ヨガ&トレーニング&セラピーの多岐に渡る知識で成功!【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.46 ヨガ講師/パーソナルトレーナー木村 匠さん #1】
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
今回ご登場いただくのは、ヨガ講師/パーソナルトレーナーとして活動している木村 匠さん。木村さんはサラリーマン時代に体調を崩し、リハビリとして始めたヨガがいつの間にかお仕事になっていったそう。
現在では全米ヨガアライアンスに加え、パーソナルトレーナー、タイ古式マッサージセラピストの資格を取得し、さまざまなニーズに対応する指導を武器に活動されています。
前編となる今回は、木村さんが幅広い資格を取得した経緯と、現在の働き方についてお聞きします。
お話を伺ったのは…
ヨガ講師/パーソナルトレーナー 木村 匠さん
全米ヨガアライアンスE-RYT200、YACEP認定講師。NESTA認定パーソナルフィットネストレーナーやタイ古式マッサージセラピストなど、さまざまな資格を持つ。解剖学や運動力学など幅広い知識を元にしたレッスンと講義で、初心者から現役インストラクターまで幅広く指導を行う。
Instagram:@takumichris
体調不良からヨガをスタート。知識を深めるなか、いつの間にか講師に
——木村さんはご自身が体調を崩されたことでヨガを始められたそうです。
なぜ最初にヨガを選ばれたんですか?
サラリーマン時代に心臓と三半規管を悪くして半年ほど寝たきりになりました。その後、仕事に復帰しても、何度も倒れて続けられなくなってしまって…。
杖をついてやっと動けるようになったころ、もともと運動が好きだったこともあり体を動かしたくなりました。お医者さんにできることがないか聞いたところ、「ヨガとか太極拳とかがいいんじゃない」と言われたんです。
たぶん今思うと適当な答えだったと思うんですが(笑)。それが頭に残っていたので、たまたま家の近くで見つけたヨガスタジオの体験レッスンを受けてみたんです。
それまで体を動かしても汗がかけなかったんですが、ヨガをしたら汗がかけたんですよね。これなら僕にもできそうだなと思いました。それから、「自分で自分の体をコントロールしたい」という気持ちでヨガを続けていくことにしました。
——お仕事にしようと思ったきっかけは?
最初は仕事にするか半々という感じのまま、とりあえず勉強の一環として全米ヨガアライアンスを取得することにしました。そして卒業する直前に、たまたまレッスンの枠が空いたところに声をかけていただいて、バイトをしながらレッスンをするようになったんです。そのうち徐々にレッスンが増えて、いつの間にかヨガがメインになっていた感じで…。
仕事にする覚悟が決まったのは、講師をすることになった時かもしれません。全米ヨガアライアンスのリードティーチャーになるにあたり、ヨガの勉強だけでは足りないと感じて、もっと勉強しようと思ったんです。
その勉強の流れのなかで、パーソナルトレーナーやセラピストの資格も取得しました。
筋肉へのアプローチの知識を体系的に学んだことが強みに
——なぜそれらの資格を取得しようと思ったんですか?
資格を取りたかったというよりは、目の前の人を何とかしたいという気持ちがあって、いろいろ勉強していったところに資格がついてきた、という感じです。
解剖学を学ぶために専門学校に通うのは大変なので、民間で調べたところNESTAを知り、体系的に学べると感じて勉強した結果、トレーナーの資格を取得しました。セラピストの資格は、NESTAの先生がタイ古式マッサージのセラピストでもあったので、そういったつながりも大きいです。
ヨガ、トレーナー、セラピスト。この3つを学ばないと、人の体は見られない、コンディショニングはできないと僕は思います。
——どれも人の健康に関わる仕事ですが、それぞれすることが違いますね。
この3つはすべて筋肉に対してアプローチする仕事で、延長線上にあります。筋肉の起始から停止を伸ばすのがストレッチ、つまりヨガの動きです。そして起始と停止を近づける収縮がトレーニング、圧迫していくのがセラピストの行う施術。これらが全部できないと、本当の意味で筋肉にアプローチはできないんです。
体系的な知識をつけてから、仕事の幅も広がりました。例えばトレーナーやセラピスト業界で一般的なテクニックも、ヨガ業界に持っていくと新鮮に感じられる。逆もまた然りなので、僕の強みになっていると思います。
この仕事を生業としていくためには自分で主催することが大切
——ヘルスケアの仕事に就く前後でギャップは感じましたか?
仕事にする前は、やっぱり人助け的なイメージが強かったですね。ヨガインストラクターになって感じたのは、なかなか稼げないということです。
どうしても時間の切り売りになりますし、よくて時給3,000円。毎日できるわけじゃないし、1日のうち数時間ですから。どこに目標を設定するかというのもありますが、ヨガインストラクターもセラピストも、それ1本で生計を立てていくのは難しいところがあります。
——解決策はあるんでしょうか?
この仕事で食べていくと決めたときに僕が「これしかないな」と思った方法は、すべて自分主催するという働き方。今でも契約しているヨガスタジオでレッスンしていますが、収入の柱になっているのは自分で主催している講義です。
僕の場合は技術を売っているというよりも、学んだ知識を売っている感じ。今はオンラインでいろいろできますからね。自分で講義を主催するようになって収入もかなり変わりました。
——そう考えると、コロナ以降のほうがやりやすいですか?
そうですね。とくにヨガ業界はコロナ以前からイベントなどでZOOMを活用することが多かったので、他よりもオンラインへの移行がスムーズだったと思います。
また移動が減った分、インプットの時間が増やせたのもありがたかったですね。僕の働き方の場合、できるだけ拘束時間を減らして、空いた時間でたくさん講義のネタ出しやテキスト制作がしたいんです。インプットの時間が増えれば、その分新しい講義が作れますから。
移動はインプットの時間。フリーは時間の有効活用が必須
——現在の働き方について教えてください。
フリーランスなので日によって働き方はバラバラです。技術的な指導は、ヨガのグループレッスンと、パーソナルセッションの2パターン。
パーソナルセッションでは、「僕の60分をあげるから、して欲しいことを言ってください」というスタイル。して欲しいことと必要なことが違う場合も多いので、そのあたりは指導内容で調整しながら求められていることに応えていきます。
これは移動が多い日のパターン。移動中は勉強や雑務の時間。電車内がオフィスと決めて、タブレットで講義を見たりSNSの投稿を作ったりしています。
勉強時間として月100時間をノルマにしているんです。だから1日3~4時間は勉強します。50時間は新しい講義を受けて、50時間は復習をする感じ。そのために移動時間も活用しています。
インストラクターになった当初は、アルバイトと掛け持ちをしていたという木村さん。現在では月収100万円を超えることもあるのだそう。収入が変わったのは、自分が主催する働き方になってからだと言います。「その方法も隠さず伝えている」という木村さんの講義に興味がわきました。次回、中編では、ヘルスケアの仕事をしていく上で必要な覚悟など、この業界を目指す方へのアドバイスをお聞きします。
取材・文/山本二季
撮影/米玉利朋子(G.P.FLAG)