れちゃう一本が上手くいった』とか、些細なことであっても、一日のうち何か一ついいことがあればいいですね。無理してがんばらなくても、今日もまあまあいい一日だったな、って言いながら、酒を飲みたい。そんな人生を目指しています(笑)」
Profile
長谷 真弓(はせ まゆみ)さん
日本ネイリスト協会(JNA) 常任本部認定講師ME 2006年・2007年の世界ネイリスト選手権フレンチスカルプチュア2連覇、各種コンテストの30回以上の受賞歴等、いま大注目されるネイリスト。コンペ用のスカルプチュアの美しさとその教え方に定評があり、日本一を目指す若きネイリストから絶大な信頼を得ている。審査員や講師などで人材育成に奮励しつつ自らもサロンワークをこなし、現場レベルでの技術向上に努めている。
Company
AGLAIA(アグライア)
長谷さんがサロンディレクターを務めるAGLAIAは、オフィスで日常使いできるシンプルネイルや、デートのモテ可愛ネイル、さらに華やかなパーティネイルまで、その人のライフスタイルや好みに合わせた豊富なデザインとスピーディな施術が大好評の実力派サロン。 AGLAIA 〒260-0015 千葉県千葉市中央区富士見2-16-4 三社プラザ5F TEL:043-201-3000 HP:http://nail-aglaia.com/