管理栄養士国家試験の概要と受験資格を紹介|合格率はどれくらい?
管理栄養士とは国家資格のひとつです。病気や高齢で食事をとりづらい人はもちろん、健康な人に対しても専門的な知識や技術を使って、栄養指導や栄養管理をおこないます。
医療施設や老人福祉施設、介護保険施設、小・中学校や企業など、管理栄養士の職場は広い範囲に渡っており、需要の多い資格として人気を呼んでいます。
今回は、管理栄養士の国家試験の概要、および受験資格について詳しく見ていきましょう。
管理栄養士の国家試験とは?
管理栄養士の資格を得るための国家試験は、年に一回開催されています。ここでは第36回の管理栄養士国家試験について、具体的な内容を見ていきましょう。受験願書は各地方厚生局や都道府県庁、一部の保健所などの窓口か郵送、またはダウンロードで入手できます。
1. 試験期日・試験地
2022年は2月27日(日)に開催されます。試験は午前と午後に分かれており、午前9時40分から試験についての説明が始まります。9時30分までには試験場に到着して、着席しておきましょう。
2. 試験科目・出題方式|9科目200問
試験科目は全部で9科目あり、応用力試験も合わせるとトータルで200問となっています。出題基準は4年に一度改訂がおこなわれており、2020年の試験からは20問だった応用力試験の問題数が30問に増えました。
出題形式は、5つの選択肢から正しいものをひとつまたは2つ選ぶマークシート方式です。
ア. 社会・環境と健康
社会や環境が人間の健康をどのように左右し、規定しているのかについての理解度を問うことを目的としている科目です。健康の維持と増進を図るプログラムを実践するために必要とされる知識や技能が問われます。
イ. 人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
生活習慣病や栄養疾患、消化器疾患などといった栄養に関わる主要疾患の成因や病態、診断、治療などに対する理解度を見る科目です。人体と毒性物質や微生物との相互関係に関する知識も問われます。
ウ. 食べ物と健康
食品の各種成分をどのくらい理解しているか、衛生管理の方法をどのくらい把握しているかに関しての質問に答えなければなりません。食品の加工法や調理法、食品の歴史的変遷などについても、幅広い知識が必要です。
エ. 基礎栄養学
健康の保持と増進および疾病の予防と治療において、栄養が果たす役割に関しての質問が問われます。栄養学の歴史的背景や個々人のエネルギー代謝、ビタミン、サプリメントなどの摂取に関しても知識を深めておく必要があります。
オ. 応用栄養学
加齢や発育、妊娠などによって人体の構造や機能に変化が生じた際に、栄養状態も変化することを理解したうえで、栄養アセスメント(栄養状態の評価・判定)が適切にできるかどうかが問われます。ストレスや特殊環境下、あるいは運動・スポーツ時の栄養・代謝に関する出題も応用栄養学の範囲です。
カ. 栄養教育論
栄養教育のためのアセスメントおよびカリキュラムの立案と実施、モニタリング、さらには評価やフィードバックなどといった栄養マネジメントに関する質問が出題。栄養管理士が公衆栄養の場でほかの職種の人と連携し、栄養教育を実践できるかどうかに関しても問われます。
キ. 臨床栄養学
傷病者を対象にした栄養マネジメントにおける、実践的な能力を問う科目です。栄養ケアプランの作成や実施に関する知識が備わっているかはもちろん、栄養補給や栄養教育、そして食品と医薬品の相互作用について理解できているか確認する設問が用意されています。
ク. 公衆栄養学
集団の栄養問題とニーズを把握したうえで、公衆栄養プログラムを計画・実施・モニタリングするための知識と技能が備わっているかどうかが問われる科目です。また、栄養疫学的アセスメントへの理解を見るための質問も出題されます。
ケ. 給食経営管理論
栄養・食事管理の面で具体的に計画を立て、サービスをおこなうための知識と技能があるかどうかを問う科目です。管理栄養士としての給食の経営管理と品質管理の基本をきちんと理解しているかどうかが設問内容となっています。
3. 合格発表日
第36回管理栄養士国家試験の合格発表は、2022年3月25日(金)の午後2時。合格者には、厚生労働省から郵送で合格証書が郵送されるのと平行して、厚生労働省のwebサイトに合格者の試験地と受験番号が掲載されます。
国家試験の受験資格を取得するには? 主な2つのルートを紹介
管理栄養士の国家試験を受験するためには、一定の受験資格を有していなければなりません。大まかに分けると、管理栄養士養成施設で4年間学んで卒業する実務経験が不要のルート、実務経験が1〜3年以上必要なルートの2種類があります。
1. 実務経験不要ルート|管理栄養士養成施設で4年間学んで卒業
実務経験をしなくても管理栄養士国家試験を受けられるのは、管理栄養士養成施設で4年間学んで卒業したのち、栄養士の免許を受けた人です。栄養士になるためには、所定の養成施設を卒業後、都道府県知事の免許を受けるだけで、資格試験を受ける必要はありません。
2. 実務経験ルート|卒業後に実務経験が必要
管理栄養士養成施設で4年間学ばなくても、管理栄養士国家試験を受験する資格を得ることはできますが、この場合、実務経験が必要になってきます。
実務経験を必要とするルートでは、養成施設での勉強と実務経験を合わせて5年以上が必要です。栄養士養成施設で4年間学ぶよりも、やや遠回りということになります。
栄養士養成施設で2年間学ぶ+実務経験3年以上
4年制しかない管理栄養士施設と違い、栄養士養成施設には2年制・3年制・4年制の3種類があります。短期大学などといった2年制の栄養士養成施設で学んだ場合には、寄宿舎や学校、病院などの施設で3年以上実務経験を積まなければなりません。
栄養士養成施設で3年間学ぶ+実務経験2年以上
栄養士養成施設で3年間学んだ場合には、実務経験を2年以上積むことによって、管理栄養士国家試験の受験資格を取得できます。3年制の栄養士養成施設には短大や専門学校などがあります。
栄養士養成施設で4年間学ぶ+実務経験1年以上
4年制の栄養士養成施設としては、大学の「管理栄養士学科」や「健康栄養学科」「健康メディカル学部」、そして「地域教育文化学部の食環境デザインコース」などが挙げられます。4年間学んだ後は実務経験を1年以上積めば、国家試験の受験資格を取得できます。
実務経験として認められる施設|学校や病院など
実務経験として認められるのは、学校や病院などで、特定多数の人に継続的に食事を供給する施設などです。これ以外に食品の製造や加工、調理、販売をおこなう営業施設や、栄養に関する研究をおこなっている研究所、保健所なども実務経験として認められる施設に該当します。
実務経験を積める職場も探せる:https://relax-job.com/kaigo
国家試験の合格基準と合格率を紹介!
では、管理栄養士の合格率は一体どのぐらいなのでしょうか。ここでは、管理栄養士国家試験の合格基準と合格率について、第35回の国家試験の結果を参考に見ていきましょう。決してカンタンな試験ではありませんので、充分に勉強して備える必要があります。
合格基準は約6割
管理栄養士国家試験の合格基準は、6割です。配点は1問が1点で、総合が200点ですから、200×0.6=120で、120点以上取れば合格点ということになります。
管理栄養士養成課程を修了した新卒の人と比べると、既卒者の合格率がかなり低いのが大きな特徴です。
第35回の合格率は64.2%
管理栄養士国家試験の合格率は60%前後を推移しており、第35回の合格率は64.2%でした。過去5年間の合格率をたどってみると、第31回が54.6%、第32回が60.8%、第33回が60.4%、第34回が61.9%という結果が出ています。
学校区分別の合格率を紹介
管理栄養士国家試験の目立った傾向としては、管理栄養士養成講座新卒者の合格率が91.3%と平均よりもかなり高いことです。これに比べて管理栄養士養成講座既卒者の合格率は19.1%、栄養士養成講座の既卒者合格率は24.3%と低くなっています。
計画的に勉強して国家試験に臨もう!
管理栄養士国家試験の出題範囲は非常に広いため、まんべんなく時間をかけて勉強をする必要があります。闇雲に勉強を進めても効率が上がりませんので、計画を立ててから国家試験に臨むことが大切です。単なる暗記学習ではなくて、複合的な課題を思考力によって解決する習慣をつけるのが成功の鍵といえるでしょう。
引用元サイト
厚生労働省 管理栄養士国家試験
第36回管理栄養士国家試験の施行について
厚生労働省 管理栄養士国家試験
第36回管理栄養士国家試験の実施について
公益社団法人日本栄養士会
管理栄養士国家試験について
厚生労働省 第35回管理栄養士国家試験の結果について
厚生労働省 第32回管理栄養士国家試験の結果について