「待機老人と介護難民は表現が異なるだけで、意味は同じだ」と思っている方が多いようですが、実は全く違うモノなのです。では、それぞれの意味について考えてみましょう。
「介護難民」:介護が必要な高齢者であるにもかかわらず、施設や病院、家庭でも介護を受けることができない人のこと。
「待機老人」:特養(特別養護老人ホーム)に入りたいけど入れない、順番待ち状態の高齢者のこと。
つまり、「介護難民」はまったく介護を受けることができていない人、「待機老人」は単に特養の順番待ちをしている人のことで、何らかの形で介護を受けている人も含まれているのです。こうして比べると、事の重大さは「介護難民」>「待機老人」と言えるでしょう。
しかし、この「待機老人」は2013年時点で52万人以上いると言われ、大変大きな問題であり、在宅介護などの受け皿整備も急がれています。
ところで、なぜ待機老人はこんなに多くなってしまうのでしょうか。
待機老人が順番待ちをしている特養(特別養護老人ホーム)は、社会福祉法人や地方自治体が運営する施設であり、入居者の負担が軽く、長く利用できるため、非常に人気で競争率が激しいのです。施設自体の数は希望者に対して圧倒的に少ないため、中には入居を希望してから数年待っている人もいるそうです。
「介護 2025年問題」でもご紹介したように、要介護者数は年々増加しています。しかし、それに併せて介護施設数も増加しているのです。では、要介護者数の増加に対して、介護施設はどの程度増加しているのかを見てみましょう。
まず、要介護(要支援)者数の推移を下の表であらわしてみました。
表からもわかるように、2006年から2009年までの間は増加に落ち着きを見せていますが、2010年からは再び増加率は上昇し、2013年の4月時点では564万人に達しています。要介護(要支援)者数は、この13年間で約2.59倍になっており、近年この増加ペースは更に加速すると言われています。厚生労働省では2025年には要介護(要支援)者は755万人に達すると推計しています。
では次に、高齢者向け住まい・施設定員数の推移を見ていきます。
グラフから、高齢者施設も要介護(要支援)者と同様、年々増えていっているのがわかります。待機老人が順番待ちをしている特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)も年々増加しており、介護老人保健施設や有料老人ホーム、認知症高齢者グループホームも順調に数を伸ばしています。
ここで勘違いしないでいただきたいのですが、例えば2011年時点でグラフを見た時に、「要介護(要支援)者数が508万人もいるのに、施設の定員(合計)は67万人だから、441万人も介護難民なの!?」と思うかもしれません。しかし、要介護(要支援)者の中には家族に介護をされている人や、ホームヘルパーを利用している方もいらっしゃるので、一概に「この人数が介護難民だ」と計算することはできないのです。
では、要介護(要支援)者の増加に対しての、高齢者施設の増加率は十分なのでしょうか。ここでは、要介護(要支援)者数に対する高齢者施設定員数の割合(施設定員/要介護者数)の推移をグラフにしたのでご覧ください。
割合が高いほど施設が充足していることです。2003年までは減少傾向にありましたが、それ以降はほとんど割合が変わっていません。現在も停滞時期であるとは言えますが、先にも述べたように、要介護者数は増加していくことが予想されます。
今後、再び減少していくのか、それとも国の政策等により増加していくのかが気になるところです。
2017/07/14
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