現代人の健康意識改革・健康診断で重視したい、腫瘍マーカーの正しい認識#2
健康を日常的に意識して生活をするようになった現代人。勤め先での健康診断もさぞや積極的に受けていることでしょう。だからこそ、もっと深く健康診断に関心をもって欲しいのです。そこで何が診断されているのか、しっかりと関心を持ち、内容をきちんと知ることでより的確な健康の指針を得られるのです。
健康のために腫瘍マーカーを受けると決める前に、腫瘍マーカーの正しい認識が必要です。
5年前に早期肺がんの手術を受けた患者さんのケース
5年前に早期肺がんの手術を受けたという患者さんのケースです。その後、順調に経過しているというのにCEAの数値が極めて高く推移していたと言います。もちろんだから、この患者さんは肺がんの再発をとても心配しているのです。そのため、CTやPETーCTなどの画像検査をくまなく行ってみたりする訳ですが、がんの出現を見つけることができません。CTやPETーCTで何も見つからないから安心していいですよと言われても、実際にCEAは高い数値なのですし、そのとき患者さんは一体どっちを信用していいのでしょうか。
患者さんは、とにかくがんに対して敏感になっている時なので、本当にパニック状態で、医師につめよるシーンも少なくないと言います。しかし、腫瘍マーカーが上がること自体は病気ではないのです。実際に、何ごともないままというケースも多いのですが、医師に大丈夫ですよと言われても、腫瘍マーカーの数値を信じ込んで後遺症に悩まされているのです。
あくまで参考というモチベーション
腫瘍マーカーが上昇していってしまう理由は、一般には体じゅうにがんが広がっている進行がんの場合です。その場合、治療効果判定として使う意義が実際に確立されている状態です。腫瘍マーカーが上がり、病気の勢いが増していると判断できれば、治療がうまく効いていないことが分かり、腫瘍マーカーが下がれば治療は効いているととらえることができます。
注意すべきは、数値が出されれば、バロメータとしてつい勘違いをしてしまいがちなこと。ですが、治療は腫瘍マーカーの数値を下げるために行っている訳ではありません。腫瘍マーカーを過信しすぎず、参考程度ととらえるべきです。
それでも腫瘍マーカーを受ける意味は…
腫瘍は、体内の細胞の一部分が突然変異して、異常分裂でしこりになったりします。良性もありますが、悪性のものを一般的にがんと言います。腫瘍ができて特殊な物質が、腫瘍によって大量に製造されることになります。それが血の中にまで出現してきてしまうことになり、この物質たちのことを「腫瘍マーカー」と言います。血の中に、基準以上出た場合、発生臓器と強い関連性をもち、がんであることを推測することができます。
腫瘍マーカーは、がんのふるい分けの材料として使用されるものです。それをがんの「スクリーニング」と言います。数値の上昇はがんの進展に比例するケースが多く見られます。がんを診断するうえでの補助的な検査としてとらえてみるといいでしょう。 治療していくうえでの「経過観察の検査」として考えるようにしたいものです。
腫瘍マーカーの費用はどのくらい?
いろいろな腫瘍マーカーの種類があり、どのマーカー検査かによって費用の差があります。例えば人間ドッグのオプションで行う場合、2000円前後の費用ですることができます。1つのマーカーを受けるということではなく、特定のがんをターゲットにし、マーカーをセットで検査すれば、割引されるかもしれません。項目を増やせば、基本的には費用はその内容によってかさむことになります。
総合的判断にゆだねるべき
健康管理は腫瘍マーカーだけ行っても充分とは言えません。人間ドックを受けて、オプションとして腫瘍マーカー検査というあり方が正しいとらえ方といえます。
尿や膣分泌液などを採取をすることもありますし、他のマーカーも参考にしたり、また、超音波検査やX線CT、血管造影などの画像診断、生検などが行われて、総合的に判断していくのが正しい接し方。その基準値は測定法により異なり、検査値を読む場合は、どの測定法が用いられたかを確認することも必要です。
多くの人たちが警戒しているものと言えばやっぱり“がん”。日常生活において病気の危険とどう向き合っていかなければならないか。そのとき、腫瘍マーカー検査だけでなく他の検査項目も含めて、総合的に判断するようにしましょう。
文/sapuri