特別養護老人ホームと有料老人ホームの違いって何??


高齢者向け介護施設でよく聞く“特養(特別養護老人ホーム)”と“有料老人ホーム”ですが、「設備はどう違うの?」「入居するならどっちがいいの?」「結局、何が違うの?」という話をよく聞きます。そういった知識は、自分の老後や身内の介護施設選びの重要なポイントとなるので、知っておいた方が良いでしょう。
ここでは、特養と有料老人ホーム、それぞれのメリット・デメリットや特徴についてご紹介して参ります。

■施設数の違い

特養や有料老人ホーム以外にも高齢者住宅は存在します。まずは、それらの施設も含めた、いろんなタイプの施設数・居室数を一覧表にしてみましたのでご覧ください。

施設の種別 施設数 居室数
民間運営 有料老人ホーム 介護付有料老人ホーム 3,308 203,914
住宅型有料老人ホーム 5,100 143,466
健康型有料老人ホーム 16 611
その他 サ高住(サービス付き高齢者向け住宅) 4,555 146,544
認知症高齢者グループホーム 12,124 176,900
公営 介護保険施設 特養(特別養護老人ホーム) 7,865 516,000
老健(介護老人保険施設) 3,994 349,900
介護療養型医療施設 1,575 70,300
福祉施設 軽費老人ホーム 2,182 91,474
養護老人ホーム 953 65,113
出典:厚生労働省「高齢者向け住まいについて」

施設数ではグループホームが飛び抜けて多く、その次に有料老人ホームが続いています。しかし、居室数(定員)だけで比較すると、特養や老健などの公営の施設が多いのです。

<3つに分類される有料老人ホーム
上表にあるように有料老人ホームは「介護付有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3種類に分類され、厚生労働省によるとそれぞれの概要は以下の通りに定められています。

介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム 健康型有料老人ホーム
・介護等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設
・介護等が必要となっても、ホームが提供する介護サービスである「特定施設入居 者生活介護」を利用しながら、ホームでの生活を継続することが可能
・生活支援等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設
・介護が必要となった場合、入居者自身の選択により、地域の訪問介護等の介護 サービスを利用しながら、ホームでの生活を継続することが可能
・食事等のサービスが付いた高齢者向けの居住施設
・介護が必要となった場合には、契約を解除し退去しなければならない

■運営母体と費用の違い

特養は社会福祉法人や地方自治体が運営する公的な施設です。そのため、特養には多くの補助金が投入されており、利用料金は有料老人ホームと比べてかなり安くなる場合が多いです。社会的責務から、どちらかと言うと弱者救済という意味合いがあり、低所得者に対して月額利用料金の軽減措置もあります。
「公営だから信用もあるし、月々の利用料金も安い」という理由で、特養を探す高齢者ご家族が多いですが、希望したからと言ってすぐに入居できるわけではありません。常に入居希望者が殺到している状態であり、入居待ちが全国で40万人とも50万人とも言われ、入居まで5年以上かかるケースも珍しくありません。

それに対して、有料老人ホームは民間の企業が運営しています。そのため、利用料金は経営者が独自に決めることになるので、かなりのばらつきがあります。入居一時金として数千万円必要な施設もあれば、それと対照的に、最近では入居金額が無料の施設もあります。
低所得者に優しい特養とは違い、利用金額が高額であるため、入居待ちはほとんどありません。条件を満たして、お金さえあればすぐにでも入居できるのが有料老人ホームなのです。

施設種類 費用
介護付有料老人ホーム 中~高
住宅型有料老人ホーム 中~高
健康型有料老人ホーム
特別養護老人ホーム

■対象者の違い

入居の基準も、施設の種類によって異なります。介護状態によってどんな施設を利用できるかを表にまとめたものが下表です。

施設種類 自立 要支援 要介護
1 2 1 2 3 4 5
特養(特別養護老人ホーム) × × × × ×
介護付有料老人ホーム
住宅型有料老人ホーム
健康型有料老人ホーム × × × × × × ×
○入居可能 △状況による ×入居不可能

前項でも述べたように、有料老人ホームでは入居の基準も経営者が自分自身で設定することができるので、すべての施設で上記の通りというわけではありません。あくまでも一般的な条件としてご覧ください。

<特別養護老人ホーム>
特養では要介護度が3以上でないと入居することはできません。65歳以上で、常に介護が必要な状態の人、自宅での介護が困難な人が対象ですので、寝たきりや比較的重度の認知症など、緊急性の高い人が優先的に入居できます。

<有料老人ホーム>
有料老人ホームでは施設のタイプによって、対象者が異なります。
介護付有料老人ホームでは、主に要介護度の高い人を対象としており、要支援の方は利用できない可能性があります。また、自立している高齢者は入居を断られることが多いようですが、そもそも自立している人に介護が必要ないため、介護付に入居する必要はないでしょう。
それとは逆に、住宅型有料老人ホームでは、主に要介護度が軽度の方を対象としています。施設に生活支援のサービスがついていますが、入居者に更に大きな介護が必要になった場合は、訪問介護等のサービスを利用して入居を継続することができます。
健康型有料老人ホームは少し特殊で、自立している高齢者しか利用することができません。そのため、要支援・要介護認定を受けている人は利用できませんし、入居者に介護が必要になった場合は、退去する必要があります。

特養は一言で言うと、要介護度が高い人が利用する施設で、健康型以外の有料老人ホームは自立から要支援・要介護の方まで、幅広い方が入居できる施設と言えるでしょう。

■提供サービスの違い

サービスの内容も施設の種類によって異なります。

<特別養護老人ホーム>
特養では、食事介助や入浴介助、排泄介助などの日常生活を送るための支援を介護士から受けられます。その他、リハビリやレクリエーション、機能訓練などの介護サービスを受けることができます。
医療ケアに関しては、看護師の配置基準はあるものの夜勤配置体制が義務付けられているわけではありませんので、常に専門家による医療的対応が受けられるということではありません。

<介護付有料老人ホーム>
掃除や洗濯、食事、入浴、排泄などの日常生活における介護サービスを介護スタッフから提供されます。施設にもよりますが、24時間看護体制が整っている場合も多いです。その他、身体機能回復のためのリハビリなども充実していますが、将棋やカラオケなど、入居者で行うレクリエーションも充実しています。花見や小旅行などで外出することもあるので、どちらかと言うと楽しい雰囲気であると言えます。
医療面でも充実しており、胃瘻や気管切開などの医療ケアが必要な人に対しても処置できる体制が整っている場所もあります。また、医療機関と連携して、医療ケアを提供しているところもありますが、施設によって程度は異なるので、申込をする前に資料請求や直接見学をすることによって確認しておくべきでしょう。

<住宅型有料老人ホーム>
住宅型有料老人ホームでは、施設に介護スタッフが常駐しているわけではありません。そのため、介護サービスを受けたい入居者は訪問介護など、外部の介護サービス事業者と契約をする必要があります。施設内で提供されるサービスは、食事サービスと緊急時の対応程度です。レクリエーションに関しては介護型と同様で、サークル活動やカラオケなどのイベントを催している施設もあります。
医療面では、外部の医療機関との連携により、健康管理や医療ケアの提供もしているところもあります。こちらも介護型と同様で、申込前に詳細内容を確認しておきましょう。

<健康型有料老人ホーム>
健康型有料老人ホームに住んでいる人は介護の必要がなく、自立した生活を送れる高齢者のため、介護サービスは提供していません。提供されるサービスは食事ぐらいでしょう。
医療面でも同様で、日常的に医療ケアが必要になった時点で退居しなくてはいけません。そのため、医療サービスの提供もないものと考えておきましょう。
しかし、介護が必要のない健康な人のための施設ということで、レクリエーションや行事に関しては充実しているところが多いようです。カラオケや麻雀などの施設以外にも花見や紅葉狩りなど、外出する行事もかなり充実している施設が多いようです。

■設備の違い

<特別養護老人ホーム>
特養は共同生活を重点的に考えられた施設です。キッチンや浴室、トイレなどの設備はありますが共用設備です。居室にそれらの設備はありません。

<介護付有料老人ホーム>
基本的には全館バリアフリーで手すりもあるので、要介護度が高い人にも生活しやすい設備が整っていると言えます。施設によっては居室内に浴室やトイレがある施設や、寝たきりなどの重度の方でも入浴できる機器が完備されている施設もあり、介護者や利用者のご家族にとっても安心できる設備が整っています。

<住宅型有料老人ホーム>
住宅型有料老人ホームの設備は、施設によって大きく異なります。介護付では多く見られるバリアフリーや手すり、入浴用の機器の有無も施設によって異なるので、確認が必要です。介護や補助的な設備以外にも、談話スペースやカラオケルームやマージャン卓など、入居者が楽しめる設備が設置されている施設もあります。

<健康型有料老人ホーム>
バリアフリーになっている施設は多いようですが、介護に関する特別な設備には期待しない方が良いでしょう。しかし、トレーニングルームや健康維持や体力アップを促す施設は充実している施設が多いようです。

■違いの一覧

ここまでまとめてきた特養と有料老人ホームの違い、その他の違いも併せて表にまとめてみました。

有料老人ホーム
(介護付・住宅型・健康型)
特別養護老人ホーム
目的 ・食事の提供
・介護の提供
・洗濯、掃除など家事の提供
・健康管理
上記のいずれかのサービスを行う。
要介護度3以上の高齢者に対して、入浴・排泄・食事の介助、日常生活の世話、機能訓練、健康管理、医療ケアなどのサービスを行う。
運営主体 営利法人・医療法人・社会福祉法人 社会福祉法人・地方自治体
対象者 概ね65歳以上
自立・要介護など、施設により異なる
65歳以上
要介護3以上
入居一時金 0円~数千万円 0円
月額利用料 15万円~(上限なし) 5万円~17万円
介護保険 介護付:特定施設入居者生活介護
住宅型:居宅サービス
施設サービス
医療ケア クリニック併設や看護師24時間常駐の施設もある 医療サービスは健康管理が中心で、医療ケアが十分ではない施設もある
居室(部屋) 原則13㎡以上 原則10.65㎡以上

■よくある質問・相談

ここでは、リジョブに寄せられているご意見の中から、「特別養護老人ホーム」「有料老人ホーム」に関するよくあるご質問・ご相談に回答していきます。

Q1.特養より民間の老人ホームの方が、スタッフや介護の質が良いと聞いたことがあります。実際はどうなのですか?

A1.そういった話を聞いたことはありますが、逆に「特養の方が丁寧だった」とか「特養でも有料でも大差がない」などという意見も聞いたことがあります。「特養」や「有料老人ホーム」という括りで判断せずに、利用しようと考えている施設を実際に見学に行って確認するのが良いと思います。

Q2.「介護付き有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」とでは、やはり介護が付いている分、「介護付き有料老人ホーム」の利用料の方が高いのですか?

A2.「介護付」の介護には介護保険が適用されるので、金額的にはあまり変わりません。「住宅型」では訪問介護を頼んだりするため、トータルで見ると「住宅型」の方が高くなると言われています。

■まとめ

特養は比較的低額で利用できる施設ですが、重度の方がメインであることや入居待ちの方が多数いらっしゃるので、すぐに入居することはかなり難しいでしょう。

一方、有料老人ホームは希望すればすぐにでも入居できる他、機能回復や医療面に強く、レクリエーションが豊富で食事が美味しいなど、メリットが多い反面、入居一時金や月額利用料が高いというデメリットもあります。
特養にしようか有料老人ホームにしようかと迷っている方はたくさんいらっしゃいますが、お金があり余って仕方ない方は、迷わず有料老人ホームを選ぶべきでしょう。しかし、そうではない方は、まず、それぞれの見学に行って実際に自分自身の目で確認することをオススメします。

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