早く一人前になるために『prankster』
さまざまな文化がクロスオーバーする下北沢で、オリジナリティ溢れるカラーやデザインで、若い世代を中心に絶大な人気を誇る『prankster』。スタッフには早い段階で自らの目標を立ててもらい、それを達成することを一つのモチベーションにしながらも、和気あいあいとした雰囲気の職場となっているようです。
コミュニケーションを大切に
――オリジナルの商品を展開しているとのことですが、インターネットを通した販売などはしないのですか？
「一切していません。そこはこだわりたいんですよね。逆に、ここでしか買えないということが、いらっしゃってくださるお客様にとっても価値になると思うんですよ。」
――お客様と接することで気を付けていることはありますか？
「特別なことは特にありませんが、一つ、あるとすると、ウチは“いらっしゃいませ”というのを禁止しているんです。ご来店された時は“こんにちは”か、“こんばんは”と言って、お迎えするようにしています。これはオープン当初から変えていませんね。お店とお客様の距離を近づけたかったんですよ。自分が学生だった頃、たまにお金を貯めてオシャレなサロンに行ったりしたんですね。それでちょっとトンがったお店に行くと、店員の方もツンツンした印象があって。もちろん、それは僕の印象かもしれないし、お話すればフレンドリーな方もいらっしゃったんですよ。ただ、僕が自分でやるなら、最初からフレンドリーな雰囲気にしたいな、と思ったんです。それに“いらっしゃいませ”とお迎えするとお客様は何も言えませんよね。でも“こんにちは”とお迎えすれば、“こんにちは”と返していただける。そこからコミュニケーションをはじめることができるんですよ。」
――確かにお客様にしてみれば、入りやすいお店という印象になりますね。
「今、ウチには2名のスタイリストがいます。1人は7年、もう1人は3年ほどになりますが、2人ともお客様と仲良しですよ（笑）。」
大事なことはやる気を引き出すこと
――2人のスタイリストのスキルアップに岩野さんがしていることは？
「練習は基本的に毎日やりますよ。その時に気をつけているのが、自分が経験して困ったことを踏まえた内容にすること。僕自身のキャリアを振り返った時、アシスタントとして技術を教えていただき、スタイリストになったわけですが、その時に困ったのが、技術以外の部分なんです。カウンセリングなどのお客様との対話であるとか、売上に対する目標の立て方とかですね。だからウチでは、とにかく早い段階から、そのようなスタイリストとしてしなければならないすべてのことをマスターできるように伝えていますね」
――具体的にはどんなことを？
「ウチは実践重視です。例えば営業時間中にモデルさんを呼んでもいいとしています。そういった緊張感の中でお客様が望むカラーであるとか、髪型を聞き出して、自分で考えて創り上げるということを早い段階からしてもらうようにしています。それによって、自分で自分のスキルを上げていくことができるんですよ。そういうことをアシスタントの段階からすることで、スタイリストとしてのスタートラインが変わってくるんです。だから、ウチに来て3年目のスタイリストは、アシスタントを終えて、まだスタイリストになったばかりなんですが、すでに常連のお客様が付いています。それはそのまま売上にもつながることですよね。アシスタントの段階から実践型のトレーニングをしてきたことが生きていると思いますよ。」
――お客様にしても「なりたて？」と思うより、安心感がありますよね。
「だから自分たちで売上目標も立てていますよ。それも毎月目標を変えて、日々、それを自分でチェックして、どうすれば目標が達成できるかを考えている。それができるようになると意識も変わるし、日々のがんばりも変わってくるんです。そこが一番大事なところかな、と思うんですよね。目標がぼんやりすると緊張感がなくなってしまいますから。もちろん、目標に達成できなかったとしても、ペナルティなんか一切ありませんよ。ただ、僕の方ではきちんと見ているので、目標を達成できなくても怒りはしませんが、“今月はこういうふうにやってみれば”って、アドバイスをするようにしています」
スタッフとともに面白いことをやりたい
――逆にスタッフのみなさんからの提案があったりはするのですか？
「提案というか、例えば“もっとアップが上手になりたい”というように、スキルアップに関する貪欲さを感じる時はあります。もちろん、そんな時にはアドバイスしますよ。でも、どちらかというと、そんなふうに“教えあげる”というスタンスではありませんね。僕も対等な感じでいるので、営業が終わった後の雑談の中で“最近はこんなカラーが流行っているみたい”といった具合に、フランクに情報交換をしあう感じですね。」
――スタッフのみなさんと、そんなふうにコミュニケーションを取れるということは、やはり岩野さんは、“スタイリストでありたい”という最初の思いを貫いているのでしょうね。
「そうかもしれませんね。今、ウチにいる2人のスタイリストのうち1人は、もともとお客様だったんですよ。通ってきてくれているうちに、“ここで働きたい”と言ってくれたんです。もちろん、そういう出会いがすべてじゃありませんが、一緒になって面白いことをやりたいと思う人と仕事をしていけるといいですね」
Profile
岩野マサシさん
店長
施術歴22年以上となるオーナーの岩野マサシさん。
自分のやりたいことを実践しながら、お客様のさまざまなニーズに応えることの努力も怠らない。
