湯浅 一也 interview#3:訪問美容師だからこそできるカット
自宅や介護施設、病院からの外出が困難な方の元にサービスを提供する訪問美容。これまでの訪問美容は、ブルーのビニールシートをしき、机のうえに鏡を置き切ることが主流でサービスに欠けるものでした。そんなカットだけを提供していた業界に、移動式のシャンプー台を持参し、アロマを焚くことや、心地よいBGMを流すなど、美容室の空間を訪問先で演出し変革をもたらしたのが『trip salon un.』です。
2012年にオープンしたこちらの訪問美容専門サロンは、細やかな気づかいで信頼を築き、成長を続けています。そんな『trip salon un.』をつくり上げたのが、スタイリストの湯浅一也さん。今回は、訪問美容をしていてうれしい瞬間や今後の目標をうかがいました。
施設にいるお客さまがあきらめていること
――訪問美容をするなかで気づいたことを教えてください。
「施設さまに入っている方は美容を一番先にあきらめてしまうということです。“お世話をしていただいているのに、きれいになりたいとは言えない”と。周りがそういう環境を作ってしまっている部分があります。でもご本人は、こういう服が欲しい、こういう髪型にしたいと思っている。それを聞き出すこと、諦めるまえに手を差し出すことが僕たちの仕事だと思います」
訪問美容は、お客さまが亡くなったら終わりではない
――訪問美容師にとって特別な瞬間はどんなときでしょうか?
「ずっと担当してきたお客さまを見送るときですね。訪問美容はお客さんが亡くなったら終わりではなく、亡くなった後、最後の最後まで責任を持ってきれいに髪型を整え、メイクを施します。そのときは、ご家族の方は寄り添って泣いていて“おばあちゃん、きれいになったね”と。その場に一緒にいると、訪問美容師にしかない特別な時間を過ごしていると感じますね」
新卒から訪問美容師を育てる
――今後の目標を教えてください
「新卒でスタッフを採用したいですね。美容師としての技術を学び、同時に営業などを学び働けば、3、4年で優秀な訪問美容師になるはずです。また、介護施設さまではシャンプーの質まで手が回らないところが多いのが現実なので、僕たちが低価格で、高品質なものを作って提供できればいいですね。そして全国の介護施設から『trip salon un.』の訪問美容がついているから安心できる、と言われる存在になりたいです」
髪型ひとつで気持ちは変わると語る湯浅さん。精神疾患で引きこもっていたお客さまが、カットしたことで外に出たこともあるといいます。これからの時代、ますます『trip salon un.』の活躍に注目が集まりそうです。
Profile
湯浅一也さん
株式会社un. 代表取締役 CEO
NPO法人 全国介護理美容福祉士教会認定《美容福祉師資格取得者》、きらめき認知症シスター
北海道札幌市出身。専門学校卒業後、2008年原宿の美容室の入社。確かな技術とやわらかな接客が支持され新人売上げ1位を獲得。2012年、櫻庭太とともに『trip salon un.』をオープン。
Salon Date
訪問美容『trip salon un. 』
住所:東京都港区南青山2丁目2番15号 ウィン青山1403
TEL:03-6869-9419 電話受付時間(平日 午前9:00〜午後18:00)
FAX:03-6893-3931
E-mail:info-un@c-b-un.com
http://c-b-un.com/
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