「企業薬剤師」ってなに? 仕事内容から転職のリアルまでキャリアアドバイザーに聞いてみた

「企業で働く薬剤師」というキャリアに興味を持ちながらも、具体的な仕事内容や転職の難易度がわからず、一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。

今回は、薬剤師の転職支援を行う「エニーキャリア」のキャリアアドバイザー、原瑞希さんにインタビュー。日々、多くの転職相談に向き合うプロの立場から、企業薬剤師の仕事内容から転職のリアルまでお話を伺いました。

今回、お話を伺ったのは…

「エニーキャリア」キャリアアドバイザー

原 瑞希さん

都内のドラッグストアチェーン店にて薬剤師として3年間従事。2024年に「エニーキャリア」へ入社し、キャリアアドバイザー業務をスタート。現在3年目でこれまで約101名の就職・転職活動に伴走。薬剤師経験を活かしたサポートで、2024年に社内表彰にて新人賞銀賞を受賞した実績を持つ。

企業薬剤師の仕事とは?_職種と求められるスキルを解説

――まず企業薬剤師とは、どのようなお仕事ですか?

製薬会社や医薬品卸などの一般企業で働く薬剤師のことをいいます。仕事内容は職種によって多岐にわたりますが、共通して調剤や患者対応はありません。主に製品の品質管理や学術、営業などに携わります。

――職種を詳しく教えてください。

まず「医薬情報担当者(MR)」と呼ばれる営業職です。医師や薬剤師などの医療関係者に、自社製品の有効性や安全性に関する情報を提供したり、採用してもらうための提案活動を行ったりします。

「学術」と「DI」は、医薬品情報を収集・管理する仕事です。「〇〇というケースなのですが、この薬は服用してもいいですか?」といった医療従事者からの問い合わせに、電話やメールで対応することもあります。

――ほかにも企業薬剤師の職種はありますか?

はい。「品質管理」は、化粧品会社や製薬企業において、製造や管理の過程で製品の品質が適切に保たれているかを確認する仕事です。

また「CRA」「CRC」は、新薬を開発する際に必要となる治験に関わります。企画書や計画の作成、モニタリングなどを行い、新薬の開発プロセスを管理・支援する役割を担うんです。

――多くの場合、どのような方が企業転職をされるのでしょうか。

製品の管理や支援に携わることで、より大きな規模でやりがいを感じたいと考える方が多いです。間接的ではあるものの、現場以上に多くの患者へ自分が関わった製品が届くことに魅力を感じる方もいるんです。

また、未経験から挑戦する方もいます。未経験の場合はポテンシャル採用となる企業も多いため、年齢は若いほど採用で有利になりやすい傾向があります。応募方法としては、キャリアアドバイザー経由が最も現実的ではないでしょうか。

――企業転職でとくに評価されるスキルは何ですか?

PCスキルとコミュニケーション力が評価されやすいと思います。企業薬剤師は、資料を作成する機会が多く、現場とは異なり企業担当者や医師とやり取りする場面も多いためです。

企業転職で後悔しないために。リアルな年収と失敗例

――企業転職で年収アップするケースは多いのでしょうか。

あまり多くはないと思います。未経験で転職した場合、企業薬剤師の平均年収は430〜550万円ほどです。薬局で長期間働いていた方はほとんどのケースで年収が下がる傾向にあります。

――少ないんですね。企業転職でありがちな失敗例を教えてください。

働き方にギャップを感じる方は多いです。たとえば、企業は調剤薬局などの現場と比べると、比較的残業時間が長い傾向にあります。業界や企業の研究を怠って入社を判断した方は、残業や評価制度、業務内容などの部分で「失敗した」と後悔されるケースが多いです。

――─では、そうした失敗を防ぐためにはどうするべきなのでしょうか?

まず職場探しや応募を始める前に、理想の働き方やキャリアを整理しておくことが大切だと思います。中でも、転職の理由や条件の優先順位は明確にしておくと、自分に合った転職先を見つけやすいです。

また、業務内容は同じでも、実際の働き方は会社ごとに異なることが多い傾向にあります。とくに未経験の業種への転職を検討している際、その業種のスタンダードな働き方など、業界・企業研究を行っておくのもミスマッチを防ぐのに効果的です。可能であれば、職場見学などで現場を体感するのもいいでしょう。

――─事前に情報の整理をしておくことが大切なんですね。

はい。そうしたうえで内定を獲得した後、さらに企業へ質問するのもいいと思います。「1日の業務の流れ」や「最近の残業時間」など、気になることを事前に確認しておくことでギャップは抑えられるはずです。

条件面のミスマッチを防ぐためにも、キャリアアドバイザーを利用するのは有効な方法です。応募者自身が採用担当者と直接やり取りを行うと、伝え方によっては印象に影響してしまう可能性もあります。そのため、何か質問や確認を行いたい場合は、キャリアアドバイザーを通してコミュニケーションをとることがおすすめです。

企業転職に向いている人の特徴と年代別のキャリア戦略

――いま企業転職を検討すべき人の特徴は?

調剤薬局での業務に物足りなさを感じている人や、薬学の専門知識をもっと幅広く活かして働きたいと考えている人は、一度転職活動をしてみてもいいと思います。

――一方で、企業に向いていない可能性があるのはどんな人ですか。

臨機応変な対応が苦手な人は、向いていない可能性があります。調剤薬局などの現場では業務がルーティン化しやすいですが、企業では日々の業務内容が変化することも少なくありません。

たとえば、医師の都合によるスケジュール変更などが発生することもあり、業務の進み方が不安定になりやすい傾向があります。そのため、そうした変化を前向きに受け止められないと、ストレスを感じてしまうかもしれません。

――ほかにはいかがですか?

チームプロジェクト型の仕事が多くなるため、チームワークや組織内コミュニケーションが苦手な場合、ストレスを感じやすい可能性もありますね。また医療知識に加えて、ビジネス視点が求められる職場もあるので、そうした視点や考え方に強い抵抗がある方は、職種によっては適応が難しいことがあるかもしれません。

――20代と40代では企業転職の戦略はどう異なりますか?

20代は、未経験でも転職がしやすい傾向にあるので、特別な戦略を練る必要はあまりないと考えています。ただ、業種のスタンダードな働き方を把握するための業界研究や、企業ごとの特徴を捉える企業研究は大切です。また「なぜ未経験から企業薬剤師の仕事を目指すのか」という自己分析もしっかりしておいたほうが、転職活動を進めるうえでスムーズだと思います。

一方で40代は、転職の難易度が高くなりやすいです。そのため、事前に経験やスキルを身につけておくことが重要になります。たとえば、管理薬剤師やエリアマネージャーなど役職を経験しておくことです。40代では即戦力であることやマネジメント力が求められるので、そうした経験があると採用を勝ち取りやすくなると思います。

――最後に、今後の企業薬剤師の市場価値はどのように変化していくと考えますか?

資格そのものの価値が大きく上がるとは言い切れませんが、専門性を持った企業薬剤師の市場価値は、むしろ高まっていくと考えています。

日本では薬剤師の人数が増えており、将来的には供給が需要を上回る可能性も指摘されています。そのため、薬剤師という資格だけでは競争が激しくなるかもしれません。

一方で、製薬企業の仕事には臨床開発や薬事、安全性など、高度な専門知識が求められる分野が多くあります。こうした領域は代替が難しいため、専門的なスキルを持つ人材の価値は今後も維持されやすいと思います。

さらに、製薬業界ではAIやデータ活用が進み、研究や開発の進め方も変化しています。そのため今後は、単純な作業をこなすだけではなく、科学的な判断や戦略を考えられる人材の価値がより高くなると言われています。


企業薬剤師は、調剤現場とは異なる形で薬学の知識を活かせるキャリアのひとつです。一方で、求人数の少なさや働き方の違いなど、事前に理解しておくべきポイントも少なくありません。仕事内容や働き方の特徴を踏まえ、自分に合ったキャリアの選択肢として検討することが大切だといえるでしょう。


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原瑞希
薬剤師専任キャリアアドバイザー
薬剤師免許保有

【経歴・実績】
・ドラッグストアチェーンにて薬剤師として3年間従事
・2024年度 新人賞(銀賞)受賞

【プロフィール】
元薬剤師として現場の空気感やストレスを肌感覚で理解しているため、悩みへの深い共感が可能です。
求人紹介だけでなく、入社後の教育体制まで徹底確認して提案。生活の変化を具体的にシミュレーションし、不安のない転職を支えます。

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