「自分は普通だけど、好きなことには自信がある」そんな熱い思いを持った若者と働いていきたい【The C omotesando 保坂誠一さん】#2
東京屈指の有名サロンで18年働き、独立後の10年間で、東京・神奈川・千葉とすでに6つの美容室をオープンしている保坂さん。現在も美容師として精力的にサロンワークをこなしながら、凄腕経営者としても注目されています。
後編では、「もともとは売り上げ至上主義だった」と話す保坂さんが舵を切った理由や、若い美容師に求めること・伝えたいことを伺います。
お話を伺ったのは…
株式会社Truthful 代表取締役
The C omotesando 保坂誠一さん
東京の美容室に勤務後独立。現在は、東京、神奈川、千葉に6店舗の美容室を経営している。それぞれの美容室に明確なコンセプトも持たせることで、「ただの箱ではなく、それが好きな人が集まるコミュニティ」としての空間をクリエイト。経営者でありながら、得意のショートヘアを活かした人気美容師としても活躍中。指名が後を経たない人気アーティストだ。
若いスタッフだけでなくご両親にも安心してほしい

―― 保坂さんが新規の美容室を立ち上げる際、その土地の治安や雰囲気にこだわるのは、サロンのブランディングのためだけではないそうですね。
はい。僕のサロンを志望してくれる若者の中には、地方出身者も多くいます。そうなると僕は目の前の若者だけではなく、その後ろにいるご両親にことも考えなくてはいけません。
「自分の子どもが東京の美容室でやっていけるのだろうか。果たしてその美容室はちゃんとしたところなのだろうか」と心配しているわけです。
The Cグループは、どこも治安がよくファミリー層が多い街に店舗を構えています。そうすると就職を希望する本人はもちろん、親御さんも安心して送り出してくれるのです。結果的にレベルの高いスタッフが集まるので、サロンとしてもガッツポーズですよね。
――活気があっておしゃれ感度が高い街だと、働いている美容師さんも気持ちがいいですもんね。
そうなんです。これは僕自身の経験からきていて。一時期いわゆる「ガラの悪い街」で働いていたことがあるんですが、やっぱり漂っている空気があまり良くないんですよね。自分自身もキレイなものに囲まれていないので美容感度が下がり、美容師としての意識も下がってしまったという実感がありました。
売り上げ先行サロンにしたことで、内部が荒れていった

――独立した直後は、保坂さん自身「売り上げ至上主義」だったと伺いました。
はい。1店舗目を作った際、他のサロンとは違う特色が必要だろうと考え、得意だった「ショートボブ」を全面に打ち出したんです。それでありがたいことにたくさんのお客さまが来てくれて、売り上げはどんどん増えていきました。
次第に一人で月に数百万を売り上げるスタッフが何人も出てきて、小さなサロンにスター選手が何人もいる状態に。すると、サロン内のチームワークが崩れていったんです。協調性がなくなったり、売り上げさえ出していればそれでいいという考えの人が出てきたり。
――どの業界でもあり得そうな難しい問題ですね。
「これは自分がやりたかったサロン経営と違うぞ」ということになり、そこからブランディングをガラリと変えることにしました。
――どう変えたんですか?
採用の際に「売れたい」だけを思ってくる人は選ばないようになりました。もちろん野心があるのはいいことです。でもそういう人の多くは、同僚との関わり方が良くなかったりして、サロンの空気を悪くしてしまうんです。
仲間意識を持って「一緒に目標を達成しよう」と考えられるようなタイプを採用するようにしました。
グループ全体のビジョンは「子供が泣かない未来をつくる」
――The Cグループとしてのビジョンがあると伺いました。
はい。「ひとりひとりの世界を彩り、子供が泣かない未来をつくる」というのが会社の理念です。ぶっちゃけ世の中、変な大人も多いじゃないですか? いつもイライラしていたり、子供にあたったり。そんな人間に憧れを抱く子供なんていませんよね? 子供に憧れられる大人でありたいし、優しい社会になってほしいなと思い、このビジョンを掲げました。
新しいスタッフを雇うときも、この理念に共感してくれる人を採用するようにしています。
――話は変わりますが、現在のThe Cグループは、サロンによってコンセプトがバラバラです。「Capture ebina」は、韓国ヘアを得意としていたり。それにはどんな思いがありますか?
5年ほど前、売り上げ至上主義から方向転換する際に、「スタッフの好き」や「スタッフが夢中になれるもの」でブランド展開していこうと決めたんです。スタッフにとっても自分の好きなジャンルやテイストを突き詰めることができるのは楽しいし、そこに「そのテイストが好き」というお客様が集まってくれれば、コミュニティが完成します。みんながハッピーになると考えたんです。
そうやって美容師の「好き」と「できること」を掛け算する戦略に変えていき、それまでやっていたような過度な集客はしなくなりました。
――新規でサロンをオープンする際は、コンセプトを考えることから始まるわけですか?
そもそも僕が新しくお店を出すのは、お店を出すことが先ではなく、「まかせてみたい」というスタッフが現れた時だけなんです。なので、キャリアが短くても「この子の世界観はおもしろいな。これを好きなお客様が集まってくれるかも」と思ったら、店長としてやってみないか?と打診します。そこから物件探しが始まるわけです。コンセプトや物件が決まると、内装やテイストもある程度はその子に任せます。
そういったブランディングは現在のところ成功していると思います。入社希望者もたくさんくるようになりましたね。
――言われたままに働くのではなく、自分の「好き」を追求できるのは、若いスタッフとしても魅力的ですよね。
はい。「美容室に入りたい」ではなく、「そのコミュニティに参加したい」と思えるんですよね。
僕が求めている人材はそんな人間なんです。自信過剰でただ売れたいと思っている人ではなく、「自分は普通かもしれない。でもやりたいことには自信がある」。そう思っている人間を見つけて、引っ張り上げていきたい。それが経営していくうえでの喜びでもあります。
保坂さんの「他にはない価値を生み出す」ための3つのBEST
1.BEST WORK
2.BEST PARTNER
3.BEST ME
取材・文/皆川知子(tokiwa)
撮影/ワタナベミカ
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The C omotesando
住所:東京都渋谷区神宮前4-25-3 AG神宮前 2F
電話:03-6812-9958


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