デザインカラーの需要と、今気になるアウターカラーとは【美容師のカラー技術 「seen」境 健助さん #1】
「カラーリングで個性を出したい」というお客様が増えている今、デザインカラーは需要の高い技術のひとつです。
そこで今回は、インナーカラーを始めとする派手髪のデザインに定評がある『seen』代表・境 健助さんにインタビュー。前編では、境さんがデザインカラーに力を入れたきっかけと、デザインカラーのオーダー動向、今広がりつつある「アウターカラー」について教えていただきます。
教えてくれたのは…
seen 境 健助さん
美容師歴8年。専門学校卒業後、原宿・表参道エリア3店舗を経てフリーランスとして活動。2020年、代表として表参道に「seen」をオープン。インナーカラーをメインとしたデザインカラー、派手髪で人気を集める。
Instagram:@saakaai
デザインカラーの需要の高さを感じ、スタイリスト1年目からシフト
―境さんはデザインカラーに定評があります。カラーに力を入れている理由は?
最初はメンズカット推しでスタイリストデビューしたんですが、だんだんカラーのオーダーが増えたんです。お客さんから求められるものとして、カラーの方が需要が高いんだなと感じて、ニーズのあるカラーにシフトしていきました。スタイリストデビューしてから半年で完全にカラーメインになっていましたね。
最初はナチュラルなカラーをすることが多かったんですが、1年後にはデザインカラーが増えていました。まだインスタグラムで派手髪を推している人があまりいない時期で、オーダーいただいたデザインカラーをインスタにアップしたら、どんどんお客さんが来てくれるようになったんです。
―カラーの需要が高かったから、力を入れ始めたんですね。
インスタグラムに力を入れていたのも大きいですね。4年前にスタイリストデビューしてから始めたアカウントでは、「お客さんが見て楽しめるように」と投稿を考えていたんです。一般の方でもわかりやすいものとなると、カラーリング、とくに派手髪などデザイン性のあるものは親和性が高いですから。
フォロワーがグンと増えたのも、2年前に『鬼滅の刃』の流行に合わせて派手髪のポイントカラーを投稿した時でした。結果として現在の集客はほぼインスタグラムからですし、オーダーも9割以上がカラーになっています。
デザインカラーはSNS映えするメニュー。
取り入れてオーダーも右肩上がりに
―境さんのインスタグラムの投稿はカラーに関するものに統一されています。投稿でこだわっていることはありますか?
アップする時間帯に合わせて、投稿内容は変えています。例えば、朝の忙しい時間帯ならパッと目に止まる写真をメインに。夕方や夜になるとじっくり読んでくれるので、まとめ記事など読み込めるものを投稿しています。動画は、夜中の暇な時間に見る人が多いので、視聴率が伸びやすかったりします。
アップするカラーデザインは、お店で実際に施術したものです。予約もインスタグラムのDMでやり取りすることが多いので、お客さんの参考にしてもらいやすいですし、こちらも確実に再現できます。
―予約もDMでやり取りするんですね。管理が大変じゃないですか?
デザインカラーは、したいデザインによってブリーチ回数なども変わるので、ネット予約だと間違いが起きやすいんです。通常のカラーの予約だったけど、ブリーチが必要なデザインを求められたら、時間的に難しくなってしまいます。
それならDMで希望のデザインがわかる写真を送ってもらったほうが安心ですし、特殊なカラーでも事前に薬剤の準備ができるので対応できます。
3年でインナーカラーが大きく広まり、派生して生まれた「アウターカラー」
―デザインカラーの動向はいかがですか?
3年前くらいからインナーカラーがすごく流行り出して、昨年フェイスフレーミングが出始めてから、一気にデザインの幅が広がったなと感じます。お客さんからのオーダーも多様性が出てきましたね。
以前は「インナーカラーで」というオーダーが多かったんですが、イヤリングカラーやフェイスフレーミング、グラデーションカラーなど、同じインナーカラーでも希望されるバリエーションが増えました。今年からも、どんどんデザインが変わってきているなと思います。
―今回は「アウターカラー」をご提案いただきました。アウターカラーの動向は?
インナーカラーが流行し始めたころから、髪表面を染めるアウターカラーもあったんです。ただ、まだ派手髪が当たり前ではない時期だったので、そこまでオーダーは多くありませんでした。流れとしては、インナーカラーに個性が出てきて、アウターカラーが生まれたという感じです。
2年前くらいに、表面の毛先だけ染めるアンブレラカラーというアウターカラーの1種が海外で流行ったこともあり、最近日本でもアウターカラーを取り入れる人が増えてきました。
あと、最近ウルフヘアがまた流行ったので、それと合わせてアウターカラーを取り入れる人がすごく多いですね。レイヤーが入ったウルフカットと、表面だけ染めるアウターカラーは、すごく相性がいいんです。ウルフ×アウターカラーの人を、街でよく見かけるようになり、アウターカラーも浸透してきたなと感じています。
アウターカラーのデザインは表面のスライスの取り方で決まります
―アウターカラーのデザイン成功のポイントを教えてください。
デザインのポイントになるのは、アウター部分のスライスをどう取るか。薄く取るか、面で取るかだけでも、デザインの雰囲気はガラッと変わります。薄く細かく筋状にスライスを取ればハイライトっぽくもなりますし、太めにしっかり取れば面で色が出るので、かなり個性的な印象になります。
スライスを取る時は、骨格と髪のクセを見ながら、髪を下した時にどう見えるかを計算して行います。またスライスの角度は、カットラインに合わせると失敗しにくいです。
さらに色の組み合わせによっても、またガラッと印象が変わります。デザインの幅が広い分、まずはしっかりお客さんとデザインを共有することが一番大切だと思います。
―では、今回のデザインについて教えてください。
今回は、内側の髪が透けて見えるように、細く筋状にスライスを取りました。アウターの色は赤にピンクとパープルを混ぜた、少しダークなカシス系カラー。内側のグレー系カラーと相性が良く、真っ赤よりなじみやすい色に仕上げています。暖色系は、色落ちしにくく持ちがいいので、実際のオーダーでも人気がありますよ。
境さんが作る『アウターカラー』のポイント
髪の内側に色を入れるインナーカラーとは反対に、髪表面に色を入れるのが特徴のアウターカラー。色が前面に出ることで、より個性的で攻めた印象に仕上がります。
デザインのポイントは、色を入れる部分のスライスをどう取るかなのだそう。今回はスライスをジグザグに取って内側のグレーを透けさせることで、表面のカシスカラーが際立つデザインに。ヘアアイロンで巻いても、もちろん巻かなくても可愛いデザインカラーです。
お客様への提案キーワード
1. 色とデザインで個性が出しやすい
2. 表面だけでOKだから意外とダメージ低め
3. 根元が伸びても気にならず、白髪ぼかしとしても◎
お客様から求められるものに応えていく中で、デザインカラーの引き出しが増えていったという境さん。今回提案していただいた「アウターカラー」も、その引き出しのひとつです。後編では、境さんが提案してくれたアウターカラーの作り方を詳しく教えていただきます。
▽後編はこちら▽
seen 境 健助さんが「アウターカラー」の作り方をレクチャー!【美容師のカラー技術 「seen」境 健助さん #2】>>
取材・文:山本二季
撮影:高橋佳代