トレンドを創る人 Vol.7 CIECA. 野口和弘さん 課題はスーパースターを育てること #2
榊原章哲氏が手掛ける「Garland」(ガーランド)グループの統括ディレクター・野口和弘さんは、2年前に別ブランドの「CIECA.」(シエカ)をオープンし、代表を務める方。現在、4店舗あるサロンの教育にも携わるなど、企業内のナンバー2として日々忙しい毎日を送っています。
第二回目のインタビューでは野口さんが今現在、粉骨砕身する課題についてお伺いしました。
今こそ教育システムの見直しが必要な時代に
――「Garland」がオープンして7年、そして「CIECA.」の代表としては2年が経ちました。今現在、野口さんが最も力を注いでいることはなんですか?
「ひとつは教育システムの見直しです。SNSが日常となった現在、お客様の髪に対する知識も高まっています。反面、美容業界のアシスタント世代はどうなのか… と考えると、感覚的にこれ可愛いとか、かっこいいはたくさんみつけることができるものの、じゃぁ、その作品のどこがどんな感じで可愛いを描いているのか、作り手の伝えたい事はなんなのかなど、作品の奥を読む力が弱くなっている時代だと感じています」
――探究心が弱いということですか?
「先ほどもお話ししたように、一般の方でも美容の情報量がとても多い時代です。
優秀な美容師というのは美容センスや会話、接客力などが総合的に高いことに加え、技術の中でお客様に刺激やドキドキ感など+αの感激を与えられるスタイルを作れる人。
つまり、かなり高いデザイン力がないと、これから残っていくことは難しいということです」
――なるほど…
「だから、僕はとにかくスタッフをデザイン脳に寄せることを意識していますね。そのためには、インスタだけではなく雑誌の世界でしか体感できないクリエイティブな作品などに興味を持たせることも大事だと考えています」
集団の中に“何人スーパースターを作るか”が課題
野口さんが最も最重要課題としていること。それは、組織の中にスーパースターを作ること。でも、野口さんご自身も十分活躍されているはず。その意図とは?
「僕は、代表が一人勝ちみたいなサロン作りは、この時代において崩壊すると思っているんです。例えば僕だけが目立ってなにごとも表に出ていき… みたいな仕事の仕方です。
ある時代はそれもありだったのかもしれませんが、これからは社員の中に一人でも多くのスターを作っていく経営のほうが賢いと考えています。だから、一番の目標はスター選手を育てることですね」
――スター選手育成のために必要なこととは?
「やはり教育ですね。技術力、人間力の他、リーダーになれる人材作りが必要。そのカリキュラムを構築することも僕の仕事のひとつです。
僕の育った時代はSNSなんかなかったので、雑誌を見て“僕もこんなデザインを作りたい”“雑誌に出てみたい”というのがひとつの目標だった。だから、雑誌に出るサロンに就職したいと願うわけです。でも、今は求めるものも千差万別ですね。どこでやる気のスイッチが入るかわかりにくいのですが、きっかけがあれば一気に貪欲になる人材もいます。
そのスイッチを探すのも僕の仕事かと」
――手厚いですね。
「でも、僕はもともと“やる気のない人は、やる気のある人の足を引っ張る”と思っているタイプなんですよ(笑)。ここが榊原と僕の考えが違う点。榊原は、やる気がなくなっている子や自信のない子も拾う人。みんなを引き上げてあげるタイプなんです」
――ナンバー2として、榊原さんの考えに沿って行動されている。でも、この真面目さが魅力的だと思いますし、会社に対し忠誠心があるのですね。
「そう。僕はかなり真面目なんです(笑)」
担当者をすぐにチェンジできる時代。失客を防ぐには技術力しかない
――美容サイトの登場で、クーポンが当たり前の時代となった今をどう捉えていますか?
「僕のサロンにいらっしゃる新規のお客様は9割が美容サイトを通して来られます。確かに若干の割引はありますが、腕のいい技術者であればお客様も定着すると考えています。
美容ブームのときなどは、トークや接客が素晴らしくてどんどん集客を増やした方もいると思うのですが、今はこれでは残れません。だから、とにかく技術力。このカリキュラムをしっかり構築することがなによりも大事ですね」
クリエイティブ力に長けた野口さんですが、このインタビューを通して、非常に冷静でクレバーな印象を持ちました。時代の一歩先を見据えて行動する運営力。
これからオーナーを目指す人、サロン組織の中で幹部を目指す人に大事なヒントを与えてくれることでしょう。
取材・文/小澤佐知子
撮影/石田健一
Salon Data
CIECA.(シエカ)
日常のヘアにほんの少しの変化を取り入れる。
そんな遊び心を持ったデザインを提案してくれるサロン。CAFÉをイメージして作られた一軒家の店内は、ユニセックスをコンセプトに掲げ、男女共に親しみのある空間作りに仕上げている。
また、オリジナルショコラやマカロンをお茶と共に提供するサービスもうれしい限り。サロンにいながら、ホッと安らげる素敵な時間が過ごせます。
http://garland-tokyo.jp/
トレンドを創る人 Vol.7 CIECA. 野口和弘さん 組織ナンバー2の役割と使命 #1>>