若手にチャンスと可能性を与える仕組みづくりに邁進! 美容業界のボトムアップを目指す【fifthグループCMO 木村允人(まさと)さん】#2
今よりもSNSが普及していない雑誌が全盛期の当時、メディアなどでも注目されていた「fifth」の年商を12倍と大きく伸ばした木村允人さん。トッププレイヤーの実績を作り、会社のために尽くしたことで「fifth」グループ総店長、さらにはコンサル部署も立ち上げ、活躍の場を広げています。「fifth」を盛り上げ続けている木村さんは現在、美容業界全体のボトムアップも狙っているのだとか。
前編では、木村さんが美容師になるまでの経歴、「fifth」の年商をプラス4億ものアップに成功した秘訣について詳しくお話を伺いました。後編では、「fifth」の今後の目標や、今後の美容業界の在り方について伺い、美容業界のレベルアップを実現するための目標をお聞きします。
お話を伺ったのは…
fifthグループ総店長 木村允人さん
地元の熊本県を出て、福岡県にあるハリウッドワールド美容専門学校へ進学。卒業後は東京・町田のサロンに入社するも、わずか1ヶ月で退職し、2年半の間フリーターを経験。その後、読者モデルの仕事で「fifth」に出会い、入社。美容師としてデビューを果たしたのち、サロン内でトップの売上を獲得して経営に携わったところ、サロンの年商を十倍にする敏腕ぶりを発揮。現在は、社内でヘアサロン向けコンサルティング事業を立ち上げ、経営に徹して活躍している。
未来を担ってほしいのは、技術力よりも人間力のある人。若手にチャンスがある現場をつくりたい
――サロン「fifth」が、今後目指していることをお聞かせください。
生活に最低限必要なインフラ「水道・ガス・電気」のような存在を目指しています。
ヘアケアも、カットやカラーなど日常的に必要な行為。サロンって、気分転換やリラックスしたい気持ちでいらっしゃるお客様もいます。気分転換も大事ですが、インフラのように生活に馴染んで必要とされるサロンにしたくて。そもそもサロンなんて、お客様がいないと成り立たないですからね。
――「fifth」が求めている人材は?
「fifth」は個々の裁量で売上をとるのではなく、サロン全員の所得をアップさせることを目的にしているので、技術力よりも人間力を重視しています。人として基本的なコミュニケーションができるか、協調性を持って仕事ができるか、常識範囲内の礼儀ができるかといったところ。利己的ではなく、利他的に行動できる人を大事にしたいと思っています。
人間的に問題なければ、技術はあとから習得できますし、僕が責任を持って指導をする想定です。ただ、僕自身も信頼してもらうことが必要なので、ついていきたいと思わせる人間性を築けるような活動をしていくつもりです。
――具体的にどんな活動を?
人が多く集まる場所に積極的に露出する場面を増やして、説得力を身につけるようにしました。例えば内部だけではなく、外部で行われるセミナーとか講義とか。人についてきてもらうには、僕が言うことは「正しい」と思ってもらうことが必要だと思ったんです。
今後もより良いサロンを形成していくには、周りだけではなく自分自身も変わっていくことが大事。加えて、サロンのためにスタッフの育成にも力を入れていきたいところです。
――では、「fifth」でスタッフに対して取り組んでいることは?
若手のうちから夢が見られて、可能性を感じる環境づくりをしたいと考えています。
会社の管理者とか経営に携わる幹部とか…それらに就くには時間がかかるイメージがありますよね。若手の成長にフォーカスすることで、そのイメージを払拭したくて。ただ、こちらだけが頑張るのは違うので、若手スタッフもチームの売り上げは意識してほしいですね。そこで上にいる僕たちが「頑張って時間を投資すれば、チャンスが自分にもある」と、思ってもらえるような仕組み作りをしていくことが必要だと思うんです。
あとは、お客様の気持ちにフォーカスすることを何よりも最優先するべきだと思っています。誰かがその本質を勘違いするようになっては、業界全体の底上げは難しいと感じますね。
SNSに捉われすぎているサロン業界に喝を! 確実に勝てる方法でサポート
――底上げをする途中での課題だと思う点は?
今の時代、美容師の集客はSNSが主流になっていますよね。SNSは積極的に取り組むべきだと思いますが、美容師一人ひとりの目的をしっかり考えて使いこなせることが必要不可欠だと思っています。ところが、今はどうも美容師個人の承認欲求を満たすために運用していると思われかねない使い方の人が多く見受けられます。
本来は集客をするために使用しているSNSなのに「いかにフォロワーを獲得できるか」「いかに投稿が注目されるか」と、目的がすり替わってしまっているんですね。フォロワーが多い美容師が「善」で、それ以外は「悪」と判断されかねない状況が出来上がってしまっているこの状況は、あまり健全では無いなと。僕は、都内に限らずいろいろな場所でセミナーや講師をさせていただく機会があり、それぞれの土地の素晴らしい美容師をたくさん見てきました。そういった方々を知っているからこそ、今美容業界で働いている人には一度、考えてほしいんです。
――では、木村さんにとっての「SNS」とはどういう存在なのでしょうか?
あくまでSNSは、多くのお客様に自分を認知してもらうツール。たしかにその一連の流れによってメディアにも出演して名前を残し、自身の煌びやかな毎日を投稿する美容師もいます。投稿内容や指針はそのアカウントごとにあって良いのですが…これから美容業界を目指す人たちに勘違いをしてほしくなくて。たしかに第一線で活躍できれば、お金を持つことができますが、SNSでそういう夢の見せ方をするのは僕は違うと思っています。
僕は、確実に勝たせてあげることで夢を見させたいんです。そもそも美容師って、収入が低いと言われている業種なんですね。そこを上げていきたいんですよ、美容師でも稼げるんだぞって。業界的にそういう夢を実現したいですが、とりあえず目先の自社サロンで実践できるように取り組んでいるところです。
元来から大事にされてきた接客力・技術力が、今後の美容師像を変えていく
――その状況を踏まえて、今後注目される美容師の特徴とは?
現在、デジタルサロン業界といってAIを普及させることが目的の社団法人があるのですが、僕はそこの常任理事を務めさせていただいています。
AIの発達によって集客のマーケティングは一気に中立化する見込みがあり、今後大事になってくるのは、元来必要とされていた接客力や技術力、人間力です。今必死に取り組んでいるSNSの発信などは手段としては残るかもしれませんが、小手先のマーケティングでは通用しづらくなるでしょうね。
もっと言うと、SNSでの見せ方にこだわるのではなく、もっと目の前のお客様やスタッフのことを考えてサロンを経営していくことがかなり重要になると思います。
グループとして業界初と言われる方法をどんどん生み出していきたいですね。今、働いているスタッフたちが夢を見られる環境づくりをしていくことが使命だと思っています。
フリーターだった木村さんが年商を大幅アップさせた理由
1.意見を聞いてもらうために、まずは自分が実績をつくる
2.「チーム」で取り組むことを軸に置き、全員が幸せになれる方法を考案する
3.自分に説得力をつけ、周りがついてきたくなるような人物を目指す
取材・文/東 菜々(レ・キャトル)
撮影/SHOHEI