<アベノミクス第二弾>新三本の矢に「介護離職ゼロ」

介護付き有料老人ホームの高齢者虐待事件を始め、高齢者施設での虐待がいろんなメディアによって報じられています。年々、このような高齢者虐待事件が増えているように感じてしまいますが、実際どうなのでしょうか。


高齢者虐待問題

2006年の「高齢者虐待防止法」施行から8年目に突入した2013(平成25)年度、厚生労働省では、養介護施設従事者等による高齢者虐待と認められた件数は221件とし、前年度と比べて66件の増加としました。

高齢者虐待

虐待件数、相談・通報件数共に、年々増加傾向にあります。もちろん虐待件数が増えたことは問題ではありますが、相談や通報が容易な社会になってきたことは良い点と言えるかもしれません。

高齢者虐待

<虐待の発生要因>
虐待の発生要因としては「教育・知識・介護技術等に関する問題」が128件(66.3%)で最も多く、次いで 「職員のストレスや感情コントロールの問題」が51 件(26.4%)、「虐待を助長する組織、風土や職員間の関係性の悪さ」が25 件(13.0%)でした。 (市町村の任意・自由記載・複数回答を厚生労働省が集計)

高齢者虐待

<虐待があった施設の種別>
虐待があった施設は「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」が69件(31.2%)で最も多く、次いで「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」が34件(15.4%)、「介護老人保健施設」が26件(11.8%)、「有料老人ホーム」が26件(11.8%)でした。

高齢者虐待

<虐待を受けた人の状況>
虐待を受けた人の状況を年齢別に見ると、総数402人のうち、90歳以上が94人(24.2%)、85~89歳が93人(23.9%)、80~84歳が104人(26.7%)であり、年齢による影響はほとんどないと言える結果となりました。しかし、男女別で見ると女性が290人で72.1%を占め、女性の方が虐待の被害に合いやすいという結果が出ています。

高齢者虐待

<虐待をした人の状況>
2013年度、虐待をしたと判断された人の総数は282人であり、50~59歳が49人(20.9%)、40~49歳が50人(21.4%)、30~39歳が47人(20.1%)、29歳以下が62人(26.5%)で、不明が11.1%でした。30歳を越えると、年代による違いは見られませんが、30歳未満の虐待者の割合は比較的高いようです。
虐待者の性別は、不明者を除くと男性が141人(51.8%)、女性が131人(48.2%)でした。この結果だけ見ると、男女による差はほとんどないように思えますが、介護従事者全体の男女比率は男性が21.4%、女性が78.6%であることを踏まえて計算すると、男性の3.6%、女性の0.9%が虐待者であり、男性虐待者の割合が格段に高いことがわかります。

統計からは、「若い男性ほど虐待してしまう傾向にある」という結果が出ました。確かに注目すべきデータのひとつではあります。もちろん虐待自体は犯罪であり、許されるべきことではありません。ただ、虐待者には全く同情の余地がないかと言われると、そうではないのも事実です。

過去の調査によると、現職の介護職員に「利用者に虐待をしようとしてしまったことはありますか?」という質問をした結果、実に半数以上の人が「ある」と答えたそうです。
※もちろん、実際に虐待をしてはいません。

何度も言いますが、何があろうと虐待は決して正当化されるものではありません。しかし、半数以上が「ある」と答えた結果を見ると、一概に「介護士が悪い」とは言えないようです。介護従事者が自分の仕事にもっと自信を持って働けるように、労働者を守る仕組みなど、労働環境の改善が国政に求められるのではないでしょうか。



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9月24日、安倍晋三内閣総理大臣は、アベノミクス第二弾として「新三本の矢」の打ち出しを表明しました。


アベノミクス3本の矢

「新三本の矢」とは、
1.経済強化(国内総生産:GDP 600兆円達成)
2.子育て支援の拡充
3.社会保障改革

この中でも介護問題に大きく関わるものが、「社会保障改革」です。
安倍総理は「仕事と介護の両立は大きな課題であり、介護離職ゼロという明確な旗を掲げたい」という考えを示しました。

2013年度の段階で特養(特別養護老人ホーム)の入所待機者は全国に約52万人います。今後、特養を増やすことにより、介護施設を使用せず自宅で待機している「要介護3」以上の約15万人を2020年代初めまでにゼロにするというのですから驚きです。

安倍総理は「介護施設の整備、介護人材の育成を進め、在宅介護の負担を軽減する。仕事と介護の両立ができる社会づくりを本格的にスタートさせたい」とし、現在年間10万人以上いる介護離職者がゼロになる社会を目指すとのことです。

確かに、団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ)が今後、親の介護のために仕事を辞めざるを得ない状況の打破は緊急の課題です。しかし、年間10万人以上いる介護離職者をゼロにすることは簡単ではありません。

事実、要介護4の母親を持つHさんは、特養を希望して3年経った今でも、役所からは「特養の可能性はゼロでしょう」と言われるそうです。

安倍総理が目標実現のために掲げた施策の「施設整備」。確かに特養の定員は今後10年間で20万人増え、74万人分になると言われています。

しかし、今後団塊の世代の介護需要が大きくなるに従って、施設整備のための財源確保が大きな問題となってくることが予想されます。

財源確保のために介護保険の自己負担額が3割に増えたり、介護保険料自体が増えたりしてしまっては本末転倒ですからね。



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