進化より深化。とことん好きを掘り下げるのが夢屋流『ヘア・サロン 夢屋』
赤紫色の壁にキッチュでファンシーなインテリア、当時の雑誌からそのまま飛び出てきたような夢さん。これらの圧倒的な存在感を放つ様々なディテールが、絶妙なバランスで混在することで完成しているヘア・サロン夢屋。後編となる今回は、1人で店を運営する理由やこれから美容師を目指す人へのアドバイスなどを伺います。
自分のスタイルを探すことが第1歩
――1人でお店を切り盛りされていますが、1人にこだわる理由やメリット、またどのように運営されているのかを教えてください。
「自分だけで店をするメリットは、やっぱり自由である点。私は最初から1人で店をするというイメージを持っていたので、デメリットよりメリットの方を多く感じます。例えばスタッフを抱えているとここまで自分の好みを押し出す店にするのは難しいでしょうし、毎月お給料を支払うわけですからそれだけ幅広いヘアデザインを提案し、たくさんのお客様に来ていただく必要がありますよね。でも私の場合は“この時代のこういう髪型”をしたい、というこだわりがあるため、今のスタイルが向いていると思います。ただ、好きなことを好きなようにできるのは1人だからこそですが、独立までの期間に色々なサロンで6年間ほど修行させていただいた経験は自分の基礎になっていると感じています。ちなみにデメリットをあえて挙げるなら、雑務が多い点でしょうか(笑)。掃除から店の開け閉め、経理なども私の仕事なので、そういった面ではやらなければいけない仕事の量は増えますね。」
人数を限定して質の高い施術を
――施術面で気をつけている点は?
「お受けできるお客様は1日最大5名まで、と決めています。この数字はシャンプーから仕上げまでをしっかりご満足いただけるようにできる最大人数だと思っていて、1人でやっているからこそ、ある程度自分が納得いくサービスができる人数を決める必要があると考えています。また、お客様とマンツーマンの状態で施術させていただくことが多いので、会話を楽しみながらゆっくりとくつろいでもらいたいという気持ちも。基本的に当店のお客様は私と趣味が被っている方がほとんどなので、施術後にしばらくおしゃべりすることも多々あります。そんな時間も含め、夢屋での滞在を楽しんでいただければと思いますね。中には当時のメイクやファッションを知りたいというお客様もいらっしゃるので、メイクの仕方をお教えすることも。また、使う薬剤などに関しては肌に優しいものなどを中心に扱うなど、提案するスタイルはレトロでも、それを作るための道具には新しいものや良いものを選ぶようにしています。」
追求する力と楽しむ力が大切
――これから美容師を目指す人や独立を考える人にアドバイスを伝えるとしたら?
「私は美容師になりたくて高校を中退して専門学校へ進み、約6年間他のサロンで勉強をさせてもらって独立しました。美容師には色々な道があるけれど、絶対に譲れないのは基礎の大切さと練習です。どんなスタイルを作るのにも基礎があってこそだし、仮にこういうヘアデザインを作りたい!とイメージができても基本的な技術がなければできませんから。あと、私自身が早くに独立したこともあり、長く勤めることばかりが良いとは思っていません。もし自分に明確なビジョンがあるなら、決断した時点で動くのも良いのではないでしょうか。これが好き!という譲れない気持ちがあれば、自分らしさに特化した店を出すのもアリ。好きの力が強いほど、そのパワーに惹かれて周囲からのサポートも増えると思います。」
話すほどに引き込まれる夢さんの魅力と、不思議と居心地の良い空間。他にないからこそそれを求めてお客様が訪れる、そんなオンリーワンの地位を築いている夢屋。オーナーの好みを詰め込むことで独自の市場を生み出したヘアサロンとして、今後も同じ理想を持つ人のロールモデルとなるのではないでしょうか。