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ヘルスケア 2021-02-07

【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.22】『くにしま鍼灸整体院』國嶋 徹さんが語る鍼灸師の魅力

ヘルスケア業界のさまざまな職種にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』の企画。

熱くなれる何かを求めて鍼灸師の道に進んだという「くにしま鍼灸整体院」の國嶋 徹さん。今回は、國嶋さんが鍼灸師になって感じたお仕事の魅力と苦労について教えていただきます。

鍼灸の「追求する楽しさ」はライフワークになります

―鍼灸師として働いてきて、どんなところに魅力を感じますか?

一番は、患者さんの変化を間近で見られることです。例えば、僕の患者さんにはプロのバレエダンサーが多いんですが、引退を考えるほどの怪我をして、そこから一緒にリハビリをがんばって、舞台に復帰していく。怪我をしてから復帰するまでの過程を共有、共感できるので、ジーンとくるものがあります。

あとは、単純に面白いですよね。鍼灸師を24年していますが、いまだにわからないことだらけなんです。鍼灸って、基本的には伝承医学なので、けっこういい加減な部分があるんですよね。昔から受け継がれているマニュアルのようなものがあるんですけど、その通りにやれば結果は出るけど、「なぜ結果が出るのか」を自分の腑に落とすというか、本当に理解して使いこなすには、まだまだ経験が足りない。それができるようになるまで、いろんな知識を借りてきて肉付けしていかないと。それが僕のライフワークになっています。

―逆に、苦労を感じることはありますか?

苦労と言うか、難しいなと思っていることですが…。患者さんのニーズにどこまで応えるべきかっていうのは悩みどころです。例えば、ひざを怪我したバレエダンサーから、本番に出られるように痛みを取ってほしいと頼まれたとして、痛みは取れて本番を踊り切れたけど、怪我自体は進行して結果手術になってしまう、とか。

痛みを取ることがニーズだから、それには応えなければいけないけど、止めるのも僕らの役割りかもしれない。大丈夫だよ、と安易に応援するんじゃなくて、冷静に状況を判断してストップをかける必要もある。これがもし内科的なものだったら、痛みにマスクをかけることで発見が遅れて命に関わることだってあるかもしれない。その判断は、難しいところだと感じます。

―そのあたりは、どのように対応しているんですか?

できるだけ観察して、お話を聞くことですよね。患者さんとうまくコミュニケーションを取って、「ここまではできますよ」ってきちんと伝えること。あとは、背伸びをしないこと。背伸びをすると、どうしても事故って起きてしまうと思うので。

―國嶋さんは、大学病院にも勤務されていますが、鍼灸院と違うことはありますか?

大学病院では、患者さんは必ずドクターのスクリーニングを受けてから、鍼灸にいらっしゃいます。ドクターから「こういう患者さんのこういう症状なんだけど、鍼灸治療はどうかな?」と依頼される感じですね。

病院なので、基礎疾患を持っている方を診ることが多く、いつもとはまた違う緊張感があります。僕のすることで、逆に悪くなることだってある。そのくらい体力のない方もいらっしゃいます。鍼灸院にいらっしゃる方は、何か不調があるとはいえ、自身で通院できる方がほとんどですからね。

そういうことを考えると、鍼灸院でしていることの半分くらいしか、実力が出せていないかもしれません。病院現場は、それだけ重圧の中での仕事という事だと思います。

病院で働きたいのであれば、その覚悟を持って目指さないと、なかなか難しいんじゃないかと、働いてみて思いました。

―他に、病院で鍼灸をするために必要なことは?

西洋医学の知識が必要になりますね。というか、周りがみんな知っている前提なので(笑)。依頼されるときって、他の科のドクターが書いた電子カルテも回ってくるんです。だから、それを読んで、時にはレントゲン写真を見たりして、分析して施術しなければなりません。僕もまだまだ勉強中なんですけどね。

―病院勤務をしてよかったことはありますか?

外来に出た日は、カンファレンスにも参加するんですが、自分がしていることを言語化するいい機会になっています。正直、僕らの仕事って曖昧な部分が多いので、話すことで自分でも整理できるというか。それに対して評価や意見もいただけるので、勉強になります。

あと、問診の仕方やリスク管理など、学ぶべきところは鍼灸院での仕事にも還元しています。

ブレながらでいい、成長する過程を楽しんで

―鍼灸師を目指している方にアドバイスをお願いします。

鍼灸師の仕事は、患者さんのニーズに対して施術法を考えて、初めてリターンがあります。だから、自分で考えるための創意工夫をする努力が大切です。でも、自分のアイデアだけだと限界があるんですよね。先人たちのカルテや施術法などの書物から、アイデアを引っ張ってくる必要がある。それを読み解くためには、陰陽五行論とか東洋医学についての知識がないとうまくいかないので、そういう勉強も大切ですよね。

あと、鍼灸や整体って〇〇派みたいなものがいっぱいあって、ブレちゃいけないっていう空気があるんですけど、僕はブレブレでいいと思うんです。他者の意見を聞かず、自分の思い込みだけにならないように、いろんな人のアイデアを貪欲に吸収する。そうやって、いろんな方法を試してみて、自分のアプローチの仕方に肉付けしていくというか。

ブレブレなときって、変化しているということで、変化しているときって一番充実感があると思うんです。ブレながら、成長していく過程を楽しめたらいいんじゃないかと思います。

あとは、独立したほうがいいと思います。

―独立のいいところとは?

責任感が変わりますよね。自分ひとりで、営業、経理、広報、安全管理…と全部しないといけないので、人間的に成長できますし、覚悟が決まります。

施術でもそうですね。丸ごと背負うことで初めて、「その人を良くしたい」という気持ちが始まるんじゃないかと思うんです。そうやって得た患者さんは、自分の宝になると思います。

國嶋さん流 鍼灸師の心得3か条

1. 創意工夫をする

2. ブレブレでも変化して成長する

3. 独立して責任を持つ

長い歴史がある鍼灸だからこそ、それを本当の意味で自分のものにするには、たくさんの経験が必要だという國嶋さん。「曖昧な部分が多い施術だから、自分なりに肉付けして理解していきたい」と語っていただきました。次回は、國嶋さんの手技&技術をご紹介します。

▽#3はこちら▽
【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.22】『くにしま鍼灸整体院』國嶋 徹さん流 鍼灸師の手技&技術>>

取材・文/山本二季
撮影/片岡 祥

教えてくれたのは…

鍼灸師 國嶋 徹さん

慶応大学卒業後、都市銀行にて2年間勤務。その後スポーツトレーナーを目指し鍼灸学校に入学。港区の有名鍼灸院に弟子入りし、16年間勤務後、独立し「くにしま鍼灸整体院」を開く。ダンサーや音楽演奏家、歌手、スポーツ選手など幅広く施術している。

Infomation

くにしま鍼灸整体院

住所:東京都渋谷区広尾1-6-8 第2三輪ビル302号
TEL:03-6277-0289

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