若い美容師の通過点!モデルハントを成功させる方法とは
アシスタントはもちろん、スタイリストになった後でもスキルを磨きたい美容師はカットモデルを街中からスカウトしなければいけません。しかし、突然声をかけてカットモデルになってもらうには工夫が必要です。一瞬で「信頼できる人間」だと思わせたうえで「この人になら髪の毛を触られてもいい」という段階にまで話を進めなくてはいけないからです。この記事では、美容師がモデルハントを成功させるためのコツについてまとめました。
美容師に行ってくれそうな人にしぼって声をかける
カットモデルはモデル事務所に頼んでプロに来てもらうことも可能です。しかし、費用がかかるので頻繁に利用はできません。モデルのスカウトは街頭での声かけが中心になるでしょう。いわゆる「モデルハント」を成功させないと美容師は実践的なスキルを練習できないのです。
しかし、街頭でのモデルハントは至難の業です。ほとんどの通行人にはまず断られると思った方が賢明です。それでも、成功率を上げたいなら「美容院に来てくれそうな人」に絞って声をかけてみましょう。大前提として人は時間に余裕がないと美容室には寄ってくれません。仕事中や予定がある人、ショッピング中の通行人はスカウト段階で切り捨てましょう。見極めるポイントとしてはスーツなどのフォーマルスタイルに身を包んでいる人間は、仕事中の可能性が高いです。美容院に寄るほどの時間はないと考えられます。また、急ぎ足の人、連れがいる人もNGです。逆に、狙うべきなのは買い物袋を提げている通行人です。手荷物が多いと「忙しそう」と思えるかもしれません。
しかし、荷物が多いのは用事が終わり、帰路に着いている証拠でもあります。急いで帰る理由がなければモデルハントにも付き合ってくれる場合がありえます。若い女性をターゲットにするのも1つの方法です。学生や独身女性は比較的時間のゆとりがあるので、突然の予定にも対応してくれます。また、カットモデルのように無料で髪を切ってくれるチャンスにも敏感に反応します。主婦層は家事があるために「早く帰らなければ」と焦っているときも多く、カットモデルの誘いにもとりあってくれないでしょう。美容院に行ったばかりの人も切り捨てるのが無難です。カットしてもらった直後だと、ヘアスタイルが整っていたり、毛先がそろっていたりします。ヘアスタイルをいじりたくないのでモデルのお願いも聞き入れてくれません。
通行人のコーディネートからも、カットモデルになってくれそうな人を判別しましょう。美容院に入るハードルが低い人ほど、突然のカットモデルにも抵抗を示しません。普段からヘアスタイルやファッションに気をつかい、メイクも徹底している人を狙うのがおすすめです。一方、女性は美容院に行くためにはそれなりに身だしなみを整えたい傾向があります。服装が地味だったり、すっぴんだったりする女性はカットモデルを断る確率が高いでしょう。
コミュニケーションをしながらカウンセリングを始めてしまう
カットモデルの交渉をしたくても、とりつく島もなく去っていく通行人は少なくありません。多くの人は道でいきなり声をかけられても「怪しい」と感じます。いくら美容院の名前を出したり、「無料でヘアカットができます」と誘ったりしても「だまされるのではないか」という疑いは簡単に消えないのです。モデルハントにおいては「マイナスの印象から始まっている」くらいの心持ちでもいいでしょう。そして、なんとか通行人に興味を持ってもらえるようなコミュニケーションを目指します。
おすすめなのは交渉中のコミュニケーションにカウンセリングを含める方法です。美容院ではお客様への施術はカウンセリングからスタートします。どんな髪型がいいのか、どんなイメージを目指していてどんなシーンで見栄えを良くしたいのかをカウンセリングで探っていきます。モデルハントではいきなり「モデルになってください」とお願いするのではなく、「ヘアスタイルについてうかがっていいですか」という会話から切り出しましょう。そして、現在のヘアスタイルへの不満などを聞き出していきます。
急にヘアスタイルの質問をされても戸惑ってしまう通行人もいます。そこで、「美容師なんですが、髪についてのアンケートにご協力ください」という体裁にすると比較的、質問を受け入れてくれるようになります。アンケートを選択肢で答える形式にしておくと、通行人も頭を使わなくてすむので、会話をしていて苦痛を感じません。「最後に髪を切ったのはいつですか」「今後、挑戦してみたいヘアスタイルはありますか」などの質問を盛り込んでおくと会話のネタとしても効果的です。
アンケートの回答から通行人の悩みや不満を聞き出せたら、「うちの美容院なら解決できますよ」とメリットを提示します。そして、「よろしかったら今、カットモデルも募集しているんですけど」と提案してみましょう。会話を通して距離も縮まっていますし、ヘアスタイルについての問題点が整理されているぶん、素直に「それなら行ってみようかな」と考えやすくなっています。もしも、その場で「OK」がもらえなくても連絡先を忘れずに伝えましょう。たとえ、そのときに時間が無くても後日、店に来てくれることはあるからです。
交渉時の声がけで気をつけること
モデルハントの際には必ずフライヤーやパンフレットを用意しましょう。あるいは、美容師個人の名刺も効果的です。急に声をかけられても、ほとんどの通行人はまともに話を聞いてくれません。むしろ「怖い」「驚いた」という感情が先立ちます。男性美容師から女性に声をかければ、ナンパにも間違われてますます冷たい扱いをされるでしょう。「自分は美容師でカットモデルを探しています」と即座に証明できるアイテムがモデルハントでは求められます。広告は通行人を安心させるために最適でしょう。
美容師の見た目も大切です。モデルハントでは第一印象が非常に重要です。たとえば、不潔な印象がある人間に「美容師です」と言われても説得力はありません。それに「こんなだらしない人に髪を触られるのは嫌だな」と思われます。髪形はしっかりと整え、白シャツなどの清潔感のある服装でハントを行いましょう。派手なメイクや男性美容師の髭も止めておいた方が無難です。派手メイクも髭も気にしない人は気にしません。しかし、敬遠する人が少しでもいる限り、不安要素はあらかじめつぶしておくようにしましょう。
当然ですが、声がけは基本的に「敬語」です。なれなれしく語りかけた方が通行人と打ち明けられる場合もありますが、例外的なケースだと心得ておきましょう。そもそも、モデルハントの時間も営業中なのは変わらず、プロの美容師としての振る舞いが求められています。店外であってもお客様と接する態度には変わりがありません。声をかけた相手にはすぐ自己紹介をし、丁寧に「モデルになっていただけませんか」とお願いをします。
人は「あなたでないと困る」「あなたしかいない」と頼まれたときに放って置けなくなる心理が働きます。逆に「誰でもいいんですが」と言われたら余裕があっても了承したくないと思うでしょう。モデルハントでも「あなたでなければ嫌です」と伝えれば、相手も悪い気がしません。それに、「自分が了解しなければこの人はカットの練習ができないのか」とプレッシャーも与えられます。モデルハントは一期一会です。目の前の相手に全身全霊で誠意を見せましょう。