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介護・看護・リハビリ 2020-02-23

介護施設を知る!『サービス付き高齢者向け住宅』

介護施設や介護士の不足、超高齢社会により介護難民・待機老人問題が解消されない中、需要の高まりを見せているのが、民間運営による「サービス付き高齢者向け住宅」です。

ここではそんな「サービス付き高齢者向け住宅」を利用するにあたってのメリット・デメリット、入居基準や入居方法など、利用者が知りたい情報の他、サービス内容や求人についてのことなど、求職者にとっても知りたい情報をお知らせします。

『サービス付き高齢者向け住宅』ってどんな施設?

サービス付き高齢者向け住宅とは、高齢者向けの見守りサービスを充実させた賃貸住宅のことで、「サ高住(さこうじゅう)」と略されることもあります。

サービス付き高齢者向け住宅は自立、もしくは軽度の要支援・要介護状態の高齢者が入居の対象となっています。バリアフリー設計が義務付けられた居住空間で、日中常駐しているケアの専門家に見守られながら、安心して生活を送ることができるようになっています。部屋の規模や間取りはさまざまなので、夫婦でも一人でも入居が可能。国の施策を受けて、最近急増しているタイプの高齢者ホームです。

サービス付き高齢者向け住宅の特徴

<メリットとデメリット>
サービス付き高齢者向け住宅のメリット、デメリットについて説明します。

<サービス付き高齢者向け住宅のメリット>
「坂の上り下りがしんどくなった」「高層マンションは災害時に不安」といったような理由から、新たに引っ越しを検討する高齢者も少なくないでしょう。しかし、高齢者が賃貸物件を借りるのは意外と大変です。

サービス付き高齢者向け住宅は、普通の賃貸物件よりも借りやすい上に、「高齢者住まい法」によって事業者から急な退去を強制されるという制限もされています。さらにバリアフリー設計なので住みやすいという大きなメリットがあります。

また、最近サービス付き高齢者向け住宅は急増しているため、施設の選択肢が多いのもメリットと言えます。

<サービス付き高齢者向け住宅のデメリット>
サービス付き高齢者向け住宅だけなくその他の住宅型有料老人ホームなどにも言えることですが、入居対象者はあくまでも自立できる、もしくは自立に近い生活ができる高齢者なので、要介護度が上がったときは退去を余儀なくされることもあります。

そして、健康面でのサポートが確約されているわけではありません。サ高住には必ずしも医師や看護師が常駐しているわけではないので、病気になったりケガをしたりした場合には自分で病院を探すことも必要ですし、通院の付き添いに関しても契約内容次第となってしまうことは頭に置いておく必要があります。

また、安否確認サービスに関しても常にあるわけではなく、日中のみのサービスです。夜間の対応は、施設に職員が常駐している場合には、職員が安否の確認をしてくれますが、そうではない場合は、緊急通報システムにより、外部の警備会社などの協力会社が行う場合があります。
医師や看護師が常勤している他の介護施設と比較すると、少し不安な部分はあるでしょう。

サービス付き高齢者向け住宅への入居基準

サービス付き高齢者向け住宅の基本的な入居条件は、60歳以上の高齢者(要支援者・軽度の要介護者を含む)とその同居者であることです。同居者の居住が認められるのはサービス付き高齢者向け住宅の大きな特徴です。
これらに加えて「身の回りのことを自分でできる」「感染症になっていない」といった条件が施設によってあります。検討段階のタイミングで、しっかり確認しておきましょう。

サービス付き高齢者向け住宅の入居手続き

サービス付き高齢者向け住宅への入居を希望する際は、希望する施設に直接申し込みを行うこととなります。必要な書類や方法は施設によって異なりますが、以下のようなものが必要となることが多いです。

・入居申込書
・本人確認書類
・連帯保証人の本人確認書類
・収入/資産などの証明書類

サービス付き高齢者向け住宅は、一般的な不動産の契約と同じように連帯保証人が必要となるのが、有料老人ホームと異なる点です(有料老人ホームでは通常、身元保証人が必要です)。これらの書類を提出し、施設のスタッフとの面談を経て入居の可否が決定されることになります。

サービス付き高齢者向け住宅の設備

サービス付き高齢者向け住宅は一般的な賃貸物件に近い設計になっているので、台所、トイレ、洗面所、浴室、収納などはすべて自室に設置されていることが多いです。

共有スペースも用意されており、他の居住者たちと談話をしたり麻雀を楽しんだりすることも可能です。なおサービス付き高齢者向け住宅には、居宅介護支援事業所が併設されているケースも多く見られます。

1戸当たりの床面積は原則、25平方メートル以上と定められていますが、自室の他に十分な面積の共同生活室がある場合には18平方メートル以上でも良いとされています。また、サービス付き高齢者向け住宅はバリアフリー設計が義務付けられており、施設全体に床の段差がない、廊下幅が78センチ以上などの決まりがあり、高齢者にとって生活しやすい環境が整えられています。

サービス付き高齢者向け住宅で受けられるサービス

サービス付き高齢者向け住宅は、大がかりな介護サービスを必要としない高齢者が住む施設ですが、日中はケアの専門家が常駐しているので、困った時のサポートや生活に関する相談を気軽に行うことができます。施設によってはレクリエーションの一環として旅行やお花見、誕生日会のイベントも行われるので、他の居住者とのコミュニケーションも取りやすいです。

サービス付き高齢者向け住宅の推移と今後の予測

<サービス付き高齢者向け住宅が急増>
2011年11月以降、サービス付き高齢者向け住宅の登録数は勢いよく増加しています。その背景には、2011年10月に改正・施行された「高齢者住まい法」があります。それまでは特別養護老人ホームの待機者問題と同時に、有料老人ホームの高額な入居一時金や月額利用料により入居をためらう利用者が存在することが問題視されており、代替施設が望まれていました。

<サービス付き高齢者向け住宅の登場>
そこで登場したのがサービス付き高齢者向け住宅です。有料老人ホームと比較して低額で、入居一時金0円のところも多く、月額利用料15万円前後、介護サービスを外注することで利用状態の自由度を高めるなどの売りがあり、利用者の人気が高まったのです。

<急増の流れは今後も続く!?>
こういった背景には国の施策が関係しています。所得税、法人税に係る割増償却や固定資産税の減額、不動産取得税の軽減措置など税制の優遇、さらに新規開設の場合には1戸あたり最大100万円の補助金が下りるなど、民間企業の参入ハードルが低くなりました。

そのため下のグラフのように、サービス付き高齢者向け住宅の登録件数は増え続けています。そして、この増加傾向はこれからも続くものと考えられています。

サービス付き高齢者向け住宅は厚生労働省と国土交通省の共同管轄制度

<共同管轄の理由>
サービス付き高齢者向け住宅は、介護サービスなどの福祉施策を担う厚生労働省と、住宅整備などのインフラ施策を担う国土交通省の共同管轄事業です。

通常、介護サービスというのは厚生労働省の管轄によるものですが、この管轄に国土交通省が参画している理由としては、高齢者が安心して暮らせる住まいづくりが社会インフラとして大切な側面となっているからです。これは、高齢者の割合が過去最高の現在の状況によるものであり、高齢化に伴ったものなのです。

<国土交通省の任務>
国土交通省の任務は“国土の総合的かつ体系的な利用、開発、及び保全”であり、そのために住宅を含む建物や道路、都市計画などを担当しており、高齢者の暮らしにおいては、「住まい」という観点から施策を立案する立場にあります。

そして、サービス付き高齢者向け住宅における部屋の広さや設備などのハード面については国土交通省の考えに基づきます。例えば「トイレ付きで最低18平方メートル」という居室基準は国土交通省の基準であり、厚生労働省管轄の施設基準より広く、ワンルームマンション形態に近い状態となっています。

それに対して、厚生労働省の任務は介護サービスや安否確認、生活相談などのソフト面であり、高齢者にとって暮らしやすい状態にするために、厚生労働省と国土交通省の両省が共同で施策を実施しているのです。

サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームの違い

<サービス付き高齢者向け住宅の特徴>
在宅介護サービスを受けられるところや、認知症でも入居可能なところもあるサービス付き高齢者向け住宅ですが、有料老人ホームとの違いは知っておく必要があります。サービス付き高齢者向け住宅と有料老人ホームでは契約方式や介護サービスの利用内容も異なります。

<契約方式の違い>
・サービス付き高齢者向け住宅
国土交通省と厚生労働省が共同で管轄するサービス付き高齢者向け住宅では、主に一般の賃貸住宅と同じように賃貸借方式による入居契約をします。

そのため、自由度の高さが売りとなっています。サービス付き高齢者向け住宅は高齢者が住みやすいバリアフリー対応の住宅であり、“住まい”であって“施設”ではないことから、暮らしの自由度が高いという特徴があります。更に、キッチンやトイレを室内に完備していることが多く、入居者は自宅で暮らすような生活スタイルを維持することが可能です。

また、入居費用が月々の賃貸費用のみであり、入居一時金が不要であるところも多く、入居後の退居の際にも金銭的負担は利用権方式よりも少ないと言えます。

・有料老人ホーム
有料老人ホームの多くが入居金一時金を支払う利用権方式で入居契約を締結します。利用権方式の契約は、入居一時金の支払いにより介護サービスを受ける権利や施設利用権を得る契約です。入居一時金の支払いにより利用権を得て、施設で暮らす権利を買い取るような契約方式です。入居後は月々の利用料の他、食費や光熱費、管理費、介護サービス費用を支払って利用します。

介護サービスが利用権の一部に入っている場合は定額で介護サービスが受けられるところはメリットと言えます。

<介護サービス利用の違い>
介護付き有料老人ホームは入居後に介護サービスが気に入らなかった場合、退居して別の住まいを探すことになります。一方のサービス付き高齢者向け住宅では、訪問介護など外部の介護事業所を利用することができるので、別の住まいを探す必要はありません。ただし、外部の介護サービスを利用することは、賃貸契約とは別の契約になるため、別料金がかかってしまいますが、入居前から利用していた介護サービスを引き続き利用したり、入居後に介護事業所を自由に選択変更することも可能です。

また、サービス付き高齢者向け住宅では、生活相談や安否確認などの基本的なサービスが必ず付与されていますが、その他の介護サービスや医療ケア対応については、運営事業者によってばらつきがあります。自分に合ったサービスを受けることができるのかを確認しておかなければいけません。また、要介護状態になり、介護サービスを利用する必要がある場合、介護費用が従量制となり、要介護度が高くなった場合には、利用限度額に収まらず高額になる点はデメリットと言えるかもしれません。

サービス付き高齢者向け住宅の求人

<勤務形態>
勤務は24時間交代制などで、多くの職場では夜勤があります。ただし、管理職になると日勤のみの勤務の場合もあります。休日は週休2日制を採用している会社が多く、年間休日数は110日前後です。

<待遇面>
社会保険完備で、資格手当や夜勤手当などの各種手当も充実し、昇給・賞与ありの会社が大半を占めています。

<就業条件>
働くためには介護職員初任者研修修了(ホームヘルパー2級)以上の資格が必要です。管理職の場合は実務経験やマネジメント経験など、資格以外の経験が必要です。

<サービス付き高齢者向け住宅求人の仕事内容>
安否確認サービスや生活相談サービスを、すべての入居者に対して提供することが共通の仕事です。
その他の介護サービスについては、事業所によって異なりますが、入浴介助・食事介助・排泄介助などのサポートを行います。

▼監修者プロフィール
氏名:島崎拓哉(島崎法務事務所 所長)
経歴:特定行政書士・介護法務アドバイザー。1967年愛知県生まれ。島崎法務事務所(東京都豊島区)にて、介護施設の開設から運営のサポート及び、法的な諸手続き・諸問題に対してのアドバイスを行う。「在宅介護&高齢者ホームのすべて」(中日新聞社刊)の監修者である。

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