トレンドを創る人 Vol.4 GARDEN 河野悌己さんが感じたN.Y.の風 #1
今から約4年前。GARDENがアメリカ、ニューヨークへ進出するという話を聞いて、本当に大丈夫なのか? 今さら何で? と感じた人も中にはいたかもしれません。GARDENのゼネラルプロデューサーとしてN.Y.出店に意欲を燃やしていたのが、河野悌己(こうの・よしき)さんです。東京ブレンドのメンバーとしても活躍し、日本とN.Y.を1年間に行ったり来たりする、ジェットセッター。日本とN.Y.の違いについて、聞いてみました。
N.Y.で求められるのは、完全提案型の接客
――ニューヨークと東京のサロンワークでは、どんなところが違いますか?
「N.Y.の店はダウンタウンのウェスト・ヴィレッジという場所にあるんですが、もともと白人が多く、街も洗練されていて、職業はIT系やアーティストが大半なんです。コンサバな人が多いと言われるN.Y.でも、比較的カジュアル志向の人が多いエリアだと思いますね。
今、僕を含めて4人のスタイリストが日本とN.Y.を往復しながらサロンワークをしています。レセプションとアメリカ在住のスタイリストを入れてメンバーは全部で6人ですが、一時帰国のタイミングで常時3人が現地に在籍する形を取っています。セット面は8面で広さは約18坪と、GARDEN史上、最小面積ですが、日本の店と大きく違う点は、基本的にカウンセリングからシャンプー、カット、カラーと全部スタイリスト本人がやることです。
アシスタントがフォローできない分、スタイリスト1人で1日10人くらい担当できればいいほうですかね。その分、お客様との距離がめちゃくちゃ近いので、現地の日本人の方が一時帰国されて、銀座のサロンへ来てくださったとき、僕がマンツーマンでできないと知り、N.Y.のほうがいいとおっしゃるくらい(笑)僕自身もお客様との距離の取り方について、再確認するきっかけになりましたね」
“大人可愛い”ではなくスタイリッシュ!
――アメリカ人のお客様も多いと聞きますが、どう対応されていますか?
「うちにいらっしゃる方は、もともと日本の接客や技術を評価してくださる好意的な方がほとんどです。それでも最初のうちはカウンセリングに苦労しましたね。日本人のお客様だとこちらから要望をお聞きしますが、アメリカ人のお客様は、“あなたはどうしたい?”と逆に聞いてくるんですよ。
完全に美容師からの提案型接客で、それは僕も望むところですが、最初はアメリカ人の好みがよくわからなくて(笑)あちらはまず“可愛い”という概念がなく、COOLとかスタイリッシュな雰囲気が好まれます。もちろん写真などを見ながらコミュニケーションを取りますが、当時は最終的になりたい女性像やスタイルのゴールが見えていなくて、本当はあと1cm切りたいけどどうだろう?とか、重めがいいと言っているけど、本当にこれでいいのか?など、一つひとつ確認しながらコミュニケーションを取っていました」
課題は、カラーリングの感性を磨くこと
――技術的なギャップはほとんどないというわけですね?
「そうですね。ただ唯一、カラーリングに対する考え方は大きく違いますね。まずあちらでは日本のような一色染めはあり得なくて、ハイライトを中心に陰影をつけるカラーリングが主流です。もともとカラーで冒険を繰り返しているので、履歴も無茶苦茶な人が多く苦労します(笑)
その上、瞳の色がひとり一人違うため、黒い瞳の僕たちに見えている仕上がりの髪色と、青や緑といった瞳で見た色に感覚的なギャップがあるという説があり、カラーのカウンセリング時にこちらの意図が伝わりにくいことがあります。だからこそ、その部分のギャップを埋めて、日本人の提案するカラーっていいね、と言わせたいですよね。
髪型に関しては、前髪をつくる人が極端に少ないです。女性はほとんどロングかミディアム。前髪のない、かき上げ系が主流ですが、僕のお客様は、来店のたびにどんどん形を変えていっています。日本のように職場の縛りがない分、一度信用してくれたら、こちらの提案はほぼ何でも受け入れてくれる点が大きく違うし、それこそが本当に美容師とお客様がコミュニケーションしながら、いいヘアスタイルを創り出す原点だと感じています」
次回はN.Y.で働いて、公私ともに変わったことについてリポートします。
取材・文/山岸敦子
撮影/中川良輔
Salon DATA
GARDEN New York
(ガーデン ニューヨーク)
河野悌己さんを筆頭に中丸京子さん、山岸貴史さんといったベテランメンバーで約2年半前、ダウンタウン・ウェスト・ヴィレッジに出店。日本の卓越した美容技術と、おもてなし精神で現地の人々の心をつかむサロンとして定着。
トレンドを創る人Vol.4 GARDEN・河野悌己さん N.Y.が与えた気づき #2>>