「apish」をモデルケースに美容業界が発展すればいい。志の大きさが成功の源に【apish CEO 坂巻哲也さん】#2

サロン代表という肩書きに収まりきらないapish CEOの坂巻哲也さん。ステージ4の癌からの生還、スタジオVからの独立、そしてカリスマ美容師ブームの牽引など、坂巻さんの激動の人生をご紹介しています。
後編では、新しいことにチャレンジし続ける原動力、そのチャレンジを成功させる秘訣、そしてサロンを経営するなかで迎えた最大のピンチについても伺いました。

成功の裏には誰にも見せない地道な努力が

坂巻さんが手がけたapishのオリジナルヘアケアブランド「cocorogami」シリーズ。

――美容師として成功しているのに、さらに新しいことにチャレンジするのはなぜですか?

オリンピックのメダリストは100万人に1人。僕はメダリストと同じくらい希少性のある人間を目指しています。そうは言っても、才能があって努力を惜しまないイチロー選手のようにはなれません。人生は「かけ算」なんです。100人に勝てることを3つ探せば100万人に1人になれます。まず、美容免許を持っているのは250人に1人。テレビに出演して話をすることなら100人に勝てるかもしれない。60歳で身長180㎝あってお腹も出ていないし髪もふさふさしているのは100人に1人かもしれない。そう考えると僕は金メダル級の希少性ですよね。
今、「人見知り芸人」とか「絵が下手な芸人」が話題になっていますが、ネガティブなことも極めてしまえば希少性につながるんです

――「テレビでお話をする」と言えば、QVCの出演は話題になっています。

ずっとテレビ通販をやりたくて、依頼がないのに「今日ご紹介する商品はこちら!」なんてビデオに撮りながら練習していたんですよ。だから実際にお話をいただいたときは、「初めてなのに何でそんなに上手なんですか!」と驚かれました(笑)。
毎年100個の目標を作ってノートに書き出していますが、そのひとつに「僕が作った商品がバカ売れする」というのがあったんです。その最初の商品が前髪ウィッグです。お客さまから「前髪が欲しいけれど、自分自身の髪では無理。何とかならないか」という相談を受けました。それでエクステンションと接着剤で前髪を作ってあげたんです。そうしたら大喜びしてくださって。ほかのお客さまのために暇があったら前髪を作っていました。そんなときに、熊野筆の製造メーカーからメイクブラシをプロデュースして欲しいという話をいただいたんです。担当者にメイクブラシより前髪ウィッグが面白いのでは…と説明したトントン拍子に話が進んで商品化できました。

――前編で毎年100個の目標をつくることを紹介しましたが、目標を書き出すだけではダメなんですね。

運を引き寄せるには、ただ言葉にするだけではダメ。準備や学びも必要です。せっかくチャンスが来ても逃げてしまいます。
本当に実現したいなら、そのために何が必要なのかを考えないと。

がんばるのは当たり前なんです。例えばスポーツ選手のインタビューで「がんばります!」なんて言っているのを聞くと「あぁ~この人が優勝するのは難しいだろうな」って分かります。本番で「がんばる」では遅いんです。練習をしっかりがんばって「今までの成果を本番で出すだけです」と言えれば本物。準備にがんばるのが鉄則です

大量の離職者が出たことが経営を見直すきっかけに

毎年スタッフに配られる冊子「COCORO」。apishの結束を高めるツールのひとつ。

――サロンの運営も通販も順調。今までにピンチはあったんですか?

カリスマ美容師の時代があって、apishに入社したい人が800人を超え、「俺の背中を見てついて来いよ!」の一声でみんなが付いてくる、そんな時代がありました。普通の美容師だったのに、ある日「坂巻さんですよね?」「写真、撮ってください」って声をかけられる。すっかり天狗になっていたんですね。最初のうちは離職者が少なかったのですが、カリスマ美容師ブームが落ち着いたころにフリーランスブームがきて、一気に離職者が増えました。
「俺、こんなにやってあげていたのに」は通用しないんです。「自分のためにやっていただけ」ってことに気づくまで、本当に辛かった
僕が変わらなかったから、そういうことが起こったんです。勢いのまま経営するのではなく、経営も人材も「デザインしよう」と思うようになりました

――人をデザインする…というのは具体的には?

1人1人をコンサルティングして、その子が「なりたい」「幸せを感じる」イメージを応援するようにしました。
美容師の免許を取ったものの、ハサミを持ちたがらないスタッフもいます。でも美容が好きでapishのこともお客さまのことも大好き。それなら、彼らが活躍できる場を作ってあげればいいじゃないですか。

例えば、「退職してメディアの制作会社に転職したい」というスタッフがいました。そのときちょうどYouTubeを配信したいと考えていたところだったので、「僕と一緒にコンテンツを作ってみない?」と声をかけました。僕にはプロデュースする力はあっても動画を編集する能力はありません。そのスキルを学ぶ時間があったらほかのことに使いたい。ちょうど、スキルがあっても活用する場がないスタッフに出会ったのはベストタイミングでしたね。こうして『坂巻哲也美容チャンネル』が「スタートしました。
社長が何か思いついて、無理矢理スタッフに押しつける…というのはもう通用しません

――美容業界はどんどん変化しています。坂巻さんはどのように対応していますか?

今、美容業界がほかの業種から浸食されていますよね。それをマイナスと考えないで、美容師がどんどん出て行けばいい。他業種とコラボするのもいいし、他業種にチャレンジするのもいい。
僕の最終的な目標は政治家になること。そのための発信力であり知名度、リーダーシップなんです。今、apishの社員を幸せにできているなら、この輪をもっと大きくしたい。もう一度もらった命ですから、美容室経営者にとどまらず、もっと広げていきたいですね。

――坂巻さんのようなキャリアを築きたいと考えている人にアドバイスをお願いします。

経営者になりたいのであれば、若いうちから勉強しておくことも大事。
最初、僕は店長になりたかったら、入社したときから店長のものまねをしていました。店長と同じ接客として同じ動き方をしていたから、最短で店長になれました。次にまねをしたのは経営者。社長がやっていることや言っていることをまねて、頭の中や仕事に対する考え方を学んだものです。
自分がキャリアアップするとワクワクするじゃないですか。自分が成長していることを言語化、数値化すると努力も辛くありません。僕のように目標を100個あげて、クリアするために楽しみながら努力すると長続きしますよ

坂巻さんの成功の秘訣

1.毎年100個の目標をあげ、楽しみながらクリアする

2.経営も人材育成も「押しつけ」ではなく「デザイン」する

3.なりたい人の言動をまねて、頭の中や考え方を自分のものにする

お話を伺ったのは…

坂巻哲也さん

青山、表参道、銀座などに9店舗展開するapishの代表。サロンワークのほか、独自の技術理論を用いたセミナーの開催、ヘアショーなどへの出演も。薬剤や美容機器の研究・開発にも携わり、スタイリング剤、ヘアウィッグなどのプロデュースでも数々のヒット商品を送りだしている。また、YouTube『坂巻哲也美容チャンネル』を配信するなど、活動の幅がどんどん広がっている。

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Salon Data

apish AOYAMA
東京都港区南青山5-12-6 青山第2和田ビル2F
03-5766-3605
URL:https://www.apish.co.jp/

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