髙橋孝宜 interview ＃1：俳優を陰で支える舞台トレーナーとは

トレーナーと言えば、スポーツチームや病院に属して患者さまのケガを治療しているイメージが強いものです。しかし、なかには個人や法人のお客さまと契約を結び、パーソナルトレーニングを施すなど、組織に所属せずフリーランスとして活躍している方も多くいます。今回は、そんなフリーランスのトレーナーとして俳優に施術をおこない、陰で舞台を成功に導く舞台トレーナー髙橋孝宜さんにお話を伺いました。
前編では、トレーナーになったきっかけや、大学時代に出会った恩師について語っていただきます。

俳優を陰で支える舞台トレーナーとは

――まず、舞台トレーナーの仕事について教えてください。
「舞台に帯同し、マッサージなどの施術を通して俳優のコンディションを整えることが仕事です。劇場入りをしたら、まずは舞台にあがる前の俳優に施術を行い、本番中は基本的に緊急事態に備え待機しています。その間に、出番待ちをしている俳優さんに施術をおこなうこともありますね。そして最後に、公演を終えた俳優の体の状態を確認し、対処をして一日が終わります」

ケガを繰り返した学生時代

――トレーナーという仕事に興味を持ったのはいつ頃ですか？
「高校生の時です。当時は、ラグビー部に所属しており、ハードな練習のなかで頻繁にケガをしていました。そこで接骨院に通院し、トレーナーの先生と深く関わる機会が多くあったんです。高校3年生の頃に、お世話になっていたトレーナーの先生に進路を相談したところ、早稲田大学の先生の元で勉強することをすすめられたんです。それからは、早稲田大学に入学することを目指し必死に勉強しました。その成果もあり無事に合格し、高校生の頃に紹介された先生のゼミに入ることができたんです」

恩師から言われた衝撃的なひと言

――大学時代で印象に残っているできごとはありますか？
「恩師であるゼミの先生から『トレーナーにとって必要なことは、人間性である』と教えられたことです。ゼミの授業で、試合中にケガをした選手の対応について質問され『アイシング（冷却）をします』と答えたんです。すると、『私もそうします。私と髙橋くんができることは、実は同じなんです』と。ある程度の知識と経験があれば、できる対応は同じであり、選手と深く関わるトレーナーにとってより大切なことは、人間的なところにあると教えられました。当時は、テーピングを巻くことやリハビリのメニューを考えることなど、技術的な面がもっとも大切だと考えていたので、そのひと言は衝撃的でしたね」

――なるほど。それでは大学卒業後の進路について教えてください。
「整形外科に併設されているリハビリ施設で働き始めました。当時、患者さまに対応しているなかで直接的に筋肉をほぐせた方が、リハビリをした際によりよい効果が出るのではないかと感じることが多くありました。そこで、固まった筋肉を緩めることができる鍼灸マッサージの技術を身につけようと考え、整形外科を辞めて鍼灸の専門学校に通うことにしました」

大学時代は先生から「とにかく現場に出なさい」と言われ、アイスホッケーチームに帯同したこともあったという髙橋さん。当時関わった選手が、今はオリンピックに出場しており、活躍している姿を見ると嬉しくなると語ってくれました。中編では、トレーナーとして働くなかで感じたことや、舞台に関わるきっかけについて語っていただきます。

Profile

髙橋孝宜さん

鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師(国家資格)、(公財)日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JASA-AT)。早稲田大学スポーツ科学部卒業、日本鍼灸理療専門学校本科卒業。女子アイスホッケーチームトレーナー、高校サッカー部トレーナー、J2キャンプ帯同など、さまざまなスポーツに関わる。2013年からは舞台、LIVEのトレーナーとして活躍、現在に至る。

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