自由な働き方ができる環境と柔軟な思考。そこから得るものは大きい【美容師 佐野侑子さん】#2

20代の頃は自身のキャリア形成に注力し、30代で段階的に働き方を変えた佐野侑子さん。前編ではPATIONNへの移籍や時短勤務を選んだお話、パートナーとの出会いなどをお聞きしました。

後編では、仕事復帰のために準備したことや復帰後に感じたこと、働きやすい環境や今後の美容業界のあり方についてお話しいただきました。

お話を伺ったのは…
PATIONN
トップスタイリスト 佐野侑子さん


2003年に美容学校を卒業。都内1店舗を経て、2014年にPATIONN入社。スタイリスト歴17年の経験を活かし、一人ひとりのライフスタイルや髪質に合わせた“キレイ”を提案。20代に人気の華やかなウェーブロングから、30〜40代に人気のふんわりショートボブまで、幅広いスタイルを得意としている。この5月に3歳になる女の子のママ。

丸1年休んで復帰。体調変化にとまどったことも

――産休・育休や復帰について、サロンとはどんな話し合いをしましたか。

まずはどれくらい育児休暇を取るか、相談しました。出産予定が5月だったので、4月から保育園に預けるなら私自身も不安がないかなと。生後3、4ヶ月で預けるというイメージはできなかったんです。

復帰後の働き方も話し合いました。今まで通りアシスタントをつけて客数を確保するか、アシスタントなしでシャンプーから仕上げまで自分でやって歩合給を上げるか。丸1年休んでしまうので、復帰したときにお店の状況もだいぶ変わるはずです。それで、もしアシスタントがそのまま残っていたら今まで通り、いなかったら私のために人員補充する必要はないので自分でやる、ということに。幸い、みんな辞めずに残っていました。

――復帰のためには保育園探しも必須ですよね。

「保活」はやりきった!と言えるくらい頑張りました。保育園は、自分の目が届かないところで子どもが長時間過ごす場所。だからすごく重要だと思います。何十軒も見学に行き、5軒にしぼり込みました。結果的には第3希望の保育園に決まったのですが、それが自宅から一番近いところで、通い始めたら「大正解!」と思いましたね(笑)。娘も保育園がすごく好きで、楽しいみたいです。

「私は娘の絶対的な味方。娘にとって『自分を信じてくれる人』と思ってもらえるママでありたい」と佐野さん。

――いよいよ復帰…のときの心境はいかがでしたか。

復帰1日目の朝にお客様の予約が入っていたのですが、一瞬「あれ?どうやってカットしていたんだっけ?」となりました。1年間ずっと「ママ」に専念していたので、急に仕事のスイッチに切り替えるのに手間取ったというか。でも切り始めたらすぐに感覚を取り戻しました

ただ、産後1年ほどはホルモンバラスの乱れがなかなか戻らず、急に暑くなって汗が吹き出すことも。仕事中はドライヤーも使うし、4月に復帰したのでどんどん夏に向かっていく時季だし、汗だくで恥ずかしい思いをしました。

――パートナーとの家事・育児の分担はどうされていますか。

あまり細かいルールは決めていませんが、基本的にはほぼ私です。ただ、夫は育児力が高いと思います。料理が上手なので、家にいるときは作ってくれるし、娘の食べるものをとても気にかけてくれます。娘の離乳食の期間は、休日に作って冷凍しておいてくれました。

掃除や洗濯には興味がないようですが、美容室勤めが長いので掃除のスキルはあるんですよ。だから「私はこっちをやるから、あなたはここをキレイにして」と言えば、すごいクオリティでピカピカにしてくれます(笑)。

パパ美容師も育休を!そんな美容業界が理想

30代後半での出産のせいか、体調が戻りにくかったという佐野さん。「若いうちに生んでもキャリアを積めたり、アシスタントでも時短勤務できたり、これからは新しい働き方が必要になってくるはず」と話す。

――仕事と子育ての両立で大変なことは何ですか。

自分の体調管理ですね。風邪やらウイルスやら、子どもからもらってしまうんですよ。手足口病がうつったときは本当に辛かった。痛くもかゆくもないのですが、湿疹が出てしまうので美容師としては働きづらい。娘、自分の順に罹患するので休まなければならないトータル日数が長くなってしまいますし。

でもこればかりは仕方のないこと。だから来店を今日か明日か迷っているお客様がいたら、「ぜひ今日来てください!」となります。今日は確実にサロンにいるけど、明日はどうなっているかわからないので(笑)。

――逆に、プラスになっていることはありますか。

出産や子育てという経験をしたことで、髪型の提案も会話も引き出しが増えたと思います。そして、丸1年も休んだのに変わらず来てくださるお客様への感謝を強く感じられました。

子どもを生む前は「忙しくて大変、辛い」という自分本位の考えが先に立つこともありましたが、生んでからは感謝の方が大きいです。

――佐野さんにとって、働きやすい環境とは?

出勤時間の前倒しや早上がりOKのフレキシブルな働き方ができること、自分のお客様を任せられるスタイリストが何人かいること。それが、無理せず働けることにつながります。PATIONNでは本当に自由な仕事体制で働かせてもらっているので、ありがたいです。

それから、育休を取るパパ美容師が増えてほしいし、そういう環境や制度ができてほしいと思います。世の中の流れとして男性の育休取得率を上げようという動きがありますが、現状では男性美容師の中で育休を取る人はあまりいません。育休手当は個人にしか出ないので、企業側にも何かメリットや補助金があれば良いのですが。

私たち夫婦はどちらも実家が遠いので、子育てで頼れるのは夫だけ。たまたまコロナ禍によるステイホーム期間があったのでふたりで育児ができたのですが、やはりひとりでは大変だと思います。それに、もっと育児に関わりたい男性も多いと思うんですよ

「無理しすぎない&あきらめない」ことが大事

「子どもと離れてほかの人と過ごす時間も、私には必要。そのほうがバランスを取れるんです」と佐野さん。

――仕事と子育てを両立する秘訣はありますか。

多少の無理はしても、絶対にしすぎないこと。自分がいっぱいいっぱいになってしまう瞬間ってありますよね。そういうときは、洗濯物が山積みでも部屋が散らかっていても、とりあえず無視(笑)。娘の食事やお風呂、自分が仕事に行く準備など、優先順位が高いものだけやります。

私にとって優先順位の低い家事は、すき間時間を使って効率良く片づけるようにしています。朝10時から予約が入っていれば早めに出社して準備しますけど、11時出勤でも大丈夫な日は朝30分くらい集中して掃除をするとか。

――時間の使い方が上手なんですね!

忙しくても意外と、ちょっとした空き時間ってあるものなんです。そういう時間を、家事だけでなく自分の息抜きや運動にあてることもあります。子どもがいるからって、自分の時間をあきらめることはないと思うので

夫に娘を見てもらって、友人と出かけることもあります。お互い様なので、夫も「じゃあ、次の休日は自分が出かける」とか言いやすくなると思います。

――美容師としての今後の目標はありますか。

少しでも長く、現役でバリバリ働きたいです!と言っても都会で活躍する意味のバリバリではなく、場所にこだわりはありません。お客様やスタッフと楽しく過ごしながら、自分なりに頑張って働けたらいいですよね。

――長く続けたい美容師という仕事。その魅力は何でしょうか。

いろんな人と関われること、お客様に喜んでいただいたけること。人は求められることに喜びを感じるのだと思います。娘に「ママ、ママ」と求められたらうれしいですし、仕事でも必要とされたらうれしい。求められて、喜んでもらえて、自分が生活できる仕事ってすごいです

お客様とお話することで私自身も楽しんだり情報交換できたり、くだらないことで笑い合ったり。それで収入を得るって、なんてラッキーなんだろう!こんな風に感じられるのは、1年休んだからこそかもしれませんね。

佐野さんが大切にしている3つのこと

1.仕事も子育ても無理をしすぎない

2.子どもを理由にいろいろなことをあきらめない

3.時間を効率良く使える方法を考える

取材・文/井上菜々子
撮影/喜多二三雄

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Salon Data

PATIONN
住所:東京都港区南青山5-6-3 メーゾンブランシュ2 4F
電話:03-6447-1735
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