【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.26】利用者の家族がささいなことで文句を言ってくる…。対処法は?
介護技術だけでは乗り越えられないことも多い介護職。利用者・入居者とのコミュニケーションだけでなく、そのご家族とのやり取りに悩まされることもあるのでは? 介護現場で起こりがちな困りごとへの対処法をご紹介する当企画の今回は、そんなご家族への対処法のひとつを取り上げます。
クレーマーのようなご家族からの苦情。こじらせずに対応するコツは?
老人ホームに暮らすWさん。ある日、自分で買った果物を食べすぎてお腹を壊してしまいました。するとWさんのご家族から、「ちょっと! うちの母がお腹壊したらしいじゃない! 衛生管理がなってないんじゃないの!?」と、すごい剣幕で連絡が…。
Wさん自身が「果物がおいしくて食べすぎちゃって。」と話していたので、そのことを伝えましたが、Wさんのご家族はさらにヒートアップする始末。実はこのWさんのご家族、これまでもちょっとしたことで何度も苦情を訴えてきていて、クレーマーのようで困っています。
自分のストレスのはけ口にしているかのような苦情には、介護職としてはどう対応するのがよいのでしょうか。ポイントをおさえながら見ていきましょう。
ポイント1:こちらの主張は控える
クレーマーのように頻繁に苦情を訴えてくるケースでは、誤解や言いがかりもあるでしょう。こういった場合、誤解を解こう、正確にはこうだ、とつい主張や反論をしたくなってしまいますよね。ですが、ここでこちらの主張をするのは、火に油を注ぐようなもの。ヒートアップ回避のためにも、まずはぐっと飲み込みましょう。
ポイント2:「大げさな対応」をしてみる
あまりに低姿勢に出られると、「こんなに謝罪している人を責めるほど自分は悪い人間ではない」という抵抗感が生まれるのが人間の心理です。そこで、言いがかりのような苦情には、大げさなくらいの低姿勢で対応してみましょう。直角になるくらい深々と頭を下げたまま、「もーしわけございませんでしたっ!! 大切なお母さまに苦しい思いをさせてしまい、とても反省しております! ご自分で買って食べた果物が原因だとおっしゃっていましたが、調理スタッフ全員にこの件を共有し、徹底消毒などの再発防止策を徹底をしてまいります。本当に申し訳ありませんでした!」くらい大げさに対応してみましょう。
クレーマー的な苦情を言う人にやってはいけない2つのこと
1.反論する
2.正論をぶつける
頭に血が上っている状態の人に反論や正論をぶつけても、その人は自分の訴えを否定されたように感じてしまい、余計にカッとなってしまうでしょう。なので、臨戦態勢の相手には応戦はせず、まずは「聴くこと」。相手の言い分をしっかりと受け止めましょう。そうすることで、その後の「大げさに低姿勢な対応」がしっかりと戦意喪失へつながっていくはずです。ただし、「低姿勢」であっても勢いばかりの適当な内容であれば、「いい加減に対応された!」と逆効果です。誠意は忘れないようにしましょう。
文:細川光恵
参考:「相手が求めていることを聴き取れますか? 介護の聴き方タブー集」誠文堂新光社
監修
中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役
1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。