安田和正 interview #1:日本あん摩マッサージ指圧師会会長が語る業界の未来
街に整体やリラクゼーションサロンが増え、年々需要が増しているマッサージ業界。しかし、マッサージについてきちんと理解している人は、そう多くありません。実は、マッサージは古くから人々に親しまれている歴史ある療法。また、高度な技術を要する専門職でもあります。そして、そんなマッサージのプロが “あん摩マッサージ指圧師”です。今回は、公益社団法人日本あん摩マッサージ指圧師会会長、安田和正さんにインタビュー。
あん摩マッサージ業界が抱える課題や、今後の目標などを語っていただきます。前編では、一流のあんまマッサージ指圧師の技術などについて伺いました。
“あん摩マッサージ指圧師”の存在をもっと世のなかに広めたい
――まず、あん摩マッサージ指圧師の仕事について教えてください。
「患者さんの体に、押す、もむ、こするなどの刺激を与え、肩こりや腰痛などの改善を図ります。また、人体に直接触れるので患者さんの体に悪影響を及ぼす危険性があり、国家資格を持っている者だけが許されている高度な療法なんです。一人ひとりことなる症状を緩和するためには、患者さんの体をしっかりと把握し、適切な施術を行う力が必要になります」
――なるほど。今、業界が抱えている課題はありますか?
「“あんまマッサージ指圧師”という職業が、それほど世のなかに浸透していないことですね。マッサージは、きちんとした技術を持っている施術者からサービスを受けなければ、体に損傷を受けることにつながります。しかし、数年前に規制緩和政策があり無免許の人でもマッサージに似た行為ができるようになりました。そのため、最近は整体やエステが増えているんです。癒しを求める方が増えているという時代背景も関係していますね。ちなみに、国民生活センターの調べによると、無資格者のマッサージによって実際に体に損傷を受けたという報告も届いているんです。“あん摩マッサージ指圧師”の存在をもっと世のなかに広めて、一般の方には質の高い施術を受けて欲しいですね」
免許はただの紙切れに過ぎない。大切なのは、技術を磨くこと。
――あんまマッサージ指圧師が認知されるには、どのようなことが大切ですか?
「あん摩マッサージ指圧師の技術力を高めることです。患者さんは、最終的には腕が良い施術者の元にいきますから。いくらエステや整体が増えても、技術がしっかりとしていれば治療院の業績をあげることができるんです。しかし、なかには国家資格を取ったことに満足して、技術を磨こうとしない人もいます。そういった人に限って『リラクゼーションのお店が増えたせいで、患者さんが来ないんだ』と売上げが伸びない原因を環境のせいにしているんです。免許はただの紙切れに過ぎません。もっと勉強して、患者さんから信頼されるあん摩マッサージ指圧師になってほしいですね」
一流のあん摩マッサージ指圧師の共通点
――一流のあん摩マッサージ指圧師に共通していることを教えてください。
「腕が良い人ほど、治療をしている時間が短いですね。10~15分で患者さんが満足のいく施術を提供しています。そのため、1日に何十人とマッサージをすることができ、治療院の業績も伸びるんです。逆に、技術がない施術者ほど、むやみに全身をもみほぐしているため時間がかかります。肩が上がらなかったら肩を、腰が痛かったから腰を、きちんと楽にしてあげればいいんです」
あん摩マッサージ指圧師の歴史はとても古く、起源をたどると室町時代にまでさかのぼります。また、一般的に普及が始まったのは明治時代なんだそうです。長年人々に愛されてきたあん摩マッサージの“癒しの力”を感じるお話でした。中編では、あん摩マッサージ指圧師に求められる力について、また今後力を入れていきたい活動について伺います。
Profile
安田和正さん
公益社団法人日本あん摩マッサージ指圧師会会長
講演や勉強会などを通し、あん摩マッサージ普及のために尽力。また、組織づくりにも力を注ぎ、日本あん摩マッサージ業界の発展のために日々活動している。
Information
公益社団法人 日本あん摩マッサージ指圧師会
住所:東京都新宿区西早稲田2-18-2 日本盲人福祉センター内
TEL:03-3200-0031
info@nichimakai.or.jp
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