【美容師のカット技術】K.e.y 小池康友さん流『大人メンズのアーバンツーブロック』#1
メンズヘアにとって普遍的なデザインだからこそ、オーダーも多いツーブロック。アップデートしていくためには、「お客さまにどれだけフィットさせるかが大切」だと、「K.e.y」の店長・小池康友さんは言います。
今回、小池さんが提案してくれたのは、大人の男性に似合うセミフォーマルなツーブロックスタイル。前編では、男女問わずリピーターの多い小池さんの、技術とカウンセリングに対する考えを伺いました。
「K.e.y」小池康友さんにインタビュー
内面を引き出すカウンセリングで、記憶に残る美容師に
――小池さんはメンズヘア誌でのスタイル提案などでも、よくお見掛けします。メンズヘアに力を入れたきっかけは?
僕の場合は、メンズに特化しているわけではなく、お客様の割合も男女半々くらいです。メンズのお客様にも力を入れ出したのは、8年前サロンオープンに当たって、各スタイリストの得意なところをのばしていこう、ということで、他のスタイリストよりは男性のお客様がいたから…という感じでした。
――「K.e.y」は前サロンに勤めていた4人でスタートしたんですよね。そのころから、男性のお客様はいらっしゃったということですね。
そうですね。でも最初は、メンズカットは苦手だったんです。1人のお客様に、カットで1時間半くらいかかっていました。とことん時間をかけてキレイに切るのがいいと思っていたんですけど、男性の場合、あまり長いと飽きてしまうんですよね。それから、クオリティを落とさずに早くカットする練習をしました。その結果、男性のリピートも増えましたね。
――男性客のサロンワークで大切にしていることは?
男女変わらずですが、サロンワークでは、カウンセリングを大切にしています。
カウンセリングでは、「みる」「きく」「つたえる」という3つのことを重視しています。「みる」というのは、雰囲気や服装を見たり、髪質を診たりということ。「きく」というのは、お客様の話を聞いて、効く施術をすること、「つたえる」というのはプロの言葉と知識で提案することです。
僕は、どんな髪型にしたいかだけではなく、どんな出来事を起こしたいか、どんな人になりたいかという内面的な部分を引き出して、それをデザインに反映したいと思っているんです。だからこそ、相手の「好き」を知り、それをイメージしていくためにも、情報をたくさん引き出すカウンセリングが重要。
例えば「あの会社に就職したい」など、起こしたい出来事を知ったうえで、「じゃあこういう髪型にすることで応援するね」と伝えると、叶ったときに必ず美容師の顔を思い出してくれるんです。そういう「忘れられない美容師」になるためには、内面的な部分をデザインすることってすごく重要だと思っていて、それがリピートにもつながると思うんですよね。
そういうことを、若手への教育でも伝えているところです。
――教育面でも、カウンセリングの重要性を伝えているんですね。
そうですね。カウンセリングって、リピート率につながる大切な部分なので。
あとは、お客様に興味を持って知ろうとすることで、自分自身の知識もおのずと増えていくと思うんです。たとえば就活中のお客様が、どんな会社に行きたいのかを簡単に調べるだけでも、イメージの幅は広がりますよね。若いうちは世間知らずでも、相手のこと、お客様のことを知ることで世間知らずじゃなくなっていける。キャリアや経験が増えるほど、自分の知識を増やしていけることになるので、より深いカウンセリングをすることは大切かなと思います。
――ほかに、若手時代にしておくといいことは?
人脈作りは大切ですね。僕自身、20代で作った人脈が、30代にいきてきているなというのは、すごく実感しています。僕は20代のころ、師匠がやっているメイクスクールに参加して、全国の美容師さんとのつながりができました。今でも新生活の時期には、全国から紹介のお客様がきてくれるんですよね。そういう人とのつながりって、人生を豊かにしてくれる。だから若いうちから、遊びの場でも、セミナーでもいいんですけど、いろんな場所に行って、つながりを作っていくといいと思います。
――技術面でのレベルアップには、何が大切だと思いますか?
今はSNSでの発信という時代性もあるので、何かひとつ武器を作るっていうところが大切なのかなと思います。それも、かなり細分化した武器というか。「カラーが得意です」じゃなくて、「寒色系の〇〇トーンの〇〇が得意です」みたいに、ニッチな部分を追求していったほうが、いろんな部分で仕事につながりやすいと思います。
お客様にフィットしたデザインがオリジナルのカットになる
――小池さんがデザイン面で大切にされていることは?
女性も男性も、とくにこだわっているのは「毛先」です。髪のことが気になるのって、毛先に関わることが多いんです。「前髪が気になるな」と感じるのも毛先が目にかかるとかだし、髪がハネるとかパサつきが気になるのも毛先。人の目線って、指先や足元とか、そういうところにいくものなので、毛先の処理って大切なんですよね。
なので、メンズスタイルにおいては、顔周りのキワ、ヘムラインの処理っていうのを常に意識しています。産毛を含めてキワの処理をキレイにするのは、とくに大人の男性にとっては、身だしなみにも関わってくる部分なので。
――今回ご提案いただいたスタイルも、ヘムラインの美しいツーブロックですね。
そうですね。今回は、仕事もプライベートも充実している世代に向けて、ライフスタイルに寄り添ったスタイルを提案しました。ツーブロックって、すごい派手でも新しいわけでもないんですけど、当たり前すぎて意外と習わなかったり、正解がなかったりするんです。ツーブロックの位置が1cm、2cm変わるだけで、印象がすごく大きく変わる。だからこそ、そのお客様に一番フィットしたツーブロックを、理論的に作り上げることが唯一無二のオリジナリティになるし、それがリピートにもつながっていくと思うんです。
小池さんが提案する『大人メンズのアーバンツーブロック』
定番のツーブロックを、大人に似合う落ち着いたデザインと、ツヤっぽいスタイリングでアップデート。清潔感のあるヘムラインの処理や、浮きやすい髪質に合わせたカットなど、細部にこだわって作り込むことで、あこがれられる大人のヘアスタイルに。
小池さん流『大人メンズのアーバンツーブロック』のいいところ
1.新社会人にもぴったりな大人っぽいデザイン
2.髪質や雰囲気に合わせて調整しやすい
3.スタイリングなしでもカッコよく決まる
カウンセリングを重視し、そのお客様にフィットしたデザインを作ることで、リピートにつなげてきた小池さん。お客様に合わせたデザインこそがオリジナルのカットになり、生涯顧客につながるということを教えていただきました。後編では、提案いただいたスタイルの詳しい作り方を伺います。
▽後編はこちら▽
【美容師のカット技術】K.e.y 小池康友さん流『大人メンズのアーバンツーブロック』#2>>
取材・文:山本二季
撮影:片岡 祥
ヘア:小池康友(K.e.y)
モデル:廣瀬俊朗(元ラグビー日本代表)
教えてくれたのはこの人!
小池康友さん
K.e.y 店長
静岡県出身。都内2店舗を経て、2012年K.e.yのオープニングスタッフとして参加。サロンワークを中心に一般誌や業界誌の撮影、セミナー講師活動などで幅広く活躍中。独自のセンスと卓越した技術でタレントやアスリートなどからも絶大な信頼を集める。
インスタグラム:@k.e.y_koikeyasutomo