一度に2つの動作で脳を活性!認知症予防レク【介護レクリエーションvol.47】
現場で役立つレクリエーションのアイデアをご紹介する「介護レクリエーション」。今回は、一度に2つの動作を行うことで脳を活性するレクリエーションを、中級レクリエーション・インストラクターの大野孝徳さんに教えていただきます。
「今回ご紹介するレクリエーションは、『バトンリレー』と『しりとりボール投げ』。どちらも同時に異なる動作を行うゲームです」(大野さん)
『バトンリレー』とは、どんなゲームですか?
「足踏みを行いながらバトンリレーを行うゲームです。手と足で異なる動きを同時に行います」(大野さん)
では『しりとりボール投げ』は?
「しりとりを行いながらボールを投げ渡すゲームです。思考・発声と腕の動きを同時に行うため、効果的に脳を活性化することができます」(大野さん)
2つのレクリエーションによって期待できる、身体・精神面の効果は?
「手足の運動機能向上と脳の活性化、他者とのコミュニケーションの効果が期待でき、社会的孤立感の軽減を図ることもできます」(大野さん)
それでは早速、『バトンリレー』と『しりとりボール投げ』の遊び方をご紹介します。
バトンリレー
【対象者】足踏みができる方(上肢は不全でも可)
【レクの目的】足・手先の運動、脳の活性化、他者との交流
【人数】10人~(1チーム5人程度×2~4チーム)
【実施に好ましい場所】ホール
【必要な道具】バトン(チーム分)
【所要時間】5分~
【レクリエーションの内容】参加者がチームごとに一列に座り、「バトン渡し」と「足踏み」の動作を同時に行いながらバトンリレーをします。一度に2つの動作を行うことで参加者が混乱しないように、スタッフは数を一緒に数え、「バトンを渡しましょう」と適宜声掛けするなどサポートを行いましょう。
遊び方
1. 参加者を同じ人数(5人程度)で2チーム以上に分けます。参加者はチームごとに縦一列に座り、各チームの先頭がバトンを持ちます。
2. スタッフの「よーいスタート!」のかけ声で、先頭の参加者は足踏みを5回しながらバトンを後ろの人に渡します。足踏みをする際は、参加者に声に出して数を数えてもらいましょう。
3. 以降の人も同様にバトンを後ろへ渡していき、一番後ろの参加者にバトンが回ったら折り返して前にバトンを送っていきます。スタッフは「〇〇チームが折り返しました!」と実況中継を行うなどして場を盛り上げましょう。
4. 一番早く先頭の参加者へバトンが戻ったチームが勝ちとなります。
進め方のコツ
・バトンを渡す際に「はい!」と声を出すと、受け取る参加者がタイミングを掴みやすくなります。スタッフも一緒に声を出してサポートしましょう。
・ゲーム終了後は勝敗に関係なく全員の健闘をたたえ、参加者が気持ちよく終われるようにしましょう。
しりとりボール投げ
【対象者】しりとりのルールを理解できる方
【レクの目的】腕の運動、脳の活性化、他者との交流
【人数】2~5人
【実施に好ましい場所】ホール
【必要な道具】ゴムボール1個
【所要時間】15分
【レクリエーションの内容】参加者が輪になって座り、しりとりを行いながら隣の参加者へボールを投げ渡すゲームです。「しりとりを考える」、「ボールを投げる」の2つの行動を同時に行うため脳を活性化でき、認知症予防に最適です。
遊び方
1. 参加者全員が1~2mほどの間隔をあけて輪になって座ります。
2. 1番目の参加者がしりとりの最初の言葉を言うと同時に、ボールを2番目の参加者に投げ渡します。
3. 2番目の参加者はボールを受け取り、しりとりの続きを答えながら3番目の参加者へボールを投げ渡します。
4. 以降の人も同様に行い、ボールが一周したら反対回りを行います。ボールを落としたり、しりとりを間違えたりしたら負けです。負けた参加者は輪から外れ、最後まで残った人が勝者となります。
進め方のコツ
・参加者が焦ってボールを投げ、人にぶつけてしまうことがあります。「投げるときは優しくお願いします」と事前に伝えておきましょう。
・勝負がつかないときは「3秒以内にボールを投げる」など時間制限を設け、難易度をアップさせましょう。
今回ご紹介したレクリエーションは、一度に2つ以上のことを同時に行う「デュアルタスク(二重課題)」のゲームで、脳のさまざまな部分を活性化することができます。複数のことに意識を分散させる練習は、転倒予防などにも繋がります。ぜひ現場に取り入れてみてください。
イラスト:SMILES FACTORY
文:寺西香織(レ・キャトル)
教えてくれたのは…
大野 孝徳さん
合同会社A-assist代表、介護福祉士、介護予防指導士、中級レクリエーション・インストラクター。学生時代は子ども会集団指導者講師として岐阜県内でレクリエーション指導に従事。そこでの経験が評価され、介護業界に入職。介護職・相談員・管理職、在宅・施設両面での介護業務と、介護現場において幅広く活躍。2016年に独立し、A-assistを設立。訪問型介護予防体操教室やレクリエーションサポート活動を展開。現在も現場に入り介護福祉士として従事する傍ら、「え~(良い)アシスト」を提供するべく全国を対象に事業を展開している。