シバタロウ interview #2:自分を更新したい!人気ヘアメイクヒストリー「社会人編」
蛯原友里さんを始め、多くの人気モデルやタレントのヘア&メイクを手がけ、ヘアサロン「P-cott(ピコット)」も経営する柴田洋一郎さんことシバタロウさん。そのぽっちゃり体型と人なつっこい笑顔を人気モデルたちのインスタグラムやブログで見たことがある「モアリジョブ」読者も多いでしょう。
そんなシバタロウさんですが、超理系の大学附属の高校に進学したにもかかわらず、美容学校に進路を変えた異色の経歴を持ちます。しかもヘアメイクになりたての頃は今、思い出すと笑っちゃうほど生意気だったとか。
今年50歳になったシバタロウさんに、今日までの“歩み”を語ってもらいました。その頑張りや自分への厳しさには、多くの学びが隠されていますよ。
同期よりダントツ遅れを取っていた新人時代
美容学校を1年で卒業し、美容室に就職。そこでまた自分の不器用さを痛感したといいます。
「シャンプーにしてもワインディングにしてもブロウにしても、何ひとつうまくできなかったんです。常に技術が人より遅れている……。試験に受かるのも同期の中でいつも最後。焦りましたね。だから人の3倍練習しました。休みの前の日は徹夜で練習。休みの日も出勤して練習。最後は店に泊まってまで練習。何度『泊まるな』と言われても泊まって練習していたので、最後は始末書まで書かされたくらいです(笑)。今、考えると若干病んでいたなと思うくらい、自分のことを追い込んで練習していましたね。
この努力が報われたのは、店に入って約2年後。カットに入るようになってから、やっと実力を発揮し始めることができた気がします」
美容業界は「うさぎとかめ」の世界そのもの
「自分が不器用だ」という自覚は、美容師にとってとても大事なことだとシバタロウさんは言います。
「この業界に30年近くいますが、最終的に“努力した人間”が生き残っているんですね。自分のことを器用だと過信していた人が、努力した人に追い越される姿を何度となく見てきました。まさに昔話の『うさぎとかめ』なんです。ぼくも最初は、自分を器用だと思っていたけれど、美容学校に入って実は不器用だということを思い知らされた……でも自分の不器用さを知って、本当に良かったと思っています。
どんな世界にも上には上がいるんです。だからぼく22歳でデビューしましたが、15年間は休みの日もひたすら練習をしてました。今でも、自分に対してがむしゃらにやらないとダメになるって思っています」
仕事用の自分を作ることも大切
ほがらかに話すシバタロウさんですが、根はものすごく短気な人間だとか。本当に?
「そうなんですよ、ベースはすっごい短気(笑)。でも、この仕事って自分の見え方も大切。だって雑誌やTVの撮影にしたって誰も短気な人と仕事なんかしたくないし、ましてや髪を切る人が短気だったらイヤですよね。そこで極端に表現すると『仕事用の自分』を徐々に作り上げていきました。かといって家で暴れるわけじゃないですよ(笑)。でも仕事用の仮面を持つことって、働くうえでは必要だと思っています。きちんとした技術とサービスを提供するには、素のままではダメ。
とはいえ、もちろん人間ですからイライラするときだってあります。ぼくの場合、寝不足になると自分の悪い部分が出がち。接客も乱れてくるし、人へも当たりやすくなるのでしっかり睡眠をとるようにしています。あとイラッ!としたときは、自分に『今日、イライラしているぞ!』とまず言い聞かせ、目を閉じて深呼吸して落ち着かせるようにしています」
50歳になっても日々自分を更新したい
今年50歳になったシバタロウさん。この業界で50歳というともはや大御所の域では?
「確かに年齢的には、そうした部類に入ってしまうのかもしれません。でも、最近意識しているのは、撮影などの現場に行っても年齢どおりの大御所感が出ないよう気をつけています。ただでさえみんなより年上なので、普通にしていてはベテラン感が自然と漂ってしまう。年齢を重ねるって、そういうことですよね。だからこそベテラン感って、自分で心がけて抑えないと態度や空気に勝手に出てしまうんですね。でもこれが出てしまっている人って、人が離れていく……とくに撮影現場に携わる関係者(カメラマンや編集者、ライターなど)って、こうした態度や空気にものすごく敏感です。そこで“感じ取られてしまったら”、次の仕事はまず来ない。
それに人から何か意見を言われるほど尊いことってないと思うんです。大人になればなるほど人から意見を言われる機会って少なくなっていって、自分の世界に満足して終わりがち。でもそれでは新しいものが生まれない。ぼくはまだまだ伸びたいので、年齢に関係なく言われた意見に関してはとりあえずそのとおりやってみます。だってそれで失敗だったとしても、やり直せばいいだけでしょ?」
「あと、いくつになっても“空気を読む”ことを大切にしています。だからアシスタントがたとえ失敗しても、ぼくは人前では絶対に怒りません。なぜなら現場の空気が悪い方に変わってしまうから。そして1度悪い方に崩れた空気というのは立て直すのが大変です。それこそ、ほかのスタッフにとって迷惑以外の何ものでもない。だから後で注意をするんです。空気を読む、って若いとよくわからないかもしれませんが、この仕事においてとても大切なこと。空気を読む力は年齢によって磨かれてくる部分もありますが、やはり『現場の空気をきちんと読もう』と若い頃から自分自身で心がけることによってわかるようになってきますよ」
取材・文/児玉響子
Profile
柴田洋一郎さん
ヘア&メイクアップアーティスト。東京・渋谷にある美容室「P-cott(ピコット)」代表。ナチュラルメイクとスタイリングに定評があり、多くの人気モデルやタレントから指名が絶えない。プライベートでは、ラーメンと『スターウォーズ』が大好き。
P-cott(ピコット)
東京都渋谷区神南1-13-10
03-5456-4941
インスタグラム:shibatarosun1
P-cott Twitter:https://twitter.com/p_cott
HP:http://www.linxlinx.com/index.html
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