「衣・食・住・運動」と並ぶくらいフィットネスを身近にしたい 私の履歴書 Vol.8【クロスフィットトレーナーAYA】#2
導かれるように夢を追い、才能を磨いて天職に。生い立ちから今仕事に至るまでを伺う『私の履歴書』。今回は、クロスフィットトレーナーとして、テレビや雑誌でも活躍中のAYAさん。数多くの著名人の専属トレーナーも務めるその姿は、鍛えられたボディ、髪の毛は艶やかで、眼の奥には気持ちの強さと女性らしいしなやかさが感じられます。フィットネスを日本の文化のひとつにしたいと語る、AYAさんのクロスフィットに出合ったきっかけから今、そして未来の夢を伺いました。
クロスフィットトレーナーへ
体を変えるだけでなく、ライフスタイルを丸ごと変えてこそフィットネス
―「クロスフィット」とは、どこで出合ったんですか。
クロスフィットは当時、スポーツ用品ブランドReebokが持っているコンテンツのひとつだったんです。海外ではすでに広く知られていて、体がみるみるうちに変わっていくという人気のメソッドでした。でも日本ではまだほとんど知られていなくて、人づてに「やってみないか」とお声かけいただきました。どんなものだろうと思って動画を調べてみたら、筋肉モリモリの女性がすごいバーベルをあげているじゃないですか。こんなのできるわけがないと思いましたね。
―でも、やってみようと思った。何かきっかけがあったのでしょうか。
フィットネスインストラクターに対しての、自分のアプローチに少しマンネリを感じていたんです。だから頭をリフレッシュする意味も兼ねてはじめてみました。すると最初はできなかったことが、どんどんできるようになって、その楽しさに一気にのめり込みました。そこでクロスフィットの本場ロサンゼルスへ。トレーニング法などに刺激を受けると同時に、現地ではフィットネスウェアで街中を歩き、カフェでお茶している人が普通にいることに驚かされました。今の日本でそんなことしたら「何あの人」って感じで見られますよね。日本人もこんな風に運動するのが当たり前の文化に変わってほしいと強く思ったのを覚えています。
―クロスフィットをはじめて、何か変化はありましたか。
パフォーマンスを追いかけていけばいくほど、食事をちゃんとしないと体は変わらないしパフォーマンスがきちんと発揮できないことがわかってきます。炭水化物や糖質ばかりとっていたら次の日体が重くなって、すぐ呼吸があがり、自分が全然使い物にならない。だからといって、炭水化物を敬遠はしません。運動する人はエネルギーをより多く使うので、炭水化物をとらなければ倒れます。だから朝はとる。タンパク質は傷ついた筋肉を補修してくれるためにも必要だし、油も極端に抜くと乾燥して肌荒れなどを起こしてしまうので、良質なものを適度にとる。自分の体で試してみて、よいと思ったものをみなさんに伝えています。
―情報だけに左右されないということですね。
今は情報が溢れていて、私も調べたりしますが、内容だけで頭でっかちになるのはいけません。だから、必ず自分の体で試します。運動していると体が敏感なので、しっかり動けているかがすぐわかる。食事に関しては1年くらい試行錯誤して今のスタイルが築かれました。高強度な運動だからこそ、結果をすぐ体で感じられる。体と対話していくうちに、自然と食事が変わっていき、睡眠もしっかりとるようになる。クロスフィットによって、ライフスタイルが丸ごと変わっていったのです。これがフィットネスだ!と思いました。体を変えるだけでなく、ライフスタイルを丸ごと変えてこそフィットネス。そこからクロスフィットトレーナーになりました。
ライフスタイルを変えるフィットネス
「衣・食・住・運動」と並ぶくらいにフィットネスが当たり前になってほしい
―ライフスタイルの変化は意識的にも訪れましたか。
ワークアウトに向き合うときの姿勢が変わりました。私、今でもトレーニングしていて、辛いなとか、あと何分、何回も残っていると思ったりするんです。「AYAさんには、トレーニンングは朝飯前でしょ」なんて思われているけど、実は辛いし毎日きつい。でもそこでやめたところで、じゃあ人生の違うシチュエーションで辛いことが起きたとき、トレーニングやめるみたいに簡単に逃げていいのか、逃げられるのか、と考えるわけです。それは違いますよね。だから少し飛躍するようだけど、今はワークアウトで人生のトレーニングをさせてもらっているような気持ちで向き合っています。
―ストイックな姿勢、どこかで息抜きもしているのでしょうか。
トレーニングは月曜から金曜まで。土日は「チートデー」にしています。ケーキなど好きなものを食べたり、マッサージや美容院に行ったり、自分を甘やかしてリラックスさせてあげるんです。トレーニングは継続することが大事。ずっとONでいることは難しいので、少しゆるめる日を作ってあげると、また頑張ろうと頭が切り替わります。
―パーソナルトレーナーも数多くこなされていますが、長期のお休みはあるのですか。
1年に2回くらいは長めに休んで海外に行くと決めています。1回は必ず私のパワースポット、ロサンゼルスへ。最先端の現場に行って、自分をアップデートするのが目的です。新しいトレーニングなど、いつも何かしらの課題が待ち受けていて、日本に持ち帰って自分を鍛えて成長させ、まだ現地へ赴きます。するとロサンゼルスもアップデートしているから、またダメな自分も見えてくる。常に刺激をくれる場所です。
―トレーナーのお仕事をする上で、何か変化はありましたか。
人の限界を引き出せるようになりました。トレーニングって、ただ走って、体を動かして汗をかくものではなくて、いつでも自分史上最高の自分でいられるようにするためのものなんです。そのことを自分の体で感じたし、気持ちの面でも成長できた。だから訪れた人が常に成長できるような指導方法、成長した気持ちにさせられるような人間でありたいと思っています。
―今後の夢をお聞かせください。
フィットネスを文化に。それが永久の夢ですね。そんなすぐ簡単に変えられるものではないことはわかっています。ただ、ロサンゼルスのように「衣・食・住・運動」と並ぶくらい、フィットネスが当たり前になってほしい。クロスフィットの認知度もだいぶ上がりましたが、まだこれから。今後はもっと街や地方をまわって、みなさんと直に触れ合って指導し、運動とは何か、運動との向き合い方などもわかりやすく伝えていきたいです。
クロスフィットに出合い、本来のフィットネスのあり方が見えたAYAさん。鍛えられた筋肉と見事なプロポーションに目を奪われがちですが、話す姿はやさしく、包容力を感じました。フィットネスを日本の文化のひとつに、その日はいつか来ることでしょう。
取材・文/須永久美
撮影/千々岩友美
Salon Data
ReebokCrossFitHEART&BEAUT
住所:東京都港区西麻布3-13-3カスタリア広尾B1F
※ゴールドジム南青山東京店内に併設
TEL:03-5785-2365