美容業界のトラブル回避で目指せ優良サロン! Moreリジョブ法律相談所

美容業は人が人をより魅力的にできる職業。お客様に喜んでいただき、笑顔を見せてもらえたときは本当に嬉しいし、この仕事を選んでよかったと思える瞬間です。でも、お客様の髪や肌に関わるし、またそもそも接客業ですから、時には笑顔どころかクレームをいただくこともあるでしょう。だけどそれが大きな問題に発展、さらには「裁判沙汰」なんてことになったらどうしましょう。誰にだって可能性がゼロとは言えませんよね。そこで美容業界ならではのトラブルについて「法律的に見たらどうなのか」を現職の弁護士である紀尾井町法律事務所の大田裕章先生に相談してみました。

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CASE1 施術料金を返してほしい!

施術料金を返してほしい!

相談内容

「初めて来店した女性のお客様です。お話し合いをしながらスタイリングが決まりカットをしました。そのときは気に入ったご様子で帰っていかれましたが、数日後、お店に連絡があり、『友人から変だと言われたので施術料金を返してほしい』と言われました。これって払わなければいけないのでしょうか?」

大田先生の回答

美容室へ行って施術をしてもらうということ。これは法律的には、美容師さん(または、美容師を雇用する美容室)とお客様の間で「準委任契約が締結された」ということになります。この契約の締結によって、美容師さんには、契約内容すなわち「お話し合いをして決まったスタイリングに沿った施術」をするという「義務」が生じます。

本件では、お話し合いをしながらスタイリングが決まってカット行為をしていますね。そして、そのときはお客様も気に入った様子でお帰りになったということですから、「準委任契約による美容師さんの義務は果たされている」と考えてよいでしょう。

その後、いくら友人から言われたからといっても、施術した側には何ら「債務不履行」、つまり義務の違反はありませんので、料金を返す必要はありません。

ただし、サービス業、接客業としては、せっかく初めて見えられたお客様ですから、また御来店していただくためにも、何らかのケアやフォローをされてもよいのかなと思います。これは法的アドバイスを超えていますが(笑)。私がその美容師さんの立場だったらそうすると思います。

結論

返金する必要はなし。可能であれば何らかのフォローをしてみては?

CASE2 SNSに名指しで書かれていた!

SNSに名指しで書かれていた!

相談内容

「たまに来店する女性のお客様。そんなに話し好きではないみたいなので、あまり話しかけるようにはしていませんでした。しかし、その方のSNSを見てみると『あの美容師、全然しゃべらないし、私のこと客と思ってないんじゃない?』という悪口に近い内容を投稿していたのです。私の名前も入っていたので、ちょっとこれはヒドいなと思っているのですが、SNS上でやりとりをすると炎上しそうで。これはどうすればいいのでしょうか?」

大田先生の回答

「名誉毀損で何かできないでしょうか?」、または「SNSの投稿を削除できないでしょうか?」ということだと思います。名誉毀損には、「刑事上の名誉毀損罪」に当たるというほかに「民事上の損害賠償」を求めることができるという側面もあります。では、本件が名誉毀損に当たるか考えてみましょう。

「刑事上の名誉毀損罪」は、「公然と事実を摘示して、人の名誉を毀損した場合」に成立します。これは民事上の損害賠償でもほとんど同じです。

まず、公開・非公開にかかわらずSNSに掲示されたことは、「公然」と見なされる可能性は高いです。ただ「事実を摘示して」という部分はどうでしょうか。事実を示さないと名誉毀損は成立しないんですよ。例えば「あいつは馬鹿だ」と書かれた場合、馬鹿というのは「評価」であって「事実」ではありません。

本件にある「あの美容師、全然しゃべらないし、私のこと客と思ってないんじゃない?」という言葉が事実を示しているのかと言われれば、「全然」は評価であり、「思ってないんじゃない?」は意見ですから、「事実を示した」とはなかなか言いにくいんじゃないかと考えます。

また仮に事実を示したとみた場合でも、それによって相談者さんの「社会的評価」が落ちているのか?ということがあります。名誉を毀損するというのは「社会的な評価を落とすこと」を意味します。「全然しゃべらない」と書かれたことによって、相談者さんの社会的な評価を落としたことになるのかな?という問題もあります。

そして、「民事上の損害賠償」についていえば、本件によって美容室の売上が著しく低下した、明らかに損害を受けたということがない限り、難しいんじゃないかなって思いますね。

本件では、誰がSNSに書き込んだのかについては、お客様ですから特定されていますし、お互いの誤解だったわけですから、相談者さんも「SNSを拝見しました。お客様がお話し好きではないと勘違いして、遠慮していました」と説明した上で、SNSの削除をお願いしてもよいのではないでしょうか。法的手段に頼るものではないという気がします。

結論

刑事上も民事上も名誉毀損は成立しない。お互いの誤解をといてみては?

Profile

大田裕章さん

弁護士 大田裕章さん

略歴
私立栄光学園高校、北海道大学法学部、大宮法科大学院卒業。
平成23年12月弁護士登録(第二東京弁護士会)、紀尾井町法律事務所に入所。
平成26年11月から平成29年3月まで全国町村会総務部法務支援室長。
現在、紀尾井町法律事務所に勤務。

紀尾井町法律事務所
〒102-0084
東京都千代田区二番町9番地8 中労基協ビル3階
電話:03-3265-6071(代表)

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