武士は口紅を塗ってた? 実は美容好きの男性市場の傾向

女性客の利用が頭打ち感を示している美容業界で、新たな顧客層として男性客が浮上してきています。2016年、20代男性の美容室の利用率は、前年より12ポイントも上がって56%になりました。また、利用率で23.5%と低い40代でさえ、半数近くの48%が「美容に興味・関心がある」と答えています。

ちなみに、現在の50代男性へ「(10年前の)40代のころ、美容に興味・関心があったか?」と質問したところ、「あった」という回答はわずか36%。ここ10年ほどで、男性の美容意識が変わってきたようです。男性化粧品市場は、2001年の111億4,300万円から2014年には222億3,900万円へと成長しています。

男性美容は、時代的にも価値観や状況の変化で、需要が増加しているのです。ただし調べてみると、男性には男性の傾向(特徴)があることがわりました。今回は、「男性と美容」について、その傾向と対策をじっくりとご紹介します。

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日本男性はもともと美容好き

武士は口紅にチーク。町民は脱毛にホワイトニング。

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男性と美容は、歴史的にみると、むしろ世界的に普通なことなのです。日本でも、男性が髪を切り、化粧をしなくなったのは明治以後の150年間ほど。平安時代から江戸時代の約1000年間は、女性だけでなく男性も、ロン毛にメイクがむしろ「身だしなみ」とされていました。

「武士道とは死ぬこと」で有名な武士の教科書「葉隠(はがくれ)」にも、「口紅や頬紅(ほほべに=チークのこと)は常に携帯しましょう」と書かれています。武士だけではありません。江戸の町民は、男性でも、マユ毛の処理から全身脱毛に歯のホワイトニングと、むしろ現在に近い状況でした。

それが「短髪・すっぴん」になったのは、明治になって欧米の風俗を取り入れたことと、徴兵制で軍隊へ入るようになってからのようです。現代の私たちがもっている「男らしさ」は、当時の政府が強力におしすすめた「政策」の結果でもあるわけです。

20〜30代 美容は「当たり前」世代 外見が仕事にもプラスと認識

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では、いま男性の美容意識が再び高まってきたのはなぜでしょうか。調べてみると、年代によって傾向があるようです。まずは20〜30代。彼らは、ビジュアル系バンド、カリスマ店員&美容師、ギャル男などのブームを経験しています。美容を「当たり前」に取り込んできた世代ですね。

20〜30代にとって、マユ毛の処理や美肌対策は生活の一部。住宅街に住んでいても都心の美容室へ普通に行き、実に61.75%がスキンケア・ヘアケアに「関心がある」と回答しています。理由は、印象をよくして「人から評価されたい」と、「今の若さを維持したい」が2大要因です。

また、彼らの彼女・妻たちも「肌がきれいだと仕事がデキる人に見られそう」と、積極的に応援しています。男性のスキンケアが実社会でも「有利」に働く時代なのですね。さらに、「男は男らしく」という「明治以降の男性像」が希薄な世代で、女性の行動を「自分事」として素直に取り入れます。

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40代 加齢と女性進出で美容に関心あり 不慣れなので、リードが必要

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そして40代。全世代のなかで、美容室の利用率でも、カット以外の施術利用率でも低い年代にかかわらず、半数近くが「美容に関心・興味がある」と答えています。その原因をつかめれば、美容業界として新規開拓につながるのではないでしょうか。

原因のひとつは、体型や体臭の変化。40代は、加齢を初めて「自分事」として意識する年代です。その分、「周囲から、いつまでも若々しいと思われるように年齢を重ねたい」(48%)、「周囲から、かっこいいと思われるように年齢を重ねたい」(44%)という気持ちが出てきます。

もうひとつの原因は「女性の社会進出」。職場での女性比率は年々上昇しており、現在の40代が社会人になった20年前の39.8%から平成27年で43.2%になりました。もっとも古い資料の昭和34年が28.6%。それからからずっと上昇傾向で、今後もますます増えていくと予測されています。

そして、女性比率の高い職場では、男性の「身だしなみ」意識が高いこともわかっています。「スキンケア・ボディケアなどに関心があるか?」という質問に、女性比率の高い職場では「ある」が73.3%、比率の低い職場では56.1%と1.3倍の違いがありました。

では、内心は美容に意識が向いているのに、なぜ40代の美容室や施術の利用率が低いのでしょうか?アンケートでは、「まず、どうしたらいいかわからない」(21.3%)、「伝え方がわからない」(12.8%)を合わせると34.1%。「うまく答えられない」(12.8%)を加えると46.9%と半数近くになります。

初めて感じる加齢、まだ若く見られたいという気持ち、そして年々増えていく職場の女性たち。自分の中では美容に切実な思いがあっても、どうやら実現の仕方に苦労しているようですね。美容室側の雰囲気作り、上手な聞き出し、そしてリードが必要・・・ちょっと恋愛に似ていませんか?(笑)

まとめ

女性客の利用が伸び悩んでいる美容業界で、新たな顧客層を見つけ出すとすれば、いかに男性客をつかんでいくかになります。男性客は、女性客に比べ、年代によって特徴が分かれています。その分、対策を立てやすいともいえます。まずは、どの年代をターゲット層にするのかがキーとなるでしょう。

▽参照(あいうえお順)
「男性の美容意識」㈱インテージ ビジネスパーソン意識調査2015年2月調査
https://www.intage.co.jp/library/20150325/

「美肌にこだわる男子 「20代男性のスキンケア」その意識と実態」花王㈱
http://www.kao.co.jp/lifei/pdf/report/02.pdf

「経済産業省生産動態統計調査」経済産業省
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/

「若者だけではない! 40代男性に広がる「男性美容」の波・「美容に関心がある」40代男性は、10年前と比べて約3割増! こだわりがある美容・身だしなみ家電、1位は「シェーバー」」パナソニック㈱
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000008708.html

「意外にも日本人男性は歴史的に化粧好きだった!」(前後編)メンジョイ
http://www.men-joy.jp/archives/19649)(http://www.men-joy.jp/archives/19657

「2015年のトレンド予測 美容領域」株式会社リクルートホールディングス
http://www.recruit.jp/news_data/release/pdf/20141217_06.pdf

「美容センサス2016年上期報告書 15~69歳男女の美容サロン利用実態」株式会社リクルートライフスタイル ホットペッパービューティーアカデミー
http://hba.beauty.hotpepper.jp/wp/wp-content/uploads/2016/06/cencus_fullreport_2016DM.pdf

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