薬剤師に将来性はない? 生涯年収と年収アップの現実をプロが解説

「薬剤師は将来性がない」「薬剤師は飽和している」──SNSなどで、そんな不安の声を目にすることがあります。薬学部の増加や医療制度の変化などを背景に、薬剤師を取り巻く環境が変わりつつあるのは事実です。では実際のところ、薬剤師の市場価値や年収は今後どう変化していくのでしょうか。

今回は、薬剤師の転職支援を行う「エニーキャリア」のキャリアアドバイザー、原瑞希さんにインタビュー。日々、多くの転職相談に向き合うプロの立場から、年収動向や市場環境の変化を踏まえた薬剤師の将来性についてお話を伺いました。

今回、お話を伺ったのは…

「エニーキャリア」キャリアアドバイザー

原 瑞希さん

都内のドラッグストアチェーン店にて薬剤師として3年間従事。2024年に「エニーキャリア」へ入社し、キャリアアドバイザー業務をスタート。現在3年目でこれまで約101名の就職・転職活動に伴走。薬剤師経験を活かしたサポートで、2024年に社内表彰にて新人賞銀賞を受賞した実績を持つ。

薬剤師の生涯年収は約2億円。地域差と今後の見通し

――まず、薬剤師の生涯年収の目安を教えてください。

正社員の薬剤師の場合、生涯年収はおよそ2億2,700万円といわれています。薬局や病院など職場によって差はあるものの、あまり大きくありません。生涯年収ベースで見た場合、300万円程度です。

――エリアによって、生涯年収に差は生まれますか。

はい。一般的には地方のほうが高くなる傾向があり、実際に約1,000万円の差が出るケースもあります。

――その理由は何でしょうか?

主に人手不足です。都市部には薬学部を持つ大学が複数あり、卒業後にそのまま近隣で就職する人が多いと言われています。その結果、地方では人材確保のために給与水準をやや高めに設定することが少なくありません。そのため、生涯年収にも差が生まれやすいんです。

――一般的な薬剤師の給与体系にはどんな特徴がありますか。

初任給はおおよそ25〜40万円が多く、一般企業と比べても高めのスタートができる点が特徴です。一方で昇給率は平均1〜3%程度と緩やかで、急激に収入が伸びるというよりは安定的に積み上がっていくスタイルだと思います。

もちろん就職先にもよりますが、大手企業では1年ごとに一律5,000円前後の昇給が設定されているケースもあって。長く働くほど安定した収入形成につながりやすいという面もあります。

――それでは、今後の平均年収はどう変化していくと考えますか?

現状では、大きく上昇していく可能性はないと考えています。2024年の調剤報酬改定によって、薬局側はかかりつけ薬剤師の配置や業務拡大などに対応していかなければ収益を伸ばしにくい状況です。そのため、人件費に大きく還元できる余力が生まれにくく、平均年収の大幅な上昇は見込みづらいと感じています。

女性薬剤師の年収は? ライフステージと働き方の影響

――女性薬剤師は、どのようなタイミングで年収差が生まれやすいのでしょうか?

結婚や出産など、ライフステージが変化するタイミングで収入に差が生まれやすい傾向があります。そのタイミングで働き方を見直し、正社員からパートへ切り替える方も少なくありません。そのため勤務時間が短くなり、年収はある程度下がる可能性が高いです。

たとえば東京都でパート勤務する場合、薬剤師の時給は2,000円台前半がひとつの目安です。週4日程度の勤務であれば、年収はおよそ350万円前後になるケースもあります。さらに育児との両立を優先する場合は、勤務時間の制限により収入がさらに減少する傾向がありますね。

――パートの生涯年収はどのくらいでしょうか。

約9,500万円という試算があります。ですので正社員と比べると長期的には1億円以上の差が生まれる可能性があるんです。ただし、これはあくまで単純比較による目安であって、勤務年数や働き方によって大きく変動します。

――子育てをしながらでも、年収を大きく落とさないための方法は?

たとえば、時短正社員制度を導入している職場を選ぶことは有効な選択肢のひとつです。パートに切り替えるのではなく、雇用形態を維持しながら勤務時間を調整できれば、長期的な収入差を抑えやすくなります。

家庭の事情に柔軟に対応してくれる職場と出合うためには、条件を妥協し過ぎず、情報収集を丁寧に行うことが大切です。

市場価値を高めるために。薬剤師の年収アップ戦略

――年収を伸ばすための現実的な方法は?

最も現実的なのは、転職を行うことだと考えています。ただし、やみくもに転職回数を重ねればよいというわけではありません。調剤経験を積む、在宅医療に携――わる、専門性を高めるなど、自身の市場価値を高めることが前提となります。

そのうえで、自分のスキルがより評価される環境へ移ることができれば、社内昇給だけに頼るよりも効率的に年収アップを目指せる可能性があります。

――転職活動での年収交渉は、どのように進めるのがよいでしょうか。

転職サービスを利用している場合は、キャリアアドバイザー経由で年収交渉を行うのがおすすめです。第三者が間に入ることで、希望条件を客観的に伝えやすくなります。

一方で、面接の場や採用担当者とのやりとりの中で、応募者自らが直接条件交渉を行うのは避けたほうがいいでしょう。伝え方やタイミングによっては、採用結果や印象に影響が出てしまう可能性もあります。

――では、職場を変えずに年収アップを目指すにはどうすれば?

たとえば、通常の調剤業務に加えて、在宅業務の対応件数を増やすことは、ひとつの方法です。在宅分野に積極的に関わることで、評価や手当につながるケースがあります。

実際に、薬局として施設との契約を獲得し、在宅業務を拡大させたことで収入アップにつながった事例もあります。また、在宅医療では「オンコール対応」といって、夜間や休日に呼び出しに応じる体制を担うことで、手当が支給される場合もあります。

ただし、これらは勤務先の方針や評価制度によって異なります。まずは自社の評価基準や手当制度を確認し、自分がどの領域で貢献できるかを整理することが大切です。

――将来的に市場価値を下げてしまうキャリア選択があれば教えてください。

一概には言えませんが、派遣薬剤師としての勤務を長期間続ける場合は、その後のキャリア選択に影響する可能性があります。

派遣は時給が高いというメリットがありますが、1〜3ヶ月単位の有期契約が多く、職場を短期間で移るケースも少なくありません。そのため、正社員採用を目指す際に「長期的に勤務できるか」という点を懸念される場合があります。もちろん派遣を選ぶこと自体が悪いわけではないので、将来的な働き方やライフスタイルに合わせて選択しましょう。


薬剤師は将来性がないと言われることもあります。しかし専門性を高めたり、働き方を広げたりすることで、市場価値を高めていくことは十分可能です。将来性は職業そのものではなく、どのようにキャリアを築いていくかにかかっているといえるでしょう。


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原瑞希
薬剤師専任キャリアアドバイザー
薬剤師免許保有

【経歴・実績】
・ドラッグストアチェーンにて薬剤師として3年間従事
・2024年度 新人賞(銀賞)受賞

【プロフィール】
元薬剤師として現場の空気感やストレスを肌感覚で理解しているため、悩みへの深い共感が可能です。
求人紹介だけでなく、入社後の教育体制まで徹底確認して提案。生活の変化を具体的にシミュレーションし、不安のない転職を支えます。

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