高齢出産

美容師見習いに聞きました「あなたの講習費用まさか自腹ですか」

お客さまにもスタッフにも愛されるサロンであるためには、法律の知識が欠かせません。今回は、実際にあった裁判例から学び、愛されサロンへの道を探ります。
テーマは「美容師見習いは教わる立場!講習費用を返せ」です。

美容見習いは教わる立場!講習費用を返せ
事件概要
あるヘアサロンでは、美容師見習いとして入社した新人スタッフに対し、技術講習をして熟練者に養成していた。そのため、自己都合で退社する場合、講習にかかった費用として入社月に遡って1ヵ月につき4万円の講習手数料を支払うこことを内容とする講習手数料契約を新人スタッフに結ばせていた。
入社から半年後、新人スタッフが自己都合で退社した際、講習手数料契約に基づき、講習手数料の支払を要求。
判決内容
労働基準法16条に反するとして、ヘアサロン側の請求を棄却した。

労働基準法とは、労働契約・賃金・労働時間・休日といった労働条件の最低基準を定めた法律です。労働者を不当に仕事に就かせることを防いでいます。労働基準法16条は、使用者に対して「労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額の予定をする契約を締結することを禁止」しています。

新人スタッフは、美容専門学校を卒業後、見習いとしてヘアサロンに就職し、会社から技術の指導を受けながら仕事をしていました。
裁判では、ひとりの美容師を一人前に養成することは、会社でいう新入社員教育にあたると判断されました。最初は誰でも右も左もわからない状態で入社します。会社がコストをかけて指導・教育するのは当然のことなのです。そのため、労働契約とは別に、損害賠償を予定した契約を交わすことはできません。

ただ、使用者としては、新人スタッフの給与をどう設定するか悩ましいところでしょう。このサロンのように、後に損害賠償することを前提に手取りを多くすることはもちろんできませんし、他方、低額では優秀な人材が集まらない懸念があるでしょう。
新人スタッフの給与は、昇給制、つまり技術が上がったら給料を上げていくのが良いでしょう。しかし使用者の中には、入社後は給料を上げる話をしようとしない人もいます。労働者からは言いにくいものですし、不満に思ってしまうものです。使用者は、「これができたらこうする」「1年後に上げる」など具体的に示すべきです。労働者はモチベーションを上げるだろうし、良い人材も集まるでしょう。

美容見習いは教わる立場!講習費用を返せ

労働基準法16条に関して、もうひとつ争点となり得ることがあります。それは、教育訓練・研修などの費用です。美容室では、講習会の他、イギリスなどへの短期留学も活発になっていますね。特に留学の場合、サポート体制も整っているため、費用が高額になることが多いでしょう。
サロン側でこれらの費用を負担する場合、経営者は、留学から帰ってきてすぐに退職されては負担分が無駄になると考えるでしょう。そのため「1年以内に辞めたら、渡航費・授業料などを返還すること」などの取り決めをしたいと思うかもしれません。
返還約束が認められるのは、サロン業務の一環ではなく、本人にとってのメリットが大きいケースです。サロンが業務命令の形を取った場合には、費用返還の取り付けをすることは、労働基準法16条に違反すると判断されます。

美容見習いは教わる立場!講習費用を返せ

人材育成は、業績アップの要になると捉えている経営者の方は多いと思います。また、理美容業界では一度身につけたスキルが一生通用するわけではないため、常にスキルアップが求められるでしょう。争点となり得る法律を抑えた上で、美容師と企業、双方の成長を実現する人材育成をぜひ目指してください。

インタビュー対象者

プロフィール

弁護士 大山 京

渋谷六本木通り法律事務所
東京都渋谷区渋谷3丁目6番2号エクラート渋谷ビル8階
TEL : 03-6868-3923

1979年横浜市出生。青山学院大学卒業
2015年 渋谷六本木通り法律事務所を開設し、独立。
民事事件・刑事事件のほか知的財産事件や医療事件まで幅広く業務を行っている。

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