【福祉現場のコロナ対策、どうしてますか?vol.9】新人スタッフも実践!気持ちを「言葉」で表してコミュニケーションを円滑に#1
毎回、福祉現場で働く人をゲストに迎え、コロナ禍で求められる感染対策や働き方をインタビューしている連載企画。リアルな現場の声をヒントに、未曾有の事態を切り抜ける糸口を探ります。
今回お話をうかがったのは、リハビリ型デイサービスを行う「リハビリデイサービス まんぞく」の相談員・金木夏実さん。2021年の春に大学を卒業し、コロナ禍真っ只中に新卒社員として入社されました。前編では、そんな金木さんが〈withコロナ〉で直面した悩みや不安、そこから導き出した解決方法を教えていただきます。
お話をうかがったのは…
リハビリデイサービス まんぞく
金木夏実さん
子どものころ、祖父がデイサービスを利用していたことから、福祉サービスに興味を持つ。福祉を学べる大学に進学し、2021年3月に卒業。4月から相談員として「リハビリデイサービス まんぞく」に入社。「利用者様に誠心誠意向き合い、いい関係性を築いていきたい」という想いで、日々仕事に向き合っている。
相手の表情が見えない、自分の表情が伝わらない…
入社初日にぶつかった「マスク」の壁
――金木さんは、コロナ禍真っ只中に入社されたんですね。入社直後、大変だったこと、困ったことはありますか?
学生時代に実習で現場に行ったことがありましたが、それはまだコロナが流行する前。大学で学んでいたのもコロナ前の情報です。初めての就職で少なからず不安があるなか、さらに「コロナ」という問題も出てきて、心配だらけでした。
働き始めて困ったのが、マスクで利用者様の表情が見えないこと。まだきちんと関係性が築けていないなか、お顔が見えず、距離の取り方がわからず、苦労しました。声のトーンや話し方から、必死で相手の気持ちを読み取っていました。
――たしかに、マスクをしていると怒っているのか喜んでいるのかもわからないですよね。どのように解決しましたか?
まずは、私の気持ちを具体的な言葉でしっかり伝えるようにしました。マスクで表情が見えないのは私も同じなので、利用者様に少しでも安心して会話してもらいたいと思ったからです。そして質問する時は、答えを言葉にしやすいよう、質問の仕方に気をつけました。
入社したばかりで、利用者様とのお付き合いもまだまだ短いですが、小さな変化も見逃さないよう注意しています。少しでも早くいい関係を築けるように、これからもがんばりたいです。
換気や消毒はもちろん、スタッフ同士のコミュニケーションも大切
――「リハビリデイサービス まんぞく」で行っているコロナ対策を教えてください。
当たり前ですが、換気や消毒の徹底です。ここは半日型でリハビリを行うデイサービスなので、午前と午後に分かれてそれぞれ14名の利用者様がいらっしゃいます。換気はエアコンをつけていても常に行うようにしていて、消毒は利用者様が入れ替わるタイミングで、スタッフ総出で行います。
――みなさん協力し合って乗り越えているんですね。
そうですね。「〇〇の掃除、終わったよ」「〇〇の掃除、誰かやった?」とみんなで声を掛け合ってカバーしています。コミュニケーションを大切にしなくてはいけないのは、利用者様に対してだけでなく、スタッフ同士も同じですね。
「リハビリ」という、スタッフと利用者様の「密」が避けられない仕事だからこそ、自分の体調管理にもすごく気を遣っています。常にみなさんが安心して利用できる場所にしていきたいです。
コロナ禍で進むデジタル化。効率よく業務が行えるように
――換気や消毒もそうですが、コロナ禍で今まで以上に業務が増えているのではないですか?
はい、先輩スタッフからもそのような声を聞くことがあります。その分、効率よく作業を進めるためにデジタル化が進みました。ここでは、毎月体重測定などを行い利用者様の身体データをとったり、ご家族様と連絡帳のやりとりをしたりしているのですが、これらをタブレットなどで記入&閲覧できるようになったんです。気になることがあればすぐ確認できるので、小さな変化にも気づけるようになりました。
――なるほど。大変な時代ですが、新しいシステムを取り入れるきっかけになったという一面もあるんですね。
そう思います。ここには15名のスタッフがいて、約100名の利用者様がいらっしゃいます。デジタル化が進むことで業務が効率化され、利用者様一人一人と向き合う時間が増えればいいなと思います。
新人スタッフも実践!
「リハビリデイサービス まんぞく」が行うコロナ対策
・マスクで見えない表情は、具体的な言葉で伝える
・消毒や換気を徹底し、安心して利用できる場所に
・利用者様の身体データや連絡帳をデジタル化してスムーズに
未曾有の事態のなか、手探りでそれぞれの解決方法を探しているのはみな同じ。ですが、その時代を新卒社員という立場で迎えるのは、より大変なことだと思います。しかし、金木さんのインタビューからは前向きで、力強いパワーを感じました。なかでも「利用者様に安心してお話ししてもらうために、まずは自分の気持ちを具体的な言葉で伝えている」というお話が印象的で、利用者様に寄り添い、誠心誠意向き合っている金木さんの想いが伝わってきました。
後編では、〈afterコロナ〉に向けて求められる課題と、そのために今できることを伺います。
取材・文/児玉知子
Information
リハビリデイサービス まんぞく
住所:東京都豊島区池袋本町3-28-6
電話:03-5904-8600