介護福祉士とは
「介護福祉士」は、介護業界関係者にとって最も認知度が高い職種であり、資格でもあります。そのため、福祉関連の学校に通うようになった人や介護業界で働き始めた介護士は、介護福祉士の資格取得を最初の大目標に設定する方もたくさんいらっしゃいます。
ここでは、その介護福祉士として働く際の具体的な仕事内容や、給与、資格取得方法についてわかりやすくご説明いたします。
介護福祉士とは
介護福祉士は、1987年5月26日制定(2007年12月5日改正)された、介護・福祉分野の国家資格です。主に高齢者や障がい者の介護など、「ケアワーカー」と呼ばれる介護福祉業務に携わる人のための国家資格で、社会福祉士、精神保健福祉士と併せて、福祉系三大国家資格に位置づけられています。
社会福祉士と異なる点は、福祉に関する相談やアドバイス以外にも、対象者の生活に寄り添って、直接的な援助や支援を行うところです。
総人口に対して65歳以上の高齢者人口が、21%(高齢化率)を超えてしまうとされる超高齢化社会に向かっている日本にとって、これからの介護福祉士は直接的な介護の他、福祉サービスの充実と向上という役割を担う資格者と言えます。そのため、サービス向上のための「豊かな感性」「洞察力」「情報分析能力」「介護目標・計画の立案能力」が求められています。
介護福祉士の主な仕事内容
高齢者や身体上または精神上の障がいにより日常生活が困難な人に対して、食事・入浴・排泄などの介護を行うことが主な仕事です。また、介護対象者やその家族などから介護方法の相談を受け、それに対してアドバイスをするという役目もあります。
大きく分けると、介護福祉士の仕事内容は以下のように分類できます。
【身体介護】
<介護対象者の身体に直接触れて行う介護>
食事、入浴、排泄の他、衣服の着せ替え、清拭(体を拭く)、歯磨き・洗顔などの介護を行います。ベッドから起こして車椅子に移動させる、自動車への乗降、歩行補助、車椅子での移動なども含まれます。
【生活援助】
<介護対象者の生活、日常の家事のお手伝い>
調理、配膳、下膳、洗濯、掃除、整理整頓、買い物など、日常の家事を援助します。
訪問介護では、生活援助は特に重要な仕事です。ただし、以下のサービスは生活援助には含まれません。
■介護対象者の援助に該当しないもの
利用者の家族のための家事、来客の応対など
■日常生活の援助の範囲を超えるもの
庭の草むしり、ペットの世話、窓ガラス磨き、大掃除、雪かき、正月の準備など
【相談とアドバイス】
介護対象者やその家族からの、身体、生活、介護についての相談を受け、それに対してのアドバイスを行います。その際、適切な介護サービスが提供できるよう、医師や看護師、社会福祉士など、医療・福祉サービス関係者との連携が必要となります。
介護福祉士になるには
当然、介護福祉士の国家資格を取得することが必要で、その方法は大きく分けて2つあります。1つの方法は、介護福祉士の試験や登録の事務を管轄する「財団法人社会福祉振興・試験センター」が実施する国家試験に合格することです。「財団法人社会福祉振興・試験センター」は厚生労働省
令により定められた社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士の3福祉士と呼ばれる福祉業務の指定試験機関であり、これらの試験事務・登録事務を行っています。但し、一定の条件を満たさないと受験資格を得ることはできません。受験資格については次の項目に記載します。
国家試験を受験せずに、資格を取得する方法もあります。厚生労働大臣が指定する介護福祉士養成施設(学校)を卒業する「養成施設ルート」と呼ばれる以下の方法です。
1.2年以上の養成施設を卒業する(養成施設は、専門学校、短期大学、大学となります)。
2.福祉系の大学において指定科目(社会福祉士では基礎科目もしくは指定科目)を履修。その後、1年間の養成施設を卒業する。
3.社会福祉士養成施設等を卒業(または修了)。その後、1年間の養成施設を卒業する。
4.保育士(保母)養成施設卒業。その後、1年間の養成施設を卒業する。
※2、3に該当する方で、現在福祉系の大学および社会福祉士養成施設に在籍し卒業を迎える方は、1年間の養成施設を卒業義務はありません。4に該当する保育士(保母)養成施設卒業の方に関しては、1年間の養成施設が全国にあります。
※2015年(平成27年)4月1日以降で養成施設を卒業し、資格を取得しようとした場合は、介護福祉士国家試験の受験が必要となります。また、養成校ではカリキュラムの移行期となるので、旧カリキュラムと新カリキュラムが同時進行している状況が発生しています。
国家資格には「業務独占資格」と「名称独占資格」があり、介護福祉士資格は「名称独占資格」です。資格を持たない人が「介護福祉士」と名乗ることはできませんが、資格がないと働けないということはありません(2015年7月現在)ので、無資格者でも働くことはできます。そのため、実際に働きながら、資格取得を目指して資格試験の勉強をする人も多いです。
受験に必要な資格
受験資格を得る方法にはいくつかあります。対象の指定施設で3年以上の介護実務を経験する「実務経験ルート」と、高校の福祉科福祉コースを卒業する「福祉系高校ルート」です。
【実務経験ルート】
「社会福祉士及び介護福祉士法」の改正により、平成28年度第29回介護福祉士国家試験から「実務経験3年以上」かつ「実務者研修修了」が受験条件となります。
実務経験には、特別養護老人ホームや介護老人保健施設等の介護職員として3年以上の従事(在職期間が1,095日以上、実働日数が540日以上)が必要とされ、実務経験証明書を提出します。生活支援員(生活指導員、生活相談員などの相談援助業務)や児童指導員の実務経験は受験資格として認められません。
※改正規定は施工期日が一年延長され平成28年度となりました。
【福祉系高校ルート】
現在福祉系高校のカリキュラムが新カリキュラムに移行中です。上表(※部分)のように、入学年度によってルートが変わりますのでご注意ください。
・旧カリキュラム(平成20年度以前入学者)
1.学校教育法による高等学校(専攻科及び別科を除く)において、改正前の「社会福祉士および介護福祉士法」施行規則に定める教科目・単位数を修めて卒業した方(卒業見込み含む)、または大学へ飛び入学した方。
2.学校教育法による高等学校の専攻科(修業年限2年以上)において、改正前の社会福祉士および介護福祉士法施行規則に定める科目・単位数を修めて卒業した方(卒業見込み含む)。
・特例高校等(平成21年度以降入学者)
平成21年4月1日から平成26年3月31日までに学校教育法による高等学校または中等教育学校であって文部科学大臣及び厚生労働大臣の指定したもの(特例高等学校等)に入学し、社会福祉士介護福祉士学校指定規則附則第2条2項に定める教科目・単位数を修めて卒業した後、9ヶ月以上の介護等の実務経験がある方。
・新カリキュラム(平成21年度以降入学者)
学校教育法による高等学校または中等教育学校において、社会福祉士介護福祉士学校指定規則別表第5に定める教科目・単位数を修めて卒業した方(卒業見込み含む)。
実務経験・福祉高校それぞれにルートで介護技術講習を受けることにより、国家試験の実技試験免除になります。ただし、国家試験の受験申込の際にコースを選択する必要があります。
介護福祉士国家試験について
■受験申し込み方法
<申し込み受付期間>
介護福祉士国家試験の受験申し込みの受付は毎年、試験実施日前年の8月上旬~9月上旬までの間に限られています。受付期日に間に合わなかった場合には合否以前の話になってしまい、受験すらできませんので気をつけましょう。
※詳しくは「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」のウェブサイトでご確認ください。
<申し込みの手続き>
介護福祉士国家試験を受験するには介護福祉士国家試験『受験の手引』が必要です。『受験の手引』は「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」のウェブサイトから請求することで入手できます。
『受験の手引』(冊子)には受験のための説明書等の必要書類が入っています。書類の中には実務経験証明用の書類も入っているので、働いている事業所で勤務期間や日数を証明してもらいます。事業所が複数に渡る場合は過去に働いた事業所にも用紙を送って証明してもらいましょう。
※受験申し込みの段階で規定日数に満たない場合は「見込み」として提出し、規定日数を満たした時点で再度提出をします(2回提出)。
冊子の中に提出書類のチェックシートが入ってありますので、不備や漏れがないか確認した上、同封の専用封筒に入れ、現金書留で郵送します。
申し込みが完了すると、受験票が送られてきます(試験日前年12月頃)。受験票は当日の受験に必要のため、紛失しないように大切に保管しておきましょう。
■受験には実務者研修の修了が必須
前述したように、平成28年度の国家試験より、受験には実務者研修の修了が義務付けられます。
<実務者研修とは?>
実務者研修とは、より質の高い介護サービスを提供するための実践的な知識と技術の習得を目的とし、介護職員として働く上で必要な介護過程の展開や認知症等について学ぶことができる講座です。
<実務者研修受講時間>
実務者研修は所持資格の有無や実務経験に関わらず、誰でも受講が可能ですが、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)などの有資格者は受講科目の一部を免除する制度があります。
介護職員実務者研修 受講時間
所持資格 | 受講時間 | 免除時間 |
---|---|---|
無資格 | 450時間 | 0時間 |
旧ホームヘルパー3級 | 420時間 | 30時間 |
介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級) | 320時間 | 130時間 |
旧ホームヘルパー1級 | 95時間 | 355時間 |
旧介護職員基礎研修 | 50時間 | 400時間 |
無資格の人が実務者研修を修了するためには6か月程度かかります。介護福祉士の受験のための受講なのであれば、早めの受講をおすすめいたします。
■筆記試験と実務試験
介護福祉士国家試験には第一次試験(筆記試験)と第二次試験(実技試験)があり、それぞれ別の日に実施されます。試験問題は厚生労働省令により定められた要件から選ばれた試験委員により作成されています。「社会福祉士及び介護福祉士試験事務規程(登録事務規程)」(昭和63年4月1日規程第1号)などの規程が基準となります。
<筆記試験>
筆記試験問題は120問で、5択のマークシート方式です。
<実技試験>
試験委員の前で、モデル(被介護者)を相手に実演します。
■介護福祉士国家試験の試験概要
筆記試験 | 実技試験 | |
---|---|---|
受付期間 | 8月上旬~9月上旬 | |
試験科目 | ①人間の尊厳と自立、介護の基本 ②人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術 ③社会の理解 ④生活支援技術 ⑤介護過程 ⑥発達と老化の理解 ⑦認知症の理解 ⑧障害の理解 ⑨こころとからだのしくみ ⑩医療的ケア ⑪総合問題 |
介護等に関する専門的技能 |
試験日 | 1月下旬 | 3月上旬 |
試験時間 | 210分 | 5分 |
試験会場 | 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、福島県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、岐阜県、静岡県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県(34試験地) | 北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県、沖縄県(8試験地) |
受験手数料 | 13,140円 | |
合格発表 | 3月下旬 |
■介護福祉士国家試験の過去問例
試験の出題科目は、毎年「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」から発表されます。
毎年、どの範囲から出題されるかは未定ですが、参考までに過去に出題された問題を記します。
<筆記試験>
【問題1】糸賀一雄の「この子らを世の光に」という思想に該当するものとして,最も適切なものを1 つ選びなさい。
1.経済的に生活できる社会的自立を保障する。
2.人間の発達を保障する。
3.困窮状態に応じて最低限度の生活を保障する。
4.障害者の職業の安定を図ることを保障する。
5.自由を制限する身体拘束の禁止を保障する。
【問題2】介護福祉士制度が創設された背景にあるものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1.高齢化率が14 %を超えて,高齢社会になった。
2.介護保険法が制定されて,新しい介護サービス提供の仕組みが創設された。
3.日本学術会議が,介護職員の専門性と資格制度についての意見を出した。
4.特別養護老人ホームの制度ができて,介護職員が必要になった。
5.高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)の策定によって,介護サービスの拡充が図られるようになった。
【問題3】せん妄(delirium)の危険因子として、正しいものを1つ選びなさい。
1.睡眠過多
2.ビタミンC欠乏
3.多血症(polycythemia)
4.高熱
5.喫煙
<実技試験>
【第28回課題】
山田さん(85)は、右上下肢に麻痺があります。移乗は一部介助が必要です。
車いすを使用して、全介助で移動しています。山田さんは、テラスでレクリエーションを終えて、車いすに浅く座っています。
山田さんは、少し疲れたと言って、飲み物を希望しています。
途中にある段差を超えて食堂まで移動してください。
そして、椅子に移乗して、飲み物をすすめるまでの介助を行ってください。
山田さんの返事は、「はい」または、うなずくだけです。
【第27回課題】
青木かおるさん(93歳)は、下肢筋力が低下して杖を使用しています。
立ち上がりと歩行に一部介助が必要です。
今、本人は居間で横になっています。
青木さんは「窓の近くにある植木に水をやりたい」と言っています。
青木さんが窓の近くまで移動して、いすに座るまでの介護をしてください。
青木さんは右利きです。
青木さんの返事は、「はい」または、うなずくだけです。
【第26回課題】
遠藤ミツさん(80歳)は、2ヶ月前に視力を失い、生活全般に一部介助を必要としています。
遠藤さんは、食事に行く準備を整え、身だしなみを気にしています。
居室のいすに座っている遠藤さんを食堂まで歩行介助してください。
そして、遠藤さんが食卓について、スプーンを持つまでの介助をしてください。
本日の献立はカレーライスです。
遠藤さんの返事は、「はい」または、うなずくだけです。
■介護福祉士国家試験の合格率と難易度
介護福祉士国家試験には筆記試験と実技試験がありますが、合格については筆記も実技も「問題の総得点の60パーセント程度を基準としており、問題の難易度で補正した点数以上の得点」としています。
但し、筆記試験については、試験科目10科目すべてにおいて点を獲得しないといけません。9科目が満点でも、1科目が0点の場合は不合格となってしまいます。
<受験者数>
2016年に実施された第28回の受験者数152,573人でした。介護福祉士国家試験の受験者数は、ここ数年15万人前後で推移しています。
<合格率>
2016年に実施された第28回の合格者数は88,300人であり、合格率は57.9%でした。
平成22年度の試験では合格率50%を切ってしまいましたが、その後は60%以上を常にキープしてきました。しかし、ここ2年の合格率は下がり、ついに60%を切ってしまいました。
60%を切ったとは言え、介護福祉士の国家試験は合格難易度が高いわけではありません。国家資格の中には司法書士や気象予報士、マンション管理士など、合格率が10%を切る試験も多く存在する中、受験者の半数以上が合格することができる介護福祉士は合格難易度が低いといえるでしょう。
もちろん、「合格率が高い = 合格難易度が低い」というわけではありませんが、介護福祉士に関して言えば、試験対策を兼ねた受験勉強をしっかり行うことにより、働きながらでも十分取得可能な資格と言えます。
■介護福祉士国家試験に向けた勉強法
どんな試験に対しても傾向と対策が存在し、介護福祉士国家試験に関しても同様のことが言えます。ここでは介護福祉士国家試験に向けた勉強法を考えていきましょう。
<試験での目標点数を決める>
筆記試験の合格点が総得点60%程度であるため75点前後が合格ラインとなります。
※平成29年1月に実施の第29回試験は問題数が5問増え、125点満点となるため。
過去5年間の実際の合格ラインは下表の通りです。
合格ライン (120点満点) |
125点満点に 換算した場合 |
|
---|---|---|
第28回試験 | 71点 | 74.0点 |
第27回試験 | 68点 | 70.8点 |
第26回試験 | 68点 | 70.8点 |
第25回試験 | 69点 | 71.9点 |
第24回試験 | 75点 | 78.1点 |
過去5年間で見ると、120問中76問以上正解すれば合格できます。問題数を125問に換算した場合でも80問正解すれば確実に合格できると考えることができます。
そのため、80~85点の間で目標点数を設定することをおすすめします。
<勉強計画を立てる>
介護福祉士国家試験の筆記試験は毎年1月下旬の日曜日に実施されます。その試験日を目標に勉強の計画を立てることで、勉強の進捗が良いペースなのか遅れているかを判断する材料となるのです。
平成29年実施の第29回試験は、受験資格が「実務経験3年以上」に加えて「実務者研修の修了」が必要となりますので、実務者研修の受講をしていない方は受講期間のことも考えて計画を立てましょう。
<模擬試験を受験する>
ある程度勉強が進んだら、予想問題集や模擬試験を利用して自分の実力を確かめましょう。
理想としては「勉強する → 模擬試験を受ける → (不得意な箇所を特に)勉強する → 模擬試験を受ける……」の繰り返しが良いでしょう。模擬試験を受ける度に得点数が上がることによって、やる気も上がるからです。もし、得点数が下がった場合でも、「自分の勉強方法が間違っていたのかもしれない」と考えるヒントになります。
模擬試験を受けるメリットは、自分の実力を確かめるためだけではありません。その他にも「マークシート方式の試験に慣れる」「回答する時間配分が上手くなる」などがあります。
実際の国家試験は朝10時頃から開始されます。模擬試験の場合は仕方ありませんが、実際の時間に身体を慣れさせるためにも、予想問題集を実際の試験時刻に合わせて解くというのも良いでしょう。
合格後の流れ
合格後は「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」に登録申請を行い、1か月程度で介護福祉士の登録証が申請者に直接届きます。登録には登録免許税と登録手数料がかかります。
また、氏名や本籍地など、登録事項に変更があった場合には変更手続きの申請が必要となります。
実技試験を免除するには
■介護技術講習会を受講する
介護福祉士の国家試験に際し、平成17年度から介護技術講習制度が導入されました。筆記試験は従来どおりですが、実技試験について、受験者はあらかじめ実技試験か介護技術講習のいずれかを選択します。介護技術講習を選択した人は、養成施設が実施する32時間以上の講習を受講し修了認定を受けると次の3回の実技試験が免除されます。
講習の内容は食事、排泄、衣服の介護などの8項目で、合計32時間を4日間にわたり受講します。修了認定は、講習内容の修得状況を含めた総合評価や受講態度などを総括的に評価、判断されるため、受講すれば修了認定が受けられるというものではありません。
■実務者研修を受講する
平成28年度(第29回)介護福祉士国家試験より、受験者には実務者研修を修了することが義務づけられることになりました。実務者研修を修了すると、実技試験が免除されます。
介護福祉士養成施設(2年課程)で得られる知識と同等の水準を目標としているため、社会福祉制度や介護技術、たんの吸引や経管栄養など医療的ケアも含め、6か月、450時間以上の研修が必要となります(保有の資格や学校により異なります)。
※経過措置による実技試験の免除は、平成27年度(第28回)試験まで適用されます。
資格取得のメリット
介護福祉士は国家資格であり、一度取得すれば全国どこでも通用し、更新もなく一生ものの資格といえます。よく比較される資格に「ホームヘルパー2級」がありますが、国家資格である介護福祉士に対して、ホームヘルパー2級は都道府県知事による公的認定資格(国家資格と民間資格の中間に位置する資格)です。
ホームヘルパー2級に比べ、介護福祉士の資格を取得するにはかなりの時間を要するため、その分専門的な知識や技術を身につけることができます。現場での仕事にはあまり違いはありませんが、介護福祉士はケアワーカーと呼ばれ、現場の責任者として介護職を指導したり、待遇面では資格手当がつく場合もあります。
他にもある介護福祉士の資格
■認定介護福祉士
現在、介護福祉士の新しいキャリアパスとして「認定介護福祉士」の制度構築が進められています。
認定介護福祉士は、介護職チーム(ユニットなど、5~10名の介護職によるサービス提供チーム)に対して教育指導やサービスのマネジメントをおこないます。施設や事業所の介護サービスマネージャーといった位置づけとなり、介護サービスの質の向上を目的としています。
また、利用者の生活支援において、医師や看護師などの医療関係者や他の職種と連携していくための中心的な役割や、家族や地域との関わりも求められます。
「認定介護福祉士養成研修」では、知識や技術の内容によって「Ⅰ類(280時間程度)」「Ⅱ類(170時間程度)」に分けた内容が検討されています。
受講要件としては、介護職チームのリーダー経験や、居宅、居住(施設)系のサービス双方での勤務経験などが求められます。
■医療介護福祉士
医療に関する専門的な知識を持った介護福祉士の養成を目的とした資格です。介護福祉士取得者の実務経験1年以上の人が対象となります。日本慢性期医療協会が主催しており、全6日間、24単位の講座を受講し、修了テストに合格すると「医療介護福祉士」の認定証がもらえます。費用は一般で9万円、日本慢性期医療協会会員施設に勤務する場合は7万円です。
講座では脳血管疾患や胃ろう等の管理、薬や検査、医療事故対策についてなど、医療に関する専門的な知識についての講義と実習が行われます。
介護福祉士の給料・年収はどれくらい?
介護士は夜勤や休日出勤など、肉体的、精神的にもハードな仕事ですが、他の業種に比べて高い給料とは言えず、仕事内容が給与に見合っていないと言われています。
もちろん役職や勤続年数、雇用形態によって給料は異なりますが、一般的にはデイケアよりも老人ホームの方が比較的高くなります。また、社会福祉法人企業の場合、各地方自治体の公務員給与規定に準じた給料体系で、福利厚生もしっかりしているところもあります。
ただ、介護福祉士は資格手当が付くことが多く、3,000円から多いところでは15,000円の手当がつくこともあります。また、介護福祉士の上位資格である介護支援専門員(ケアマネジャー)を取得することで、資格手当が更に多く付きます。
基本給は低くても、休日手当や夜勤手当、資格手当でカバーでき、40歳で年収500万円以上という方も稀にいらっしゃいます。
参考としてリジョブで募集している求人(民間施設)の給与を調査してみましたのでご覧ください。
– 初任給 –
月給:16~20万円(年収:210~270万円)
– 10年以上経験を積んだ介護福祉士の収入 –
月給:23~32万円(年収:260万円~412万円)
介護福祉士の就職率
介護業界では慢性的な人手不足が続いています。求人サイトやハローワークなどでも介護福祉士の求人は多く、就職率は高いといえます。介護福祉士の資格が取得できる専門学校では就職率100%というところも多くあります。
介護福祉士のキャリアアップ
介護福祉士からのキャリアアップとしては、介護士と介護支援専門員(ケアマネジャー)、利用者三者のパイプ役となり、介護サービスをコーディネートする「サービス提供責任者」を目指す人も多くいます。
ほかにも、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格をとる、施設で事業所長や施設長をめざす、看護師や作業療法士などほかの資格をとる、介護事業所を立ち上げるなど、目的により職種の幅を広げることが可能です。
また、介護部門のリーダーとして一定の要件を満たせば、厚生労働省
が推進する「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」にチャレンジすることもできます。これは、介護職員の能力を評価者(アセッサー)により7段階でレベル認定するものです。評価者(アセッサー)になれば、介護職員の技能向上をめざして人材育成に力を発揮することもできます。
介護福祉士が活躍できる場所
おもに施設サービスと居宅サービスがあります。施設サービスでは特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホーム、障がいを持つ方が生活や自立訓練を行う障がい者支援施設などがあります。
また、居宅サービスでは、自宅を訪問して介護を行う訪問介護や、通所介護サービス(デイサービス)などがあります。
また、ほかにも介護療養型医療施設やリハビリセンターの介護職など、活躍できる場所はたくさんあります。
介護福祉士は海外で働けるのか
現在、中国やタイなどアジアを中心に介護サービス事業者の海外展開が進んでいます。その内容は介護施設の運営や訪問介護サービス、専門学校での人材養成などさまざまです。なかには、日本人スタッフを募集している会社もありますので、まずはそういった求人を探して応募するというのがひとつの方法です。
ほかにもインターンシップや、海外のキャリアカレッジへの留学プログラムも利用できます。現地でボランティアとして介護に携わるという方法もあるでしょう。
また、研修になりますが、公益財団法人社会福祉振興・試験センターでは「介護福祉士海外研修・調査」を主催しており、海外の介護現場での研修を希望する人を募集しています。募集条件として、社会福祉施設での3年以上の実務経験、25歳以上55歳未満などの項目があります。
日本人がもつおもてなしの心や丁寧な接客などが、海外での質の高い介護サービスに活かされています。
介護福祉士の医療ケアについて
これまで介護福祉士は医療に関する特定行為は行うことができませんでした。しかし、平成24年に社会福祉士及び介護福祉士法(昭和62年法律第30号)の一部改正が施行され、たんの吸引(客痰吸引:口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)、経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)の特定行為業務を介護福祉士が行えることになりました。介護福祉士(特定登録者)または客痰吸引等研修を受けた介護職員が医師や看護師等と連携して行うことが条件となります。
現在、介護福祉士として働いている人は指定された登録研修機関で客痰吸引等研修を受け、都道府県から「認定特定行為業務従事者認定証」を交付されて初めて客痰吸引等業務の行為者となることができます。
また、所属している事業者が「登録客痰吸引等事業者(登録特定行為事業者)」の登録をしていなければなりません。
これから介護福祉士をめざす人は、介護福祉士の資格を取得したあと、就職した事業所で実地研修を受けることが必要となります。これらの条件が伴わずに特定の医療ケアを行うことは違反行為となるので注意が必要です。
また、認定特定行為業務従事者認定証の内容に変更がある場合は登録の都道府県知事に申請が必要です。汚損による再交付や返納の際は当該認定特定行為業務従事者認定証の提出を求められます。
介護福祉士の求人について
介護福祉士の資格を取得することで、働ける範囲は大きく広がり、求人数は格段に多くなります。また、資格手当が付くことにより給与も高くなります。そんな介護福祉士の働き方により、どんなメリット・デメリットがあるのかを調べました。
■デイサービスセンター勤務の介護福祉士
デイサービスは「通所介護」とも呼ばれ、利用者は施設に入所するわけではなく、施設に通ってサービスを受けます。介護士は利用者の送迎、食事介助や入浴介助などの日常生活のケア、リハビリや機能訓練、レクリエーションなどのサービスを提供します。
<デイサービスで働くことのメリット>
デイサービスの勤務時間は概ね、朝8時~夕方17時までです。基本的に夜勤はなく、土日や祝日が休みの施設も多いので、24時間体制365日間稼動している入所型の施設と比較すると、規則的な生活を送ることができ、プライベートの時間も確保しやすいでしょう。
また、施設にもよりますが、利用者には重度の要介護者はいないため、多くの介護施設で言われる「重労働」ということも少ないので、心身への負担は少なく働きやすいと言えます。
<デイサービスで働くことのデメリット>
利用者の要介護度が低いので、重度の要介護者に対する介助方法を身につけることができません。超高齢社会において重要な役割を担うような知識や技術を身につけたい場合、デイサービスで働くより、特養などの入所施設で働く方が良いでしょう。
また、デイサービスでは残業や残業はほとんどないため、給与が低いことが多いです。更に、利用者は高齢であってもしっかりした人が多いため、接遇などしっかりとした配慮が必要となります。高齢者の利用者の中には気難しい性格の人もいますので、利用者との人間関係にストレスを感じるかもしれません。
■病院勤務の介護福祉士
「心身ともに自分らしく生き生きとした生活」を送ってもらうために要介護者のサポートをする介護施設での勤務に対し、病院では病気や怪我をしている患者に対して「治療・回復・退院」を目的にサポートを行います。
介護施設では季節のイベントや誕生日会、毎日のレクリエーションなどを催しますが、病院ではそのようなサービスはほとんどありません。病院の目的はあくまでも治療ですので、患者とのコミュニケーションを必要とはしていません。
<病院で働くことのメリット>
介護施設は民間会社や社会福祉法人によって運営されており、病院は医療法人によって運営されています。そのため介護スタッフとして働く場合の給与は介護施設より病院の方が高いことが多いです。
病院では当然、医師や看護師の体制はしっかりしており、患者の病状が急変しても、すぐに対応できる状況にあるので、安心して働くことができます。
<病院で働くことのデメリット>
仕事内容は高齢者の介護や介助よりも、看護師の補助業務が主です。「高齢者の役に立ちたい」と思って介護福祉士の資格を取ったのに、病院勤務ではあまり高齢者の介助をしないことにショックを受けることも少なくありません。
また、病院で働く介護福祉士は出世できずに、ずっと現場で働く状態の人がほとんどのようです。介護施設では勤続年数や能力によっては施設長になったりエリアマネージャーになったりなど出世することがありますが、病院勤務ではそれがありません。
■正社員の介護福祉士の求人
正社員という言葉は法律上の用語ではなく、特別な定期があるわけではありませんが、
1.常勤(フルタイム)で勤務していること
2.雇用期間の定めがなく、解雇が厳しく制限されていること
3.給与月給もしくは年俸制であること
以上の条件を満たした従業員を、一般的に正社員と呼び、介護施設内では責任のある立場になることが多いようです。
<正社員で働くことのメリット>
正社員で働いた場合、年に2回のボーナス(賞与)があるなど、給与面での利点があります。また、勤務年数を重ねることにより、施設の管理者・エリアマネジャー、訪問介護事業所ではサ責(サービス提供責任者)など、上級職を任せられる可能性があります。
正社員は広範囲の仕事を任されることが多く、そのため、介護講習や社外研修など、スキルが身に付く場に参加することができるので、キャリアアップして介護の専門家として活躍したい人にはおすすめです。
更に、基本的に正社員は無期雇用契約の場合が多く、相当な理由がないと解雇されないという利点もあります。
<正社員で働くことのデメリット>
正社員は責任が大きい立場ですので、施設内でのトラブルや不測の事態がおきた際、場合によっては責任を負うことがあります。
仕事が休みの日に、職場で問題が起きた場合にも、社員が対応する必要がありますし、夜勤など従業員数が足りない場合には、代わりに社員が出勤しなくてはなりません。
仕事内容にしても、管理職になると事務作業をすることが多くなり、利用者の介護・介助をすることが少なくなります。介護・介助をすることに仕事のやり甲斐を感じている人にとっては、それが苦痛に感じるかもしれません。
■パートの介護福祉士の求人
介護福祉士の資格は持っているけれど、家庭の事情により正社員では働くことが難しい。そんな場合でも、資格を生かしてパート(アルバイト)として働くことができます。
月給制である正社員に対し、パートとして働く場合は時給での給与計算になります。
事業所や施設、または地域によっても違いはあるものの、時給は850~1,100円程度の求人が一般的です。
<パートで働くことのメリット>
パートで働くことの最大のメリットは、勤務時間や勤務日数を調整できるということでしょう。そのため、子育て中の主婦や家族の介護をしている人、働ける時間の短い学生には向いていると言えるでしょう。また、既に正社員で働いているが、更に収入を得ようと考えている人がパートとして働くこともあります。
また、正社員として働くよりパートとして働く方が、人間関係でストレスを抱えることが少ないとも言われています。
<パートで働くことのデメリット>
パート勤務は、収入面ではデメリットが多いと言えます。パートはボーナス(賞与)がない場合が多く、たくさんの収入を得たいと考えている人には向いていません。職場のシフトによっても収入が左右されやすく、家族を養うのは難しいでしょう。
また、福利厚生面でも正社員の方が充実している事業所が一般的です。
■介護福祉士求人一覧
リジョブでは関東を中心に、全国様々な地域の介護福祉士転職情報を掲載しています。
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