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介護・看護・リハビリ 2021-09-06

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.42】キレる利用者のへ対応がストレス…。どうしたら抜け出せる!?

新聞やテレビ等でも取り上げられる機会が増えた「キレる高齢者」。高齢化の一途をたどる日本の介護の現場でも、他人ごとではないですよね。今回は、介護職なら知っておきたい「怒り」への対処法を取り上げます。

高齢者がキレやすいのはなぜ? メカニズムと上手な付き合い方を知れば、介護職のストレスはぐっと減る!

年齢を重ねるとともに「丸くなった」と言われ慕われるようになる人がいる一方で、「頑固になった」「怒りっぽくなった」と言われたり、ひどい時は「暴走老人」と非難されたりする高齢者がいます。介護の現場では、利用者はもちろんですが、そのご家族までもがご高齢のケースも。

介護職の立場では、たとえ相手の怒りが理不尽なものだったとしてもプロとして冷静かつ適切な対応が求められます。「キレる高齢者」を避けては通れないお仕事だからこそ、イライラやストレスをコントロールする術を身につけておくことは、笑顔で仕事できる時間を増やすポイントです。

今回は、そのメカニズムと対応策についてご紹介します。

お話を伺ったのは…

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

 

メカニズム1:高齢者がキレやすい理由を知っておこう

高齢者がキレやすくなるメカニズムは、脳科学の研究で解明されています。脳内には、ものごとを判断して感情をコントロールする部分(前頭前野)があります。この前頭前野は、老化によって60歳を過ぎるころから収縮を始めます。この収縮が前頭前野の機能低下を招き、その結果、感情の抑制ができなくなり、キレる言動が増えてくるのです。

キレた言動が本人の意思とは無関係の老化によるものだというメカニズムを知っておくだけでも、心構えが変わりますね。

メカニズム2:高齢者の「怒り」には「SOS」が隠れている

「怒ること」=「悪いこと」と捉えられがちですが、「怒り」も人間に備わった自然な感情のひとつ。「怒り」は、大切にしている何かを守るという役割の防衛感情なのです。怒りの感情と上手に付き合うためのアンガーマネジメントでは、「怒り」は氷山の一角で、その下には怒りの背景となる様々な感情が隠れていると考えます。

つまり、大切なものが脅かされている不安や苦しみ、辛さ、虚しさ、寂しさなどのネガティブ感情を抱えているのに、その本当の気持ちに気づいてもらえないことへの苛立ちが「怒り」の根本にあるということ。「キレる利用者」の見方を、「自分を困らせる人」ではなく、「自分の支援を求めている人」へと発想を転換させると、何に対してアプローチすればよいのかが見えるようになりますよ。

介護職がキレる利用者と上手く付き合うための6つのルール

「怒り」を含んだ言葉や態度は、信頼や人間関係を壊す威力を持っています。向けられた「怒り」をそのまま受け止めていては、イライラやストレスで介護の仕事は辛くなってしまうでしょう。そうならないためのルールを6つご紹介します。少しずつでも取り入れてみてください。

【ルール1】言葉では寄り添う。が、感情は距離を置く

「高齢になれば仕方がないこと」だと感情面で割り切って、気持ちの上での距離をおけば、無用なトラブルは避けられます。その上で、「そうね」と相槌をうったり、「一緒に○○しましょう」などと寄り添ったりすると、「怒り」の根っこにアプローチしやすくなります。

【ルール2】相手を変えようと思わない。否定しない

高齢者の価値観や信念は長年かけて育んできたものです。加齢によって頑固さが増しているなら尚更、簡単には変えることはできません。年長者や上下関係を大切にする文化の中で形成されたプライドもあるでしょう。そんな人に対しては、できる限りの尊敬の念を示しながら接するのがポイントです。

【ルール3】お願い口調でゆっくりと話す

高齢者の聴力には、高い音が聞こえにくい、小さい音が聞こえにくい、大きい音はうるさく感じる、早口の声は分かりにくい、音がほやける・割れる・歪む、といった特徴が出てきます。聞き取りづらい話し方は、トラブルの元です。

【ルール4】反射的には言い返さない

怒りのピークは長くても6秒だと言われています。相手の怒りも、それを受けての自分のイラ立ちも、6秒置けばピークは過ぎます。高齢者の記憶は、嫌なことだけはずっと残るという特性もあるので、反射的に感情的な言葉を返すのはNGです。

【ルール5】責め言葉、強い表現、程度言葉は使わない

「なんで?」「どうして?」「なぜ?」といった責め言葉、「いつも」「絶対」「必ず」といった強い表現、「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」といった程度言葉は、投げかけられた側に「責められている」と受け取られ、反発心を生んでしまいます。相手を認める言葉やポジティブな声かけをすると、相手の受け取り方も変わってきます。

【ルール6】過去のことは持ち出さない

「この前も○○でしたね」などと過去を引き合いに出されると、言われた側は自分のやり方を否定されたと感じます。自分が生きてきた時代や過去の出来事を自分以外の誰かに否定されたり、非難されたりするのは、高齢者にとっては最も辛いこと。怒りを増幅しかねないのでやめましょう。

監修・中浜さんの「実際にこんなことありました!」

私が特別養護老人ホームの現場で働いていた時も、怒りやすい利用者さんがいらっしゃいました。仮にAさんとしますね。

Aさんは、機嫌が悪くない時はとても優しい方でした。いつも怒っているというわけではないので、普段は楽しくお話を聴いたりしていましたよ。

ですが、どうしてもAさんのリズムによっては感情の波があるようでした。午前中は…とか、夕暮れ時は…のように、怒る時間帯が決まっているわけではなくその日その日で違うので、機嫌が悪い時は距離を置いたり、そっとしておくようにしていました。

今回のテーマになっている「キレる高齢者」との関わり方で私が意識していたのは、「キレ」た言動はその人本来の性格ではなく、病気などの理由で感情のコントロールが難しくなってしまっている可能性があるということです。誰よりも困っているのは本人自身かもしれないんです。そう考えると言動にカッとなることも抑えられると思いませんか? 介護職にとって大事なのは、正面からぶつかる事よりも、しっかりフォローする意識で関わることだと思います。

文:細川光恵
参考:『家庭・介護・介護で実力発揮の「アンガーマネジメント」 高齢者に「キレない」技術』小学館

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