判断基準はいつでも「お客様のためになっているか」【ハリジェンヌ 代表 光本朱美さん】#2
美容業界で働くうえで「独立」という目標を持つ人は多いはず。そんな方に向けて、独立して成功した先輩オーナーの経験談をお届けする本企画。
前編に続き、美容鍼エステサロン「ハリジェンヌ」代表の光本朱美さんにインタビュー。高い技術力で支持を集め、サロンケアにとどまらない知識の発信で、たくさんのお客様の信頼を得ています。
後編では、開業後に取り組んだ業績アップの工夫や、コロナ禍で感じたこと、独立・開業を目指す人へのアドバイスをお聞きします。
お話を伺ったのは…
ハリジェンヌ代表 光本朱美さん
2012年、表参道に美容鍼エステ「ハリジェンヌ」をオープン。現在では美容鍼エステサロン6店舗、美容脱毛サロン1店舗を経営するほか、海外27カ所と技術提携中。新しい美容鍼灸モデルの確立を目指し、多くの女性の美容を底上げするための情報発信を続けている。
サロンケアとホームケアに携わることで業績がアップ!
──開業後に取り入れた業績アップの工夫を教えてください。
開業当初からこだわっていたのが、効果が出る技術の追求でした。でもこだわりが強過ぎて、技術だけでなんとかしようとし過ぎていたところがあって…。もちろん技術も大切ですが、お客様がサロンにいらっしゃるのは多くて月2回。技術だけにこだわると、その2回しかアプローチする機会がないことになるんです。
だから視点を変えて、技術を高めるために得たものを、お客様の知識や技術に変えていく方法を考えました。セルフマッサージの仕方や化粧品の塗り方など、サロンケアとホームケアの両方を提案できるようになると、業績も軌道にのりましたね。
──もうすぐ開業から10年ですが、当初から変わったことはありますか?
いろいろ変えたり戻ったりしましたね。今はコロナ禍ということもあり、商品ニーズがすごく高まっています。でも商品をただ通販で売るというよりも、知識を伝えるという面のニーズは変わらず高いので、そこは変わらず意識しています。
この10年でもトレンドや時代に合わせた技術開発、メニュー開発というのは常にしていて、そこをお客様からも評価いただいています。長くお付き合いすると、その方のモチベーションやお悩みも変化しますから、時代や年代に合わせた技術と知識の提供は続けていきたいですね。
あと個人的には、時間の使い方がすごく変わったと思います。数年周期で、自分の時間の使い方を見直すようにしているんです。
仕事をするうえで、自分の時間の使い方を知ることは、とても大切です。時間に追われて幸福感がなくなることは、この業界の方には多いんじゃないでしょうか。とくに入社当初は、勉強もしたいしプライベートも大切だし、もっと時間があればいいのに!って感じですよね。でも24時間しかないから、何に何分くらい時間がかかるのか計算して、時間間隔をつける。これを定期的にすることで、いろんな時間を楽しめるようにしています。
24時間ハリジェンヌの技術が誰かを喜ばせているのが嬉しい
──ハリジェンヌは海外との技術提携や世界美容大会への出場など、世界に目を向ける姿勢があります。その理由は?
世界を意識したのは、19歳のときに世界美容大会にモデルとしてステージに上がった経験からでした。いろんな人種の方がこの技術を見ているって、すごいことだなと思ったんです。日本のいいものや概念を世界に発信して、それが現地で記事になり広がっていくことに、すごく憧れました。
そこで「10年以内にこのステージに技術者として上がりたい」という目標ができたんです。それから9年で大会に招待いただけるまでになれたのは、自分の誇りになっています。
現在は世界27カ所で技術提携をしています。自分が寝ている間も、ハリジェンヌの技術で喜んでいる方がいることが、すごく嬉しいです。
24時間365日、どんな場所でもお客様に携わりたいということに、すごくモチベーションが高いんですよね。だから世界に技術を届け続けるのは、私の中で大切なことなんだと思います。あと技術において、すごく自信があるんです(笑)。
コロナ禍で、お客様により実感いただけた技術力の高さ
──コロナ禍を経て、お店には影響はありましたか?
良くないことも、良かったこともありました。
良くなかった点は、開業からのお客様が離れてしまったこと。表参道まで電車に乗っていらっしゃるのが難しくなったのが原因ですが、それはつまり「ここでなければいけない」というのが弱かったから。お客様であってファンではない、というのが、すごく反省点ですね。
離れてしまったときに、私たちももっとお客様に対しての情熱、お客様を必要としていたか。そこにもっと自信が持てる行動を積み重ねられていなかったのではないかと感じました。
改善するために、スタッフ教育にさらに力を入れるようになりました。これまで私の中で甘い部分もあったと反省したので、スタッフが成長すること、お客様が喜ばれるかどうかを判断基準に、より研修内容を深めていこうと思っています。
──よかった点は?
経営面としては、商品ニーズとそれに付随するハリジェンヌの技術力のニーズが高まったことです。マスク生活になり顔の筋肉を動かさなくなったこと、肌トラブルが増えたことで、久しぶりに施術を受けたときの効果がすごく出ました。
マスク生活で肌がたるむ人が増えるなか、ハリジェンヌのお客様は肌が上がっていく。そこをすごく喜んでいただけました。でもそれも、こんなときでもサロンに来ていただけたからなので、本当にありがたいなと思います。
あとはスタッフが離れないでいてくれたこともよかった点ですね。コロナ禍になり、「みんなで頑張っていこう」という雰囲気がすごくあって。
両親が経営をしていたので、楽しい面だけを見て開業したいと思ったわけではありませんでした。大変な面もあるけど、諦めないで継続することが大切だということは、父の背中を見てわかっていました。
今回、自分が経営者として、その大変なことをリアルに感じました。そして、あの手この手で壁をどんどん変換していくこと、エネルギーを高めて常にポジティブでいることの大切さを実感できました。だから働けるうちは、本当に頑張ろうって改めて思いましたね。
最初に決めた「女性が輝く場を作りたい」という気持ちは今も変わらない
──スタッフ教育で大切にしていることは何ですか?
「一流のプロにする」ということは意識しています。一時的な成長ではなく、その人の人生にとって良いか悪いかを考え、成長していけるかどうか。人が成長することが、すごく喜びに感じるので、可能性を感じて接するようにしています。向き合いすぎるところもあるので、そこは反省点なんですが(笑)。
教育もこの10年でいろいろ変化がありましたね。今は、時間使い方や感情にムラのない生き方に興味がある子が多いなと感じます。言われたことはすごくできるので、想像力をつけることを意識して教育しています。
サービスひとつでも「もうちょっとこうしよう」と考えられる想像力が、今後のサービスの差になると思います。言われたことをそのままするのではなく、もっといろいろなことに挑戦させ、考える力をつけることに力を入れていこうと思っています。
──今後の展望は?
美容鍼と美容脱毛のサロン展開で、100人企業にしていくこと。そうして「輝く人を作り続ける」という理念を、継続していけたらと思っています。
あとは3年以内に商材の取引を1000社に増やせたらと思っています。海外で柱になるような美容の取引も展開したいです!
独立を目指すあなたへ
開業して続かない人の共通点に、「相談できる相手がいなかった」というのがあります。だから、開業を目指すなら相談できる相手を決めておくこと。新規集客ならこの人、スタッフ教育ならこの人と、いろんな分野で5人くらい、相談に乗ってもらえる人がいるといいと思います。苦労されている経営者の方はたくさんいるので、その辺をわかった上で背中を押してくれる方、未来を見せてくれる方に出会ったら、大切にしてくださいね。(ハリジェンヌ 光本朱美さん)
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取材・文/山本二季
撮影/米玉利朋子(G.P.FLAG)