小椋ケンイチ interview:死ぬほど突っ走った学生時代と、さらなる成長を求める今
テレビ番組やラジオ番組、全国の講演で活躍の小椋ケンイチ(おぐねぇー)さん。「テレビのイメージとは違って、実はオネエの人の9割が僕みたいにお化粧をしないスタイルなの」という彼(彼女?)は、ヘアメイクアップアーティストとして活躍するまでの話や、タレントとして活躍するまでの話、また、オネエとしてのデリケートな部分の話まで、肌もトークも「すっぴん」を見せてくれました。
大切な寄り道しちゃった
「僕、ヘアメイクアップアーティストになろうと思ったのは、17の時なんです。ファッション誌のananが大好きで、『このページ好き♪ なんだか知らないけどコレ可愛い♪』って、好きなページを切り抜いてスクラップしてたの。気付いたら、渡辺サブロオさんっていうヘアメイクさんのページだけ切り取ってた。『僕、どうやらこの人が好きみたい』って、そのとき思ったの。でも、ヘアメイクのなり方なんて誰も知らないし、学校の先生も反対するし、インターネットもないし。わかんないから、その人に手紙書いたんです。『ヘアメイクになりたいんだけど、どうしたらいいですか?』って。1ヵ月くらいした頃返事が来て、『男の子だし、一生働かなきゃいけないから寄り道しなさい』って書いてたの。『寄り道?』今まで誰も言わなかった寄り道……じゃあ、大学行って考えようって♪
大学4年間で死ぬほどバイトして、死ぬほど遊んで。その間にも、『ヘアメイクさんになるにはどうしたらいいのかな?』って考えて、ジュノンボーイになったの。そうしたらヘアメイクさんに会えて、直接話が聞けると思って。実際、いろんなヘアメイクさんの名刺貰ったの。その間にも、通信の美容学校にもダブルスクールで行ってて、4年間ですっごくいろんな経験をさせて貰って、卒業と同時に『2年間だけ』って決めて美容院に就職したんです」
とにかく片っ端から電話しちゃった
「美容院に就職したらビックリ! 今までモデルもタレントもやって、『蝶よ華よ』みたいな生活してきたのに、突然7万円の給料って! 『でも、これが現実ねー』って思いながらも、誰よりも早くお店に行って、誰よりも遅くまで練習して、鍵を閉めて帰るっていう生活を2年間続けて……、美容院を辞めちゃった。ヘアメイクになるために、計画通り2年で辞めたの。その後、渡辺先生のスクールに3ヵ月だけ通って、卒業してすぐ自分でヘアメイクの名刺を作ったんです。ヘアメイクになっちゃったの♪ 友達にメイクして、自分で写真撮って、作品ブック作って。そこからはタレント名鑑買って、会いたいタレントさんの事務所に片っ端から電話していったの。『常盤貴子さんのマネージャーさんお願いしまぁす。ヘアメイクの小椋と申しまぁす』って言うと、みんな『お世話になってます』って言って、繋いでくれちゃうの。『第一関門突破!』みたいな(笑)。
そこで「5分でもいいので、名刺交換の時間をください。時間も場所も指定してくださって結構です」って言うと、10件のうち2件くらいは会ってくれるの。だって『5分だけ。どこでも行く』って言ったら空けるしかないもんね。そうやっていろんな人に名刺を配って繋がりをつくって、女優さんやアイドル、モデルのヘアメイクをさせてもらえるようになっていったの」
36歳で転職しちゃった
「36歳の時に、グラビアのヘアメイクの仕事で、海外ばっかり行ってたの。グラビアのヘアメイクって、めっちゃ大変なの。『ちょっとダメ』な子を、ナチュラルメイクでキレイに見せなきゃなんないの。塗りたくったらキレイになるんだけど。そういう技も勉強していくうちに、夜な夜なタレントがウチの部屋に来ては、恋愛の話とかするようになったの。そしたら、グラビアの一番大きな会社の社長に『お前、毎晩タレント集めて……』って言われて『あ、大目玉くらう』って思ってたら、『そんなに喋りたかったら表に出て喋れ! 仕事取ってきてやる』って言われて、いきなりテレビの仕事。あれよあれよと仕事が決まっちゃって。深夜の番組で下品なことばかり言って、お昼のテレビでは『お昼の顔しろ!』って言われてもねえ。でも、その辺はオネエだから、銀座でスカウトした青い顔のおばちゃんに『ダメよ。あんた遠くから見ても血色悪い。ちょっと来て!』って言って、柳の木の下に立たせて『すごくココが似合っちゃう』って、ふざけてたの。それが面白かったみたいで、どんどんタレントの仕事が増えていっちゃって、ヘアメイクの仕事がどんどんなくなっていっちゃった」
僕、居場所見つけちゃった
「自分がオネエって事に気づいたのっていつだろ? 思春期に男友達と、性の話をして楽しんでいるうちはいいんだけど、高校になって経験した人が出て来ると『え!? Hしたの? 気持ち悪い、不潔ぅ』って思うようになって、そのうちみんなの話について行けなくなっちゃった。二十歳までは、『私は他の人とは違うんだ』って思って、そこを考えないようにしてきたんだけど、新宿二丁目(東京のゲイタウン)の存在を知って行ってみたら、『世の中で僕だけだ』って思ってた人がいっぱいいて、同年代も山ほどいて『僕、ここ(居場所)見つけちゃったぁ♪』って思ったら、次の日から毎日行くようになっちゃった。
公に発表したのは、テレビに出だした36歳の時。週刊SPAの編集長と仲良かったから、SPAで特集組んでもらったの。
ずっと、嘘ついてヘアメイクやってきて。大好きな友達にも、スタッフにも、みんなに嘘ついてきたたから辛くて。ずっと罪悪感があったから。テレビではもう嘘つきたくないって思って。でもね、オネエであることを発表しても、周りは何も変わらなかったの。何一つ変わらなかったの。そして、すっごく楽になった!」
悪い人がいるって知っちゃった……
「僕、人生で2回詐欺にあってるの。一回目は29歳の時。好きだった人に『会社作るから一緒にやろう』って言われて、ハンコ渡して社長になって、いっぱい負債を抱えさせられて逃げられた。二回目は40手前の時、事務所を辞めて、個人でやり始めた時に、『一緒にやりましょう』って言ってくれた人に色々持ち逃げされちゃった。僕、人生で一億くらい借金してたの。最近まで返してたレベル。『記者会見やる?』って言われたけど、無理。やったら干される。だって傷がついたヘアメイクなんて、世間はいらないもん。僕、社会を知らないから、世の中には悪い人がいるって知らなかったの。でも周りには、『それが普通だよ』って言われてビックリしちゃった。僕にとってはお高い勉強代だったし、『ホントだったらすごいマンション持ってて、外車乗り回して』って思ったこともあるけど、テレビでは見せずに頑張った。とにかく無我夢中でやってきた。
だから、仕事を辞めたいなんて思ったことない。辞めたら食べていけないもん。終わっちゃうもん。意地でも続けるよ。いつも『大丈夫! 大丈夫! 大丈夫!』って言いながら。『何が大丈夫なんだよ!』ってなるんだけど、そう言って、そう思っていないと、そっちに転がっていかないもん!」
自分の使命、見つかっちゃった
「全国でトークショーをして、女の人たちを元気にしていくことが僕の使命になりました。女の人が元気になると、周りが明るくなって、男の人も元気になって、みんな元気になるの。今も日本中バンバン飛んでて、週に一回地方で講演やってるの。九州、山梨、名古屋、青森、呼ばれたら行くようにしてる。50歳までのあと3年間、それまで頑張れば何かが変わるかもしれない。次の世界が見えるかも。誰も見せてくれないから自分で開けて、みんなに見せてあげる。僕はちょうど、ヘアメイク生活10年、芸能生活10年なんです。30代後半で転職するなんて思わなかったけど、『してみるもんだな』って思います。でも、転職を考えているみんなに言えることは『とにかく決断は早い方がいい!』。『来月にしよう』とか『明日にしよう』とか先延ばしにしないで、全部今日! 僕、そこを治したらすごく良くなった。
転職ってビビっちゃうし、怖いし、心配しちゃう。でも、そんなの1円にもならないから、そこは考えないで決めたらやる! 転職したら新しい世界を見られるし、自分のやりたいことの可能性が広がる。その分、勉強や努力はしなきゃいけないけど、それはちゃんと今後の役に立つから。転職するにしても、人生でやってきたことは、全部役に立ちます。『だから転職は何も怖くないよ』って、みなさんに伝えたいですね」
Profile
小椋ケンイチ(おぐらけんいち)さん/おぐねぇー
タレント、ヘアメイクアップアーティスト
400人以上の女優、モデル、タレントのメイクを手掛けてきた人気ヘアメイクアップアーティストでありながらも、「おぐねぇー」の愛称で親しまれているオネエ系タレント。「メイクを通じて人を幸せにしたい」という思いから、一般向けの講演やイベントでトレンドメイクの実演や、メイクアドバイスを積極的に行うなど、常に「美」の普及に努めている。オネエの立場だからこそズバっと言える辛口トークで、幅広い年齢層の女性たちから絶大な支持を得ている。
Informatinon
green STUDIO
「おぐねぇー」×MODE K’sプロデュース! 「green STUDIO」が南堀江に6月中旬OPEN!
●住所:大阪府大阪市西区南堀江1-12-19 四ツ橋スタービル1階(堀江公園前)
●アクセス:各線「心斎橋」駅徒歩7分、「四ツ橋」駅徒歩4分
●問い合わせ先:072-763-3001(受付 10:00~18:00)
コンセプト
ビューティーウェルネススタジオをテーマに女性の為の美容ベースを目指す。それが『green STUDIO』
ウェルネスは、健康な体と豊かな精神で、心が幸福に満たされている状態。
美容に関する衣食住トータルに、美しく豊かなライフスタイルを提供することがコンセプト。
ヘア、メイク、美容アイテムから雑貨まで、最新のトレンドを牽引する流行発信店として、徹底的な差別化、体感できるサービスを具現化しますするサロンです!