母になって身についたのが「意見をハッキリ伝える強さ」 ICH・GO大山店 スタイリスト 池田彩香さん#2
首都圏を中心に約100店舗展開しているスタイルデザイナーの主力ブランド『ICH・GO』。そのひとつ大山店でスタイリストとして勤務している池田さん。
前編ではヘアメイク事務所から女性たちの専用のヘアセット・メイクサロンに転職。そして、母となってから現在のサロンに落ち着くまでをご紹介しました。
後編では子育てをしながら、スタイリストとしてサロンに経つ傍ら店舗を総括するマネージャーの顔を持つ池田さんの仕事ぶりをご紹介します。
お話を伺ったのは…
ICH・GO大山店 スタイリスト 池田彩香さん
美容専門学校を卒業後、ドラマやバラエティ番組でヘア&メイクを受け持つ会社にアシスタントとして入社。その後、ナイトクラブに勤める女性専門のサロンに転職。ここで美容師として必要な技術を学ぶ。8年ほど勤務し、2年前から現在のICH・GO大山店に転職。現在は上板橋にオープンした店舗の店長として勤務するかたわら、他の店舗も総括するマネージャーとしても辣腕を振るう。
時短で早く帰る分、早く出社して仕事や勉強にあてる
—–お子さんとの時間でいちばん大切にしているのはいつですか?
保育園から家に戻って、一緒に過ごす時間ですね。たっぷり話をします。男の子は運動モードになると大変なことになるので、お話中心になるように気をつけています(笑)
子どもにはその日何があったのか、必ず聞くようにしています。私も仕事先で何があったのか、嬉しかったことや悲しかったことなどを伝えています。まだ3才ですから、話の内容が伝わっていないこともあるでしょうが、子ども扱いをしないで何でも話すようにしています。
最近では、悲しいことがあった日は「悲しいね」って、慰めてくれるようになりました。子どもの成長はめざましいですね。
—–ご自身の時間はどうやって作っていますか?
早めに出勤して、朝練するときでしょうか。この時間はお店のスタッフのためではなく、自分のための時間です。常に新しい技術が生まれているので、取り残されないように勉強しています。あとは、子どもが寝静まったあとの時間ですね。家の持ち帰った仕事を片付けたらSNSを観たり。疲れているときは、子どもを寝かしつけながら自分も寝落ちしてますね。
—-働いていると家事をこなすのも大変ですよね。
家事はほとんど手抜きです(笑)。母と一緒に暮らしているので、どちらかがご飯を作っていたら、もう一人が子どもの面倒を見るという具合に分担しています。
家事が残っているときは、子どもが寝静まってからですね。仕事から帰ったら、起きている時間は子どものことだけを見るようにしています。
母と夫の間で板挟みがストレスになり、悩んだ末に別居へ
—–ICH・GOに転職したのはお子さんが1才のときですね。
来年の2月で3年目になります。ママさん美容師がいるので、子どもの都合で早退したり、急に休んだりするときも「お互い様」という気持ちで受け入れてもらえるのがすごく嬉しい。共有できることが多いので、私にとっていい環境ですね。
—-働く環境が整って、家庭環境は変わりましたか?
この春、夫と別居しました。夫と母の折り合いが悪く、ギクシャクした中にいるのが耐えられませんでした。一緒に生活していがみ合うより、少し距離を取って生活した方が、お互いに優しくなれるかも…と思って別居することにしました。
子どもには「お父さんは家から離れた遠くの会社に勤めることになった」と説明して、私と母と子どもの三人で家を出ました。一緒に住んでいた頃は夫の帰宅が遅いこともあって、子どもと過ごす時間がありませんでしたが、別居してからは毎週末、子どもと丸一日ずっと遊んでくれます。夫と離れる時間になると、子どもが必死に泣くのをこらえているんです。幼いなりに「大人も辛いんだ」って分かっているようです。
—–今まで夫婦2人の収入が1人分になってしまいましたね。
子どもが熱を出して私が店を休むと、当然その日の収入はゼロになります。それでもガマンや無理をしなくていい環境は精神的にラクです。
パートでも責任のある仕事を任せられるお手本を目指す!
—–池田さんはスタイリストとしてだけでなく、店長としても働いているとか?
ICH・GO大山店のフランチャイズオーナーが、上板橋にもサロンをオープンしたのを機に店長を任されました。私はパートタイマーですが、他のスタイリスト1名とアシスタントは正社員です。ほかにパートのママさん美容師が数人いて、お店をもり立ててくれています。この10月27日にはときわ台にもサロンがオープンしました。マネージャーとして運営に携わっています。
—–肩書きがついても正社員ではなく、時短勤務のパートなのですね?
私にとって子どもと一緒に過ごすことが何よりも大事。子育てをしながら何ができるか、いろいろ考えて、オーナーに相談をしました。
子育て中は働ける時間は限られているけれど、サロンの運営に関していろいろ工夫をしたい。しかもお金も稼ぎたい。それなら何をすればいいのか。オーナーと話し合って、立場はパートのままスタイリスト以外の仕事を任せてもらえるようになりました。
オーナーもお子さんがいるので私の気持ちをよく分かってくれて、いつも真剣に話を聞いてくれます。実は、夫とのこともオーナーに相談して、別居に踏み切ることができたんですよ。
—–悩んでいることや考えていることを伝えるのは大事ですね。
今までの私なら、ずっと思い悩んだまま過ごしていたと思います。でも母親になって図太くなったのかもしれません(笑)。以前の私を知っている友人たちは「強くなった」と言っています。
私にとって、この仕事は子どもが大きくなるまで生活するための大切な手段。子どもがいるから頑張れるんです。同じ時間を過ごすなら、気持ちよく働けるように環境をよくしたい。それでオーナーに思ったことや感じたことを伝えてきました。
子どものお手本になることが理想
—–責任のある仕事を任されると、時間の制限がもどかしくないですか?
もっと仕事をしたいのに保育園のお迎えがある…ということはしょっちゅうです。すごくもどかしいですね。でも私にとって大事なのは子ども。オーナーも「勤務時間が終わったら、あとはお子さんに集中してください」と言ってくれるので甘えています。本当は私に頼みたいことが山積みなんだと思うのですが、個人のペースに合わせてくれるので、本当に助かります。
私の中に「店長はこうあるべき」という「べき論」があって、誰もそんな店長を求めていないのに、自分自身を追い詰めた時期もありました。そんな姿をオーナーが見て、「無理をしないで、やれる範囲でいいから」と声をかけてくれたこともありました。肩の力を抜くことを覚えてから、だいぶラクになりました。
—–別居しているパートナーと池田さん、お子さんの関係はどうですか?
別居してから相手のいい面が見えるようになりました(笑)。離れて生活をしていても母親・父親として「しっかり子どもを見守ろうね」と話し合っています。子どもの手本になる親でありたいですね。夫には「お父さんみたいになりたい」と言われる父親でいて欲しいです。
—–お子さんにはどんな風に育ってほしいですか?
お金で苦労させたくないですね。やりたいことをガマンせず、好きなことをやらせたい。それから、一人では生きていけないですから、周りの人を大切にできる大人になってほしいですね。
私自身、自分に自信を持てずに大人になったので、子どもには自信のある大人に育ってくれるとうれしいですね。
池田さんが仕事を充実させるために実行した3つのポイント
1.アイデアや感じたこと、悩んでいることはハッキリに伝える
2.「時短」に甘えず、時間を見つけてスキルを磨く努力をする
3.仕事と家庭のメリハリをつけ、家に帰ったら子どもに集中する
「子どもを産んでから強くなった」とおっしゃる池田さん。守りたいものが増えて、仕事にも子育てにも、本来の才覚が目覚めたようです。思っていることややりたいことは溜め込まずに伝え、自分にできることはしっかり努力をする。このバランス感覚がワーキングママとして成功する秘訣なのだと感じました。